【注】この作品はTHE JUNE内ONE SCENE SCENE31『10th ANNIVERSARY』の後のお話になっておりますが、MJ 様が書かれた別のお話です。
「それでは、久しぶりの再会を祝して。かんぱーい!」
以前は毎年やっていた高校時代のクラス会も、それぞれに、結婚したり、仕事が忙しくなったり、その他もろもろの理由が出来て、なかなか毎年は集まれなくなってきた。でも、今年は、卒業して20年目の節目。時間も早めのランチタイム。全員出席、とは行かなかったけれど、それでも、けっこうな人数が集まったと思う。
結婚記念日にあんな夢を見たのも、このクラス会の案内のはがきを見て、迷っていたからかもしれないな。「久しぶりだし、行ってこいよ」と言ってくれた夫のおかげで、舞花も、亜衣や優美と会うことが出来た。
「メールはしていたけど、実際に会うのは久しぶりだよね。」
「だね。高校卒業したあとは、毎年クラス会をやっていても、それ以外は滅多に会えなくなっちゃったし。就職したら、余計に。当時はさ、メールもなかったからさ。」
「そうそう。あ、この前は、子供服、ありがとね。可愛くて、早速着させてもらってる」
「捨てちゃうの、もったいなかったしね。子供って、どんどん大きくなるもんねぇ。」
最初は、亜衣と優美の3人で話していたはずなのに、いつの間にか、周りのみんなも話しに加わってきた。
「舞花のところって、結婚何年目だっけ」
「実は、今年で10年目だった。」
「10年か。うちと同じだ。」
「2000年に結婚。ミレニアムだし、多かったかもね」
「あ、うちも。でもさぁ、10年たつと、もう夫婦って感じしないよね」
「うん。いてもいなくても同じ? あ、でも、スイートテンは買ってもらったよ!」
「いいなぁ。」
クラス会も終わり、せっかくだから、と、舞花は、亜衣と優美と3人でお茶をすることに。
「舞花も、買ってもらったの? スイートテン」
「ん? 実は、まだなんだぁ。でも、おねだりしてはみたんだけどね。」
ふと、あの時見た夢を思い浮かべ、思い出し笑いをしてしまう。
「なに? 思い出し笑いして」
「うん。実はね。・・・」
夢の話を二人にかいつまんで説明した。
「えー、酷い。私たち、そんなに食い意地、張ってた?」
「いくらなんでも、舞花に無理やり彼氏作れとは言わないよぉ」
「それにしても、彼氏の予約って・・・。なんか舞花らしいというか・・・くすくす」
「それも、お金、払いきれないから1年で離婚って・・・。」
「もう、そんなに笑わなくてもいいじゃない。 でも、確かに、当時、私だけだったもんね。彼氏いないの。二人とも、ラブラブで、うらやましくはあったんだけど」
「そんな時期もあったよねぇ。でも、結婚して長くなって、子供も出来ると、やっぱりねぇ」
「うち、時間あれば、ゲームしてるよ。最近、オンラインゲームとやらにはまっててね。どうやら、どこかのチームにも入れてもらったようで、最近は、仕事の愚痴とか、私に言わないで、チームのメンバーに話しているみたい。」
「まあ、浮気されてるわけじゃないけどねぇ。家の中にいるのに、なんか疎外感感じたりして。」
「こっちは、子育てで、一日子供と付き合っていて。子供が寝てから、やっと自分の時間。たまには、お酒くらい付き合ってよ、とか思うんだけどね。」
「ネットで恋愛小説とか読んでると、なんか、懐かしい! とか思っちゃうよね。けっこう楽しんでるけど。そういう意味では、旦那が一人で時間つぶしてくれるのは、ありがたいかなぁ。」
「まあ、あの頃は、結婚した後の現実なんて、あまり考えてなかったかもね。」
「一日だけ、理想の旦那様レンタル、なんて、・・・できないよねぇ」
おしゃべりを楽しんで、「たまには、3人で会おうね」と約束し、お店を出る。遅くなっちゃったし、デパ地下でお惣菜でも買って帰ろうかな、と思っていると、携帯が鳴った。あれ、珍しい、夫からだわ。
「もしもし」
「あ、舞花。クラス会、終わった?」
「うん。今、亜衣と優美とお茶してたんだけど、別れたところ。これから、デパートで夕食の買い物して帰るね。遅くなっちゃってごめん。」
「いや。いいよ。じゃあさ、何も買わないで、デパートの入り口の前で待っててよ。」
「え?でも、・・・って、もう、何で電話切っちゃうの?!」
「何も買わないで」って言ってたわよね。何か買いたいものでもあるのかしら?と思いつつ、結婚する前によく待ち合わせに使っていた場所に向かう。本でも持って来ればよかったかな、と思って待っていると、それほどたたずに夫がやってきた。
「あれ、一人?」
「うん。お袋のところに、預けてきた。結婚記念日を忘れた話し、あいつがお袋にしちゃってさ。預かるから、二人で食事でもしていらっしゃいって。」
「お義母さんに、気を遣わせてしまったわね。」
「まあ、たまには、いいんじゃない? それより、楽しかった?」
「ええ。おかげさまで。今日はありがとね。」
「どういたしまして。 ところでさ、食事の前に寄りたいところがあるんだけど。」
「うん? いいけど。」
そう言うと、夫はさっさと歩き出してしまって。昔は、手をつないで歩いたなぁ。今は、恥ずかしいけど。でも、と思い、腕につかまってみる。ちょっとびっくりしたような顔をした夫は、それでも、腕はそのまま、歩調を緩めて歩いてくれた。
「ここ。」
「ここって・・・。」
「いや、ほら、指輪、ほしがってただろ。あの日、記念日忘れちゃったこともあって言えなかったけど。実はさ、あの日に向けて、これでも、お小遣い、ためてたんだよ。で、今日、迎えに行く前に見てたんだけど。やっぱり、俺が決める前に、お前の意見も聞いてみようかな、と思ってさ」
「え?」
「ほんとは、忘れずに、当日に言いたかったんだけどさ。」
照れくさそうに言う夫を見るのは、何年ぶりだろう。なんだか、すごくうれしくて、照れくさくて。
「まあ、ここで、話しててもなんだし・・・」
手をひかれ、お店の中へ入っていく。
あなたを待っているとき、思ったの。結婚10年、恋人同士から、夫と妻へ。そして、子供も出来て、お父さんお母さんになって。 あなたも変わってしまったかもしれないけれど、それは、私も同じ。恋人同士だったころのように、あなたのためにしてあげたことってあったかしら。あなたも、さびしい思いをしていたのかしら。いろいろな思いを込めて、でも、出てきた言葉は
「10年間、ありがとう。これからも、よろしくね。」
「いや、こちらこそ。当日、忘れてて、ごめんな。でもさ。これからは、思い出したときに教えてくれるとありがたいんだけど。」
うーん。それは、どうかしら。やっぱり覚えていてくれるとうれしいし。種明かしは、寝る前に、かなぁ。
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