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ひとりぼっちのHoly Night


「ノエル、どうした?」

今日は珍しく車ではなく二人で歩いていたのだが、ノエルが何か言いたげな様子が気になって速水は問いかけた。

「えっと…」
「どうしたんだ?はっきり言ってくれないとわからないだろ?」
「お願いがあるんですけど」
「お願い?」

―――何だろう、お願いって…。

「なんだ、言ってごらん?」
「あの…手を」
「手?」

―――手が、どうしたというのだろう?

「手を繋いでもらっても、いいですか?」

―――なんだ、そんなことか。
俯きながら、本当に恥ずかしそうに小さな声で言うノエル。

「いいよ」

ノエルの表情が、笑みに変わる。
速水にとっては少々恥ずかしい行為ではあったが、可愛いノエルにお願いされて断れるはずがない。
だいたい、こんな笑顔を見せられて、嬉しくない男がどこにいるだろうか?
逆に自然と顔がニヤケてしまうのを抑える方が大変だった。

そっと手を前に出したノエルの手を速水は握ると、顔の辺りに持ってくる。
すると、もう一方の手でノエルの手を持って指を絡めるようにして握り直した。

「こうだろう?」

見る見るうちにノエルの顔がピンク色に染まったが、速水はそのままゆっくりと歩き出した。

「私、彼氏ができたら手を繋いで歩くのが夢だったんです」

彼氏がいなかったノエルには、彼氏ができたらこうしたい、ああしたいという夢がいっぱいあったに違いない。

「そっか。他には?彼氏ができたら、ノエルはどうしたいって思ってたんだ?」

手を繋いで歩くことと、ショッピングをしたり、子供っぽいけど遊園地に行ったりもしたい…。

「えっと、一緒にショッピングしたりとか、遊園地に行ったりとか」
「遊園地?」
「ダメですか?」

―――ダメなんて…そんなこと、あるはずがない。
ノエルがしたいって思うことなら、何でもしてやる。

「ダメなんて、ことはない。ノエルがしたいって思うことなら、何でもしてやるよ」
「遼…」

―――あ〜そんな顔するな、抱きしめたくなるだろうがっ。
周りに人がいようがなんだろうが、抱きしめてキスしたい。
そんな衝動に駆られるくらい、彼女が愛しくて仕方がないのだ。

「ついでに俺のお願いも、聞いてくれるか?」
「はい。なんでも」
「ここにキスして」

指で左の頬を突付いて見せる。
だから、ほっぺにチュウで勘弁してくれ。

「えぇぇ?こっ、ここで?」
「誰も見てないから、早く」

―――俺って、ほっぺにチュウが好きみたいなんだよな…。

顔を目の前に突き出されてしまい、ノエルは急いで辺りを見回すと、速水の頬に羽が触れるくらいのキスをおとす。

真っ赤になったノエルの頬に、お返しとばかりに速水はキスの雨を降らせた。


END


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Copyright(c)2006-2013 Jun Asahina,All rights reserved.

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