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Symbiosis


「祐樹さん、起きて下さい。遅刻しますよ?祐樹さんっ」
「・・・・・」

相変わらず、祐樹の寝起きの悪さは直らない。
祐樹は近くのアパートに住んでいるからいつもなら電話で起こすが、昨夜は酔って帰って来てそのまま若菜の家に泊まって行ったのだった。
もちろん、今の今まで同じベットに眠っていたのだが…。

「祐樹さんったら、起きてくださ―――やっ…」

何度か大きな声で名前を呼ぶとやっと目を覚ました祐樹だったが、いきなり若菜の上に覆い被さって来た。

「う〜ん、若菜ちゃん。おは…よぅ」
「ちょっ、祐樹さ…ん…」

寝ぼけているのかなんなのか…。
祐樹は、若菜を抱きしめて離そうとしない。

「祐…樹さん、早く起きないと…」
「もう少しだけ、このままで…」

ケジメをつける意味で祐樹は安西家を出たが、こうやって泊まりに来てしまってはあまり意味をなしていない。
というか、一緒に住んでいた時よりも離れてしまった今の方がより一層側にいたいという気持ちが強くなったように思う。

「朝起きて若菜ちゃんをこうやって抱きしめられるって、すごく幸せだな」

「私も幸せです」と少し頬を染めながら、はにかむように言う若菜。
こういうところはずっと変わらなくて、もっともっと抱きしめたくなってしまう。

「若菜ちゃん、おはようのキスして?」
「え…」

不意に言った祐樹のひと言に、若菜は一瞬固まってしまう。
―――おはようのキス?!それも私から?!
毎朝、祐樹は朝食を取りに若菜のところへやって来るが、お弁当を作ったりバタバタしているからそんな甘い時間はなかった。
ただ、帰宅時には祐樹の方からただいまのキスはしてもらうけれど…。

「早くして?でないと俺、遅刻しちゃうよ」
「うぅ…」

―――祐樹さん、ズルイ…。
これじゃあ、しないわけにいかないじゃない…。
目の前に彼の顔があって、とても優しい眼差しに若菜の心臓の鼓動が早くなる。
小さく深呼吸をすると若菜は祐樹の頬に両手を添えて、「おはようございます。祐樹さん」という言葉と共にゆっくり唇を重ねた。
それは一瞬だけほんの少し触れる程度のものだったけれど、祐樹にとっては何よりも嬉しくて…。
こんな朝が、ずっと続けばいいのに…。
近い将来を重ね合わせて、そう願う祐樹だった。


END


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Copyright(c)2006-2013 Jun Asahina,All rights reserved.

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