ドラマみたいな恋がしたい
彼が好き

R-18

早川 浩史(はやかわ こうじ)のことが好きだと気付いてから、中木 みのり(なかき みのり)は彼からの誘いを遠回しに断るようになっていた。
それがどうしてか、自分にもよくわからない。
こんな気持ちを抱えたままで今までのように浩史(こうじ)と付き合っていく自信も、かと言って気持ちを伝える自信も、みのりにはなかったのだから。
ちょうどそんな時にお互いの仕事が忙しくなり、段々と浩史(こうじ)のいない日々が日常化しようとしていたある日。

『中木さん』
『―――早川』

ずっと聞きたかった声、だけど今はそれが苦しかった。

『やっと捕まえた』
『えっ?』
『中木さん、俺のこと避けてただろう。何で?』
『べっ、別に避けてなんかいないけど…』

こんな言葉が、浩史(こうじ)の口から出てくるとは思ってもみなかった。
咄嗟に誤魔化したが、声が上ずってうまく話すことができない。

『嘘だ―――俺のことが嫌い?話をするのも嫌?』
『そんな…どうしてそんなことを言うの?』
『だったら、俺の目を見て言って』

みのりは、早川の顔をまともに見ることができなかった。
見てしまえば、きっと彼への想いに押しつぶされてしまう。

『中木さんが急にそっけなくて話もしてくれなくなって、嫌われたんだって思った。なんか俺、自惚れてたみたい。中木さん、少しは俺のことって…。でも考えてみればそうだよな、みんなの憧れの中木さんが俺のことなんて何とも思うわけないもんな』
『早川?』

みのりは、自分の耳を疑った。
早川はもしかして、みのりのことを…。

『ごめんな、変なこと言って』
『違うっ、違うの。私、早川といるとすごく楽しくて。それに早川、誰にでも優しいから…。最近、早川カッコ良くなったってみんな噂してて、私なんて性格はこんなだし、早川には釣り合わないって思って…。だから、一緒にいると心臓がドキドキして苦しいの。好きだから、早川のことが好きだから』
『中木さん、それって…』
『私こそ、変なこと言ってごめんね』

自分の気持ちなど早川に伝える気はなかった。
成り行きとは言え、これ以上ここにいるのは辛い。
みのりは早々に立ち去ろうとした時、急に腕を捕まれてよろめいた。

『きゃっ』

気が付いた時には、みのりは浩史(こうじ)の腕の中。

『ごめん、謝るのは俺の方なのに。中木さんの気持ち知らなくて。でも、俺のことそんなふうに思っていてくれたなんて…信じられない、夢じゃないんだよな。なぁ、もう一度俺のこと好きって言って?』
『ヤダ、恥ずかしい』
『頼む』

『ねっ?」って至近距離で囁かれて、恥ずかしいのと嬉しいのとでみのりはどうにかなってしまいそうだったが、言わないといつまでもこの状態が続きそうで恥ずかしいのを我慢して言葉を口に出した。

『好き、早川が好き』
『俺も中木さんが、好きだ』

そう言って早川は、強くみのりのことを抱きしめた。

『ほんと夢じゃないんだよな』

浩史(こうじ)は、みのりの存在をしっかりと確かめるようにもう一度強く抱きしめた。
暫くして浩史(こうじ)はみのりから身体を離し、彼女の顎に手をかけると唇にそっとくちづけた。
彼のくちづけはあくまでも優しくて、でも彼の性格とは裏腹にすごく情熱的で、みのりは今にも溶けてしまいそうだった。
―――早川にも、こんなキスができるんだ。
それが、みのりの浩史(こうじ)に対する感想だった。
お互い唇が離れた時には、彼の支えがなければみのりはその場に崩れてしまいそうなくらい。

『俺のキスって、そんなにいいか?』
『なっ』

『何言ってるの!』とみのりは浩史(こうじ)の胸をバシッと叩いたけれど、彼はとても優しい顔で微笑んでいた。
浩史(こうじ)のキスがよかったのは確か、こんなキスは今までみのりはしたことがなかった。
でも、それを認めると絶対付け上がるに決まってる。
素直じゃないみのりは、まだ言ってあげないのだと心に思っていた。


お互いの気持ちが通じ合ってからというもの、浩史(こうじ)は前にも増して優しくみのりに接してくれる。
それが少しこそばゆい感じがして、いつまで経っても慣れなかった。
それに、ものすごく恥ずかしいくらいの甘い言葉も一緒に投げかけてくるからたまらない。
以前より数倍かっこよくなった彼にそんな言葉を言われようものなら、全身が麻痺してしまう。
また、それを当人が自覚してないから困るのだ。

『みのり、今日は少し遅くなりそうなんだ。だから悪いけど、先に帰って待っててくれる?』

定時間際に通路ですれ違った時に浩史(こうじ)に囁くように言われた。

『うん。じゃあ、食事を作って待ってるわね。今日は何にする?』
『何でもいいよ。みのりの作ったものは、全部美味いから』
『浩史(こうじ)っていっつもそうじゃない。私のことなんか気にしないで、好きなもの言っていいのに』

浩史(こうじ)はみのりに合わせているわけじゃないのだと思うが、みのりにしてみるともう少し我侭になってもいいのにと思ってしまう。

『本当のことだからしょうがないよ。あっ俺、これから会議だから行くな』

風のように去って行ってしまった浩史(こうじ)の後姿に、みのりはいつまでも見惚れていた。


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「ドラマの次は、何だ?」

パソコンの前にさっきからへ張り付いている桜の背後から、覗き込むようにして見ている信哉。
韓流ドラマが大好きだった彼女。
今度は、何にハマってしまったのか?

「これ?ネット小説。プロの人が書いたんじゃなくってね、個人サイトなんだけど、すっごくおもしろいの」

「特にこのサイトさんのは」と最近見つけたばかりという恋愛小説サイトにハマりまくっていた桜は、片っ端から作品を読み漁っていたのだった。
テレビドラマだと男女の愛し合うシーンなど、やはり放送できない部分も結構あるが、ネット小説ではその辺は寛大なのだろう。
男の人が見るようなえっちビデオと違って、お話の中で本当に愛し合っている男女の営みは読んでいるだけでもまるで自分のことのように感情移入してしまう。
映像として見えない分、頭の中で想像するというのは案外刺激的なのかもしれない。
こういうのを信哉に見られるのは恥ずかしいから、そこはこっそり読んでいたつもりだったんだけど…。

「何だ?このハートマークはさぁ」
「えっ…」

各話に飛ぶためのボタン脇にちょこっと付いていたハートマークを目ざとく見付けた信哉。
―――げっ、信哉ったら、そういうところはしっかりチェックしてぇ。
見られたら恥ずかしいから、ワザとINDEXのページに戻ったのにぃ。
えっちなシーンが書いてあるからというのはお決まりだったけど、こういうサイトを覗かない彼にはその意味がわからなかったのだろう。
あぁ…でも、こんなことを言ったら、『桜ってこういうのを読んでるのか、もしかして欲求不満?』とか言われそう…。
なんて考えていると、信哉は勝手にハートマークの付いているボタンを押してしまう。

「何々?―――」


『お帰りなさい。浩史(こうじ)』
『ただいま、みのり』

まるで、新婚さんのように浩史(こうじ)を出迎えるみのり。
ただいまのキスは当たり前になっていたけれど、今夜の彼はヤケに情熱的で…。

『…ぁんっ…浩史(こうじ)、こんなところでっ…』
『みのりが、あんまり可愛いからだろう?俺は、もう我慢できないよ』
『…やぁっ…ん…っ…』

唇を塞がれて壁に強く押し付けられたみのりは、身動きが取れない。
『―――浩史(こうじ)にも、こんな激しい部分があったなんて…』
いつも穏やかで優しい彼の知らなかった一面、それでも甘いくちづけは変わらない。
カットソーの裾から入ってきた手がブラの間をぬって直に膨らみを揉みながら、もう一方の手はスカートの下から布越しに大事なところを指が行き来する。

『…ぁっ…んっ…浩史(こうじ)…っ…』
『ん?みのり、どうして欲しいの?』
『…そんな…っ…聞かないで…』
『ちゃんと言ってくれないと、わからないだろう?』

『だってぇ…』と答えるのが精一杯のみのりをかわいそうに思った浩史(こうじ)は、抱き上げてベッドに直行する。
せっかくの二人の時間なのだから、思いっきり楽しまないと。

『ごめんな、みのり』
『ううん。それだけ、浩史(こうじ)があたしを求めてくれたのかなって思ったら、ちょっと嬉しかった』
『みのり』
『…あ…っん…』


「ほぉー、ネット小説ってのは随分とまぁ、えっちぃことも書いてんだな」
「もうっ、信哉はあっちに行ってて。これは、たまたまよ」
「たまたまねぇ」

信じているのかいないのか、彼はワザと桜の耳元で囁くように言う。
ただでさえ、こんな話を読んでいたところだから、ちょっぴりあそこが敏感になっているというのに…。

「…やぁ…信哉ったらぁ…」
「今夜は随分と感度がいいようだなぁ、桜」
「そっ、そんなことっ…ない…っ…も…ぁ…っ」

家に居てくつろいでいる時の桜は、ブラを着けずにパット付きのキャミソール。
裾から手を忍ばせれば意図も簡単に膨らみに触れることができることを信哉は知っているから、既に固くなっている先端を指で摘んでは弾く。

「そうか?もう、こんなに固くなっちゃって」
「…いやぁ…そういうこと…口に出さないでっ…」

片足を桜が座っていた椅子の端に乗せて密着している信哉だって、もうアソコは十分に大きくなっている。
さっきの話を読んだからこうなったのか、それとも…。
首筋を彼の唇が這って、その度にゾクゾクっと体の奥底が熱くなる。

「こんな話なんかより、ずっと俺の方がいい男だろ?」
「…ぁんっ…っ…」

ミニスカートから伸びていた腿を彼の大きな手が上下するだけでも感じてしまうというのに…。
桜が恋愛モノのドラマや小説が好きなのは、決して信哉との恋愛がつまらないとかそういうことではない。
以前は若干あったかもしれないけど、今はこうして彼と一緒にいるだけでドキドキするし、自分がドラマの主人公になったような錯覚に陥る時だってあるくらい。

「ベッド行く?それとも、ここで刺激的な方がいい?」
「…やぁ…っ…ん…し…んや…っ…」

ショーツの間から、彼の指が桜の中を掻き回す。
絡みつくように溢れ出す蜜に場所なんてどこでもいいから、早く信哉が欲しい…。
そう思ってしまうのは、桜が淫乱なのだろうか…。

「何?桜」
「…欲しい…の…信哉…が…」

「…早…く…」なんて、彼女に言われたら信哉だって黙ってなんかいられない。
落ち着いて話しているものの、いや彼の方がもっと余裕がなかったはず。
ジーンズのボタンを外し、ジッパーと同時にトランクスをズリ下げると桜の腰を浮かせてショーツを一気に引き抜き、そのまま…。

「…っんぁ…っ…ぁ…んっ…」

背後からというのは、『信哉の顔が見えないから、あんまり好きじゃないの』と言っていた桜。
だから、向かい合って抱きかかえるようにしながら彼女の中へ。
何とエロいのだろう。
こういう刺激は男の信哉にとってはたまらないが、女性の桜はどうなのか。

「…っ…さく…ら…」
「…し…んや…っ…」

彼女の方が少し高い位置から見下ろしているけれど、その目はとろんと今にも溶けそうで、ものすごくソソられる。

「…すっげぇ…いい…っ…さくら…」
「…しんやっ…あたし…もっ…」

グィッとお互いの腰を引き寄せて奥まで密着させる。
その度に椅子が軋む音がしたが、二人の絶頂は近い。

「…っ…イ…くぅ…」
「…おれ…も…」

桜は雪崩れ込むようにして信哉の首にしがみつく。
そうしていないと自分の体を支えられないくらい、腰が砕けてしまっていたのだから。
そんな桜に信哉は優しく触れるようにくちづける。

「信哉ぁ」
「ん?俺のこと、好きって?」
「うん、好き」

ドラマもネット小説も大好きな桜だけど、世界一好きなのは信哉だけ。


To be continued...


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※ このお話はフィクションです。実在の人物・団体とは、一切関係ありません。作品内容への批判・苦情・意見等は、ご遠慮下さい。


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