![]() 「ねぇ、平井」 「はっ」 「な、なんだっ。可憐ちゃん」あいつはあたしがちょっと近付いただけで、どうしてそんなに戦(おのの)くわけ? そりゃ、『半径3m以内に近寄るな!!エロ男』とは言ったけど、だからそれを撤回するために近付いたんじゃない。 逃げてどうすんのよ、逃げて。 「あのね」 「それ以上、近付くなって」 「は?なんでよ」 「なんでって、可憐ちゃんが言ったん」 『じゃないか俺に』平井はこれ以上、可憐との仲を悪化させたくなかった。 女の子の前でエロ本の話をしたことに関しては男としてデリカシーがなかったと反省しているが、だってしょうがないだろう? 可憐ちゃんの裸を想像する代わりになんて、絶対言えっこないんだから。 「撤回しようと思ったのよ」 「え?」 「みんなにも言われたし」っていうのは口実かもしれないけど、このままってわけにもいかないでしょ。 「いいのか?」 「うん」 「こんなふうに近寄っても」 あたしは平井の顔をまともに見ることができなかっから俯いたまま、視線の先にあいつの靴が一歩また一歩、近付いて来る。 「うん」 「こんなんでも?」 目の前いっぱいに紺色の制服が、そして力強く抱きしめられた。 ちょっ!!誰が触っていいって言ったの!! それに抱きしめてなんて言って。 「ちょっ、なに!?やめっ、やだ」 「嫌なのか?」 「嫌っ、じゃないけどっ。あたしは撤回しただけでっ」 どうしてこうなるのよっ。 あいつは腕を緩めるどころか、どんどんあたしを抱きしめる力を強めていく。 それが嫌とか嫌じゃないとか、よくわからないんだけど、無意識にあいつの背中に腕を回してた。 「あぁ、可憐ちゃん」 「あっ、いや」柔らかくって、いつの間にこんなに育って…。 これじゃあ、益々想像しちまうじゃんか。 「平井?」 『いっそ、可憐から迫っちゃいなさいよ。平井君、腰抜かして鼻血ものよ?きっと』言われたのを思い出す。 「うわっ、ちょっまて…あ…」 「もうっ、平井っ。大丈夫?出てるって」 「鼻血がっ」急いでティッシュをあいつの鼻に突っ込んだけど、まさか本当にこうなるとは思わなかったわ。 2010.5.24 To be continued... |