プリンな彼女
甘くないプリン
−St Valentine's day−
街に出れば、どこもかしこも目に入る文字はバレンタイン…バレンタイン…。
一応、素敵?!な彼氏のいる祐里香だって例に漏れず、彼のために手作りチョコレートやら有名パティシエの本命チョコレートやらを用意しなければならない、はずだったが…。
「今年はナシ!!」
「はぁ?何でだよ。彼氏がいるっていうのにチョコレートナシなんて」
祐里香の予想外の一言に、猛ブーイングの航貴。
それはそうだろう、彼女から『今年はナシ!!』なんて言葉をぶつけられれば、誰だってこう言い返したくなるのが普通。
その前になぜ、彼女はこんなことを言ったのか。
あれほど仲の良かった二人が、喧嘩でもしたのだろうか?
「だって、チョコレートなら、いっぱいもらうんでしょ」
「いっぱいもらうって、どういう意味だよ」
───どういう意味って、しらばっくれて。。。会社中の女子社員に決まってるでしょ?
祐里香も義理で毎年部内の男性にチョコレートを渡していたのだが、それはもちろん航貴も例に漏れずではあった。
だから、いくら彼女がいる身の彼であっても、たくさんもらうに決まってる。
だったら、自分がわざわざ渡す必要はないような…そんなふうに祐里香は思ってしまったわけだが…。
「どういう意味もこういう意味も、そんなこといちいち聞かなくたって自分が一番良く知ってるクセにぃ!!」
───ふっんだ!!
ワザとらしいってのよ。
ご立腹の愛しい彼女を見つめながら、大きく溜め息を吐く航貴。
「あのなぁ…わからないから聞いてるんだろう?っていうかさ、確かにもらうと思うよ?形式的なものは。だけど、祐里香の言い方が妙にトゲトゲしいんだよ」
航貴も彼女の言わんとしていることは、わからないでもない。
だが、男としては可愛い彼女がいるっていうのに本命からチョコレートをもらえないっていうのはものすごく寂しいだろう?
「だってぇ」
「祐里香も他のやつらにやるんだろ?義理チョコ。それ言ったら同じじゃん。俺だって、鼻の下デレーっと延ばして祐里香から義理でもチョコをもらう奴らの顔なんか、はっきり言って見たくないよ」
自分のことはすっかり棚に上げてる祐里香だが、男の割合が勝っている会社の中で彼女がどれだけ視線を浴びているかなんて気付いていないのだろう。
いくら、航貴が彼氏なんだと宣言したところでそんなものは何の効力も持たないのだ。
「でもさ、祐里香からチョコもらえて嬉しくないやつなんかいやしない。みんな楽しみにしてるの知ってるから」
彼女からもらえるうちの部の男は幸せだと聞いたことがある。
ましてや、航貴のように本命をもらえる男は別格だ。
それが、今年はナシ!!なんて言い切られたら、どうすればいいんだよ…。
「ごめん…ヤキモチ妬いてたの。あたしの航貴なのに!!って…」
同じ会社で同じ部署に居て、恋人同士になって初めて気付くこともたくさんある。
自分がどんどん嫌な性格になっていくのはわかっているけど、どうしようもなかったんだもん…。
「あのさ、それってめちゃめちゃ嬉しいな」
「どうしてよ」
「人の気も知らないで」と口を尖らせている祐里香だが、航貴にとってみれば、これ以上のことはない。
『あたしの航貴なのに!!』
彼女の言った言葉を思い出すだけで顔がニヤケてしまう。
「心配しなくても、俺は祐里香のものだから」
「一生付いて行くよ」なんて、大げさな。
やっぱり、待っていてくれる彼のためにチョコレートは用意しなくっちゃ!!ね。
+++
『なぁ、新井さんからもらったチョコレート、甘くなかったよな?』
『そうなんだよ。何でかな』
『やっぱり、お前もか』
少しして、そんな会話を耳にした航貴。
甘くなかったって…何やら頑張って手作りしていたようだが、俺がもらったのは普通に甘くて美味かったけど。
「祐里香、チョコレートに何入れたんだよ」
「何って?」
「みんな、甘くないって言ってたからさ」
───だって、お砂糖入れなかったもん。
「お砂糖、入れなかったから」
「何で?」
「甘いのは航貴のだけ。他の男の人にあげるのは甘くなくっていいの」
こういう理論は祐里香らしいというか、なんというか…。
だけど、特別な感じがして、それはそれで嬉しいかな。
ホワイトデーには甘い言葉と甘い甘いプリンを返すつもりだが、もちろんそれは祐里香限定だから。
To be continued...
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