Stay Girl Stay Pure
Special Story
「…や…っ…んっ…イ…ア…っ…たっ…ら…っ…」
「おはようございます。涼さん」
すっきりとした顔で朝の挨拶をするイアンだったが、涼へのおはようのキスはそれはそれは情熱的なもので…。
涼をとろけさせるのに、そう時間はかからない。
「そんな甘い声を出されると、私も困るんですが」
「だって、イアンが悪いんでしょ。こんなキスをするからっ」
「悪いのは、私ですか?」
「そう。イアンが、悪いの」
例え悪者になっても、こんな可愛い涼を目の前にしてやめられないのだから仕方がない。
一緒に住み始めて、どれくらいだろう?
会社も何もかも、全てを投げ打って涼の元へ戻って来たイアン。
とはいっても、普通の人なら有り余るほどの貯金があったわけだが、敢えてそれを使わなかったのは、この地で涼と一から始めたかったという気持ちがあったからかもしれない。
暫く彼女の家で世話になりながら秀吉の会社で働かせてもらっていたが、最近では新しい事業として日本では手に入らない紅茶の輸入を始めそれが少しずつ軌道に乗りつつあった。
「今日は、お店のOPENの日でしょ。会社のお友達を連れて行ってもいい?」
「もちろんです。特別におもてなし、しますよ」
今日、OPENする店というのはティーショップのこと。
販売だけでなく、本格的に英国の雰囲気で味わえるお店があったらという涼の希望で開くことになった。
もちろん、紅茶を入れるのはイアン。
彼が入れる紅茶は誰よりも美味しいし、きっと評判になるだろうから。
+++
「涼ちゃん、今日イアンさんのお店がOPENなんでしょ?」
同僚の由希が、朝出勤すると早速涼のところにやって来た。
「はい。会社が終わったら、行くと言ってあるので」
「イアンさんって、どんな人なのかな?すっごく楽しみ」
由希にしてみれば、紅茶を楽しむというよりもイアンを見たいという方が先のよう。
だって、グローバルホールディングスのCEOを辞めてまで涼の側にいたかった人物なのだ。
どんな人なのか見てみたいという気持ちは、わからないでもない。
「由希さん、イアンより紅茶を楽しんで下さいよ」
「えーだって、国境を越えて涼ちゃんを選んだ人なのよ?見たいじゃない。噂によるとすっごくカッコいい人だって言うし」
「ちらっと見たっていう総務の人に聞いたのよ」と由希は、目を輝かせている。
確かにイアンは、カッコいい。
それに世界でも有数の企業のトップだったのにそれを辞めて、涼のところへ戻って来たのだ。
なんで彼は、こんな平凡な自分なんかを選んだのだろう…。
側にいてくれる嬉しさで、涼はすっかりそのことを忘れていた。
「涼ちゃん、どうかした?」
「あっ、いえ。なんでもないです」
一度考え初めてしまったら、涼の頭からは一日中そのことが離れることはなかった。
◇
由希と他に職場の女性を数人誘って、OPENしたティーショップへ向かう。
その時も涼1人だけ、なぜか足取りが重い…。
「涼ちゃん、具合でも悪いの?」
さっきから黙り込んだままで時折溜め息を吐いている涼を見て、由希はとても心配になった。
―――どこか、体の調子でも悪いのかしら?
「いえ、そんなことないですよ。体は、至って元気ですから」
「そう?無理してるんじゃない?」
会社に入社したばかりの涼の面倒を見ていた由希には、なんとなくそう思えてならなかった。
「無理なんてしてませんよ。さっ、行きましょう。イアンが、待ってます」
涼はいつもの笑顔を取り戻すと由希の腕を引っ張って、歩き出した。
店の近くまで来ると、既にたくさんの人が外まで並んでいるのが見える。
お祝いの花で埋め尽くされた店先には、噂を聞きつけたプチマダム系の人や涼達と同じような会社帰りのOLでいっぱいだった。
「えっ、あんなに並んでるの?」
「大丈夫ですよ。イアンが、席を確保してくれてるって言ったので」
今日はOPEN初日ということで、一般客と招待客とを分けていた。
そのために、あんなに並んでしまっているのだろう。
「さすが、涼ちゃん」
あそこまで並ぶのはちょっと…と由希も思っていたから、この配慮はありがたい。
イアンだって、そういうところは抜け目ないはず。
「涼さま」
「あっ、リック」
イアンと一緒に日本に来ていたリックも、今日はショップのお手伝い。
すっかり、蝶ネクタイ姿も板に付いている。
「いらっしゃいませ、涼さま。みなさまも」
「ねぇ、その“さま”っていうのやめてくれない?あたしは、そんな偉い人間じゃないんだから」
「いえ、セシルさまの大切な方ですから。当然です」
こういう真面目なところがリックらしいんだけど、ちょっと硬いところがあると涼は思う。
「セシルさまが、お待ちですよ。さぁ、こちらへどうぞ」
外観もそうだったが、店内は古き良き英国の雰囲気を残しつつも現代的な部分もミックスしたどちらかと言えば若い人をターゲットにしたもの。
特に女性中心の可愛らしいコーディネートは、乙女心をくすぐる。
「いらっしゃいませ」
リックに案内された席の前には、待ちわびたようにイアンが立っていた。
「イアン」
「涼さん」
イアンは涼の手を取ると、軽く甲にくちづける。
そのしぐさがあまりに様になっていて、女性陣の目は釘付けになった。
「みなさんも、よく来てくださいました」
「開店、おめでとうございます。あの、つまらないものですが」
由希が差し出したのは、来る途中みんなで買ったオレンジ色の薔薇の鉢植えだった。
「ありがとうございます。さぁ、こちらへ。特製の紅茶を入れますから」
「ゆっくりしていって下さい」とイアンは、店の奥に入って行った。
「ねぇ、涼ちゃん。イアンさん、とっても素敵ね。いいなぁ、あんなカッコいい彼氏がいて」
「なんだか、恥ずかしいです」
彼にしてみれば、キスするなどごく普通の行為でも、涼にとってはやっぱり慣れないこと。
それにさっきから、突き刺さるような視線を感じているし…。
「恥ずかしがることなんて、ないわよ。涼ちゃんは、特別なんだもの」
特別…。
―――あたしが、特別?
そんなわけない、あたしなんて…。
「やぁ、イアン君。素敵なお店をOPENさせたね。おめでとう」
そんな時に店にやって来たのは、涼が初めてパーティーというものに連れて行かれた時に紹介されたワールド・バンクの頭取である西蓮寺だった。
「西蓮寺さん、これはお久し振りですね。わざわざ来ていただいて、ありがとうございます」
「わざわざなんて、とんでもない。楽しみにして来たんだよ。ところで、涼さんは?」
「涼さんなら、あちらに」
涼は、西蓮寺とバッチリ目が合った。
「涼さん。いやぁ、久し振りだね。あれから一度も家に遊びに来てくれないから、嫌われたのかと思ってね」
「こんにちは、西蓮寺さん。いいえ、そんなことはないですよ」
「そうかい?では、今度こそ彼と一緒にクルーザーに乗りに来るんだよ」
「はい」
西蓮寺はニッコリ微笑むと、少し離れた席にいた数人の女性達(あれは、銀行の人なのか?)のところへ戻って行った。
「ねぇ、涼ちゃん。あの素敵なオジ様は、どなたなの?」
「えっと、ワールド・バンクの頭取です」
「ワールド・バンクの頭取?!」
由希が驚くのも無理はない。
自分の会社の社長とだって身近に話したことがないのに、あんな大銀行の頭取の家に遊びに来るだとか、クルーザーだとか世界が違い過ぎる。
「イアンに連れて行ってもらったパーティーで、会ったんです」
「そっかぁ、やっぱりイアンさんは、あたしなんかと住む世界が違うわ」
―――そうなんだ…。
あたしこそ、イアンとは住む世界が違うんだ。
由希に言われて、自分こそ住む世界が違うのだと涼は思った。
彼は会社を辞めているが、それでも涼とは違う。
「お待たせしました。紅茶は、砂時計が落ちるまで待ってどうぞ。あと、特製のスコーンも焼きたてですから」
「わぁ、いい匂い」「美味しそう」
涼以外のみんなは、いい匂いにつられて目が輝いている。
―――イアンの入れた紅茶もスコーンも、大好きなはずなのに…。
そんな一人暗い顔の涼に、イアンが気付かないわけがない。
心配そうに見つめる彼がいたことを、涼は知らない。
◇
ショップを早めに閉めて、後は親しい人達でのささやかなパーティーになった。
その席にはTHE JUNEのじゅんや姉の凛とその彼氏の俊太郎も加わって、とても楽しいものになったのだが…。
「あれ?涼ちゃんは?」
凛が辺りを見回すが、涼の姿は見当たらない。
じゅんの差し入れでアルコールが入ってほろ酔い気分のみんなは、涼がいないことに気付かなかった。
「そう言えばさっき、気分がすぐれないから先に帰るって言っていたような…」
少し酔っているじゅんは涼にそう言われたような気がしたが、イマイチよく覚えていない。
「なら、いいけど。大丈夫かな?なんかあの子、元気なかったみたいだし」
凛もなんとなく気になっていたが、何かあったのだろうか?
「せっかくみなさんに来ていただいたのに申し訳ありませんが、私も帰っていいでしょうか?涼さんのことが気がかりなので」
「そうしてやって、後はあたし達できちんと片付けておくから」
凛の言葉に甘えて、イアンは急いで自宅へ帰る。
店に入ってきた時から、いつもより元気がなかった。
―――涼さん、どうしたんだろう…。
現在、二人が住む家は住宅地にある一戸建て。
新築に近いくらいの家を中古で購入したものだったが、広さはそれなりにある方だと思う。
イアンはそれほどでもないと思ったが、涼が広過ぎる!と言っていたので…。
実家にも近く、すぐそばのマンションにはリックも住んでいた。
彼に車で送ってもらい家の前に降りるが、玄関先の電気が灯っているだけで部屋の電気は点いていない。
―――もしかして、まだ帰っていないのだろうか?
玄関のドアに手を掛けると、鍵は掛かっていない。
そして、そこには涼が履いていた靴が揃えてあった。
「涼さん、帰ってるんですか?」
呼んでみても、涼からの返事は返ってこない。
本当に何かあったのでは?という不安がイアンの脳裏を掛け巡ったが急いでリビングの灯りを点けるとソファーに寄り掛かっている涼の姿が目に入った。
「涼さん、どうしたんですか?電気も点けないで」
「・・・・・」
「涼さん…泣いてるんですか?」
微かに涼の肩が震えているのがわかる。
「涼さん、どこか痛いんですか?」
イアンが背後から優しく抱きしめて聞いてみても、泣きながら涼はただ首を横に振るだけ。
「だったら」
「ねぇ、イアン」
「なんですか?」
「どうして…会社を辞めてまで、ここに戻って来たの?」
「それは、涼さんと一緒にいたかったからです」
「それが、わからないの」
「わからない?」
―――わからない。
イアンは、なんであたしと一緒にいたいって思うの?
「だって、CEOを辞めてまで…。あたしには、そんな魅力があるとは思えないもの」
「そんなことはないですよ。涼さんは、とても魅力的です」
イアンは涼を正面に向かせて、頬を伝う涙を指で拭う。
それでも流れる涙を、今度は唇で丁寧に拭っていく。
「元気がなかったのは、そのせいだったんですね」
「え?」
「店に入ってきた時から、わかりました」
だいぶ、涙が治まった涼の目をじっと見つめるイアン。
吸い込まれてしまいそうなくらいブルーの透き通るような瞳で見つめられると、金縛りにあったように体が動かなくなってしまう。
「CEOを辞めても、涼さんと一緒にいたかったんです。愛しているから」
ぎゅっと抱きしめられて、その想いが体中に伝わってくるのがわかる。
その言葉を信じていないわけじゃない。
でも…。
「それとも、涼さんは私のことが―――」
「ない、絶対に。あたしだって…」
―――好き、愛してるもの。
「なら、何も問題はないですよね」
「でも」
「でもは、なしです」
「…ん…っ…イ…ア…っ…」
その場に押し倒されて、言葉も発せられないほどのきついくちづけ。
彼が、こんなふうに怖いくらいのキスをするなんて…。
「…や…っぁ…んっ…っ…」
「この体に刻み付けなければ、わからないようですから」
着ていた服をいつの間にか全部取られていて…。
―――やだ、イアンったら早過ぎ!
なんて思う間もなく、蕾を甘噛みされて全身を電流が流れたような衝撃が走る。
「…っん…ぁっ…あぁぁぁ…っ…」
「もっと、声を聞かせて下さい」
「…そ…んっ…な…っ…」
イアンの手がウエストから段々と下がっていくと、閉じていた足を割って茂みの間のぷっくりと主張している花弁を指の腹で擦りあげる。
すかさず指が入ってきて、涼の頭はフリーズ寸前だった。
「…っあぁぁぁ…っ…んっ…や…っぁ…そ…ん…なっ…イっ…ちゃ…っ…」
「イって、いいですよ」
「…あぁぁぁっ…っ…ん…っ…」
指だけで、呆気ないくらいにイってしまった涼。
ぐったりと横たわっているところへ、なんの前触れもなくイアンのモノが入ってきた。
「…っあぁっ…っ…ん…っぁ…」
「…涼さんっ」
「…イ…っ…ア…ンっ…もっ…と…奥ま…で…っぁ…」
「いいんですか?」
「…いい…の…っ…ぁん…っ…」
涼の言葉通り、イアンは最奥まで涼の中を突いてくる。
「…っん…っぁ…イ…くぅ…」
「…私もっ…」
涼の上に覆いかぶさるように倒れたイアン。
静かな部屋に荒い息だけが聞こえている。
「愛しています」
「あたしも、愛してる」
再び重なった唇は、さっきとは違うとても優しいもの。
涼さんが、『イアンなんて、嫌い』と言っても絶対離しませんから―――。
それに抱き枕がないと眠れないんですから、涼さんは。
その夜、二人はいつまでも抱きあったままだった。
To be continued...
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