「…ぁんっ…っ…こう…き…っ…」
「そんな顔で見つめられるとヤバイだろ」
「…だってぇ…っ…ぁっ…っ…んっ…」
祐里香の中は、どうしてこんなにも心地いいのか…。
それは…好きで好きでたまらないから…。
やっと、一つになれたから…。
「祐里香っ。好きだ、愛してる」
「あたしも航貴が好き、愛してる」
◇
付き合い始めてすぐの頃から、週末は航貴があたしの家に来て泊まって行く。
ワンルームだからそんなに広くない部屋にいきなり二人っきりというのは、最初はどうにも慣れなくて…。
まして航貴は会社でも一緒に仕事をしているから、熱い夜を過ごした次の日なんて恥ずかしくて目も合わせられない。
なのに、全然平気な顔してニコニコしながら見つめてくる。
そして今日もあたしの家のベットでこうやって二人で寄り添って眠っているんだけど、もう少し大きなベットならなんて思ってる場合じゃなくて…。
「ごめんね、起こしちゃった?」
あたしは喉が渇いたから、何か飲み物でもと起き上がろうとしたんだけど、あまりに航貴にしっかりと抱きしめられていて、彼を起こしてしまったらしい。
「どうした?」
「うん、ちょっと喉が渇いたなって思って」
あたしはそう言って立ち上がろうとしたんだけど、航貴があたしを離さない。
「航貴?」
「離れたくない」
離れたくないって…ちょっと水を飲みに行くだけなのに何を言ってるのかしらね。
「水飲んですぐ戻るから、ね?」
あたしにしては精一杯可愛く言うと、航貴は渋々って感じでようやく腕を緩めてくれた。
会社では想像つかなかったが、彼はめちゃめちゃ甘々男だったのだ。
二人っきりになるとずっとあたしを背後から抱きしめるようにしてくっ付いている。
意地悪なことばっかり言うオレ様男だけど、あたしのことを誰よりも想っていてくれて、そしてとっても優しくて…。
あたしは冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すとグラスに注いで一気に飲み干した。
そのままペットボトルを持って戻ると、航貴は待ちかねたようにあたしを見つめている。
「航貴も飲む?」
「あぁ」
彼は上半身だけ起こして、あたしからペットボトルを受け取った。
本人は特別運動をしているとかそういうことはないって言うけど、すごく引き締まっていていつも見惚れてしまう。
「祐里香は?」
「あたしは、さっき飲んだから」
ベットの端に腰掛けると航貴はそっとあたしを抱きしめる。
「祐里香って、ふわふわして気持ちいい」
「最近、太ってきたからかしら?」
なんか航貴と食事を共にするようになってから、少し太ってきたような気はしていたのよ。
正確に体重を測ったわけじゃないから、なんとも言えないんだけどね。
「そういう意味じゃないよ」
あたしの言い方がおかしかったのか、航貴はクスクスと笑ってる。
「何よっ」
そんな笑わなくてもいいじゃない。
あたしは、プイっと顔を航貴とは反対側に向ける。
「可愛いな」
「んもうっ、そういうこと真顔で言わないでって言ってるでしょ!」
まだ、クスクスと笑っている航貴。
こういうことを言うと、あたしが恥ずかしがって赤くなるのを面白がってるんだわ。
あー悔しい。
「だって、本当のことだから」
しれっと言う航貴に益々、ムカつく!!
「もう、知らないっ」
航貴を豪快に後ろに押し倒すとあたしはブランケットを頭からすっぽりと被る。
こういうところがお子様だって思うんだけど、直そうと思ってもつい言葉になって出ちゃうんだからどうしようもないじゃない。
「ごめん、祐里香。機嫌直して、顔見せて」
「いやっ」
今日は久しぶりに映画でも観て夜景の見えるレストランで食事をしようって話してたんだけど、もう知らないんだから。
「祐里香、お願いだから」
さすがにマズったと思った航貴だったが、時既に遅し…。
すっかり拗ねてしまった祐里香が、どうやったら機嫌を直してくれるのだろうか?
「ユ・リ・カ」
「・・・・・」
うん?返事がない。
まさか、本気で怒ったとかそういうことはないだろうが…
「あっ、もしかして」
航貴はそっとブランケットを捲ると思った通り、祐里香はスヤスヤと寝息を立てて眠っていた。
そう言えば、前にもこんなことがあったなと懐かしく、といってもそんなに昔のことでもないのだが、思い出していた。
あの時の祐里香は、プリンを食べながら眠ってしまったんだったな。
祐里香に無理言って仕事を頼み、ようやく終わった時には既に夜が明けて太陽が昇り始めた頃だった。
何も食べていなかった航貴と祐里香は近くのコンビニに買いに行ったのだが、祐里香が一番に手にしたのはプリンだった。
相変わらずお子様だなと思いながらも、そんなふうにいつまでも変わらない祐里香が愛しくて…。
つい今みたいにからかってしまったけれど、徹夜明けで疲れもあったのだろう、いつもなら『どうせお子様で悪かったわね』という返事が返ってくるはずなのに返事がないのを不信に思って覗いて見ると無防備な顔で眠っていたのだ。
航貴は、起こさないように祐里香の頬にかかっている髪をそっと耳にかけてやる。
こんな顔を自分以外の他の男にも見せているのかと思ったら、そいつを殴ってやりたい衝動にかられたが、そんな心配もないままにこうして自分の腕の中にいることが未だに信じられないでいる。
口では強がってばかりいるけれど、本当は誰よりも相手のことを考えていて自分を責めていることも。
全部わかってるからと。
航貴は祐里香を抱きしめると、そのまま眠りについた。
END
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