ふたりの夏物語T
SPECIAL STORY

R-18

望はマサトとの再会後、慌しく式を挙げると翌年の春には元気な男の子が誕生した。
名前は、夏奏(かなで)。
少しの間、望は産休を取っていたが、フリー写真家のマサトが面倒をみてくれるというので、最近仕事復帰していた。

「編集長。夏奏くん、何ヶ月でしたっけ。もう。随分大きくなったんじゃないですか?」

編集部の若手社員。

「ちょうど3ヶ月かな。生まれたばかりはそうでもなかったんだけど、すっごく重くなったような気がするの。でも、1年なんて早いわよね」

もうすぐ、マサトと出会った夏がやって来る。
まさか、1年後に家族ができているとは…。
あの時、思いもしなかった。

+++

「聞いてもいい?」
「なぁに?」

初めて来るマサトの家は、意外にも手入れの行き届いた庭のある一軒家。
それも、かなり古いレトロな洋館。
昔、祖父母が住んでいた家だが、両親は古くなったからと同じ敷地内に新築して今はみんなでそっちに暮らしている。
必然的にマサトが追い出される形になったが、他に住む場所を探すより居心地が良かったのだ。
有名なデザイナーの物だという、使い古された革のソファーに二人、望はマサトの肩に凭れるようにして座っていた。

「どうして、黙っていなくなったんだ?」

休暇が最後だという日の朝、望はマサトの前から姿を消した。

「怖かったの」
「怖かった?」

―――怖かった…いつか、別れが来るのが。

「別れが来るのが、怖かったの。あとは、プライドかな」
「プライド?」
「そう。なんか、未練タラタラとか思われるのが嫌だったの」
「望らしいな」

優しく髪を撫でる手、ガッシリとした鍛え上げられた広い胸。
ずっとずっと、恋焦がれた彼の温もり…。

「でも、そんなプライドは俺の前では捨てて欲しかった」
「え?」

反射的に望は顔を上げると、彼は真っ直ぐに前を見つめていた。

「俺、あんなに短い間に本気で人を好きになるとは思わなかった。人物は撮らない主義だったはずが、気がつけば望ばかり」

「望が俺の前からいなくなって、一ヶ月くらい仕事にならなかったんだ」と苦笑しながら話すマサトだったが、あの時の落ち込みぶりは周囲も声を掛けられないほど痛々しいものだった。
望の写真だけが、唯一の救いだったと言っても過言ではない。

「マサトが?」
「信じてないだろ」
「だって、そんなふうに見えないもの」

―――だって、マサトが私のことでそんなふうになるなんて…。
想像できないかも。

「俺自身もこんなに柔な男だったんだって知ってショックだったけど、それだけ望が俺にとって掛け替えのない人だということ。だから、今こうして抱きしめられるのが夢みたい」
「マサト…」

本当はあの時、望にもわかっていた。
マサトがどれだけ自分の中に入り込んでいるのか、大切な人なのか…。
なのに、それを素直に認められなかった。
お互いこんなにも苦しむことになるのに…。

「ごめんね」
「俺は、望を責めているわけじゃない。むしろ、謝らなければならないのはこっちの方。俺の子供を生んで、一人で育てようとしてくれたんだから」
「私ね、結婚はしないんじゃないかなって思ってたの。だから、子供ができたってわかった時、すごく嬉しかった。それが、今までの人生の中で一番愛した人の子供なんだもの」

別れは辛かったけど、愛する人の子供の存在がそれを消してくれた。
後にも先にも、マサト以上に愛する人などいないのだから。

「望…」
「…っん…マ…サ…ト…っ…」

嬉しさのあまり、我慢できなかったマサトの貪るようなくちづけ。
それは、息もできないくらい激しいもので…。

「…望っ…っ…」
「…ぁっ…ん…っ…そん…な…っ…」

―――そんなに激しくしないで…。
彼の想いを感じて、それを受け止めてあげたいと思うけど…。

「…ごめっ…」

マサトは、慌てて望から体を離す。
…つい、暴走した。

「ううん、優しくしてくれるなら」
「でも…」
「大丈夫、私もマサトが欲しいの…」
「望…」

『欲しいの…』なんて言われて、マサトの理性など利くはずがない。
望をゆっくりと抱き上げると、中2階の寝室へと移動する。
祖父の好みなのか、この家は2階建てではあったが、中2階というものがあって、マサトはその部屋を寝室に使っていた。

「言うのが遅くなったけど、素敵な家ね」
「祖父さんがこだわって建てた家なんだけど、親父は住みにくいって隣に新しく家を建てたんだ。そうしたら、そっちの方がいいってさ。ゲンキンなものだよな。俺は、結構気に入ってるんだけどさ」

―――マサトのご家族は、隣に住んでるのね。
早く挨拶に行かないと。

「ねぇ」
「ん?」

大きなダブルベットの上にゆっくりと寝かされて、マサトがその上に覆いかぶさる格好になる。

「マサトのご両親。子供ができたなんて言ったら、驚かないかしら?」
「そりゃ、驚くだろ」

―――そうよね…。
できちゃった結婚でもないけど、この場合そう取られても仕方がないし…。
うちは、未婚の母になるって話してもちっとも驚かなかったけどね。
子供ができたこと、相手とは結婚しないことを話しても、望の両親は何も言わずに受け入れてくれた。
それは、娘を信じてなのか、そうなるかもしれないという予感があったのかもしれないが…。
逆に『やっぱり、結婚することにしたから』などと言う方が、驚かれるのではないだろうか?

「そうよね…」
「望が考えている驚くとは、意味が違うと思うけど」
「?」
「めちゃめちゃ、喜ぶってこと」
「喜ぶ?」
「大変なことになるな。まず、嫁が来ること自体、あり得ないと思っている親だから。そこへ子供となれば、大騒ぎ間違いなし」
「嫁が来ることが、あり得ないの?」

彼を見る限り、モテるのは間違いないし、写真家としての地位もある。
なのに、嫁が来ることがあり得ない!?

「望は何か勘違いしてるみたいだけど、俺はそんなに女性と付き合った経験はないんだ。多分、家族は女嫌いとか思ってるだろうし」
「それはないでしょ」
「あるんだよ。うちは、普通の家族と違うから」

―――それが本当なら、いいけど…。
ただ、マサトが責められるようなことにだけは、ならないで欲しいわね。

「すぐに挨拶に行かないと」
「あぁ、その前に望の家に行ってからな。一発覚悟で」
「大丈夫よ。ちゃんと話すから」

じっと見つめ合う二人、再び唇が重なって。

「…ぁっ…んっ…っ…っ…」
「…望…っ…」

薄手のニットの中にマサトの手が入ってくる。
キャミソールごと上に捲られると、少しふっくらとしたお腹が露になった。
それを見た彼の手が止まり、耳をその場所に静かに当てる。

「ここに、望と俺の子がいるんだな」
「そう、マサトと私の可愛い赤ちゃん」

望は、お腹の子とマサトを包み込むようにして抱きしめた。

お互いの衣服を全部取り去って、生まれたままの姿でその存在を確かめるように抱き合う。
全体にふっくらとした望に対して、マサトは相変わらずの肉体美。
思わず、見惚れてしまうくらいだった。

「…あぁっ…んっ…っ…マ…サ…ト…っ…」
「望、前より感度がいいみたい」
「…だっ…て…や…あぁっ…ん…っ…っ…」

胸の膨らみの突起を刺激されると、いつになく甘美な望の声にマサトの方がマズイ。
彼女を壊さないように…。
と思っても、抑えが利かない。

「…そんな声を出されると、俺の方が抑えられない…っ…」

マサトは既に大きくそそり立っていたモノに準備を施すと、彼女の中にゆっくりと沈めていく。
奥までいかないように注意しながら、それでも久しぶりの感触にすぐにでもイってしまいそう。

「…締める…なっ…」
「…そ…んな…こ…と…っ…あぁぁぁっ…ん…っ…」
「…望っ…愛してるっ…」
「…私…も…っ…」

お互い両手をしっかりと握り締めて、小刻みに突いていく。

「…っ…あぁぁ…ダ…メ…ぇ…っ…イっ…ちゃ…う…っ…」
「…俺…も…っ…イ…くぅ…っ…」

イったのは、ほぼ同時だっただろう。
自身を吐き出すとマサトは、望をかばうようにして倒れこんだ。

その夜は抱き合ったまま、二人が離れることはなかった。

+++

「なぁ、どうして望が抱くと夏奏はそんなにいい顔するんだよ」
「夏奏は、ママが好きなのよね」

望が愛しい夏奏をあやしていると、ニコニコと笑っているのがマサトには納得できない様子。
マサトが抱くと、なぜかすぐに泣き出してしまうからだ。

「なんだよ、二人して」

ふて腐れたマサトは、ソファーにゴロンと寝てしまう。
―――仕方ないわね。
まったく、子供なんだから。

望はウトウトしかけた夏奏をベビーベッドに寝かせると、不貞寝しているマサトの側へ行く。

「マサト」
「・・・・・」
「マサトったら」
「なんだよ」
「もうっ、そんなに怒らないで」
「どうせ、夏奏は俺が嫌いなんだよ」

寝返りを打ってプイッと反対側を向いてしまうマサトを自分の方へ向かせると、望はそっとくちづける。
不意打ちをくらったマサトは、ふて腐れつつもやっぱり嬉しいのだろう。
顔が少し緩んでる。

「そんなことないわよ」
「ん…」
「私がマサトのことを好きなだけじゃ、ダメなの?」
「え…」
「夏奏のことももちろん愛してるけど。私が世界で一番愛してるのは、マサトだから」
「望…」


「…やぁっ…ちょっ…と…っ…っ…」

マサトは瞬時に望を抱き寄せると、ソファーに押し倒す。
…こんな可愛いことを言ったら、どうなるか…わかってるのか?望。

スヤスヤと眠っている夏奏をいいことに、これぞとばかりにマサトは望を独り占めするのでした。


To be continued...


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