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『Shine』1〜8は
EVENT ROOM
内にあります。
Shine
9
「お姉ちゃん、ちょっと足が見え過ぎじゃ…」
「そんなことないわよ。若いんだし、清良(せいら)ちゃんはスタイルいいんだから、これくらい」
それでも納得できなかったのか、沙良は何度も鏡の前で振り返っては自分の姿を見つめていた。
今日は空良(そら)とその友達で清良の同級生の兄である遥(はる)と、姉の沙良の4人で出掛ける日だったのだが、沙良が選んできた洋服はタータンチェックのショートパンツにフリルをあしらったチュニツクを合わせた、可愛い中にも軽快な雰囲気のコーディネート。
彼女にはとても良く似合っているが、本人にしてみれば足が丸見えなのが気になって仕方がないらしい。
我が妹は何を着ても可愛いと思ってしまうのは身内の欲目とかいうものかもしれないが、そうでなくても彼女は可愛いのだ。
「川波(かわなみ)君も、絶対可愛いって言ってくれるわよ」
彼のことだから清良が例えパジャマ姿であっても可愛いと言うに決まっているが(実際、可愛いんだけど…)、今の彼女を見れば、それ以上の反応を示すのは必至
…あぁ、でも周りの男にまで見せなくてもいい!!とか、何とか言うかもしれないわね。
だけど、せっかくだし、こういう機会はそんなに取れるもんでもないのだから、川波君を骨抜きにしてみるのもわるくないかな。
「そういう、お姉ちゃんはどうしてジーンズなの?私も、そっちの方がいいな」
「だめだめっ。あたしはいいのよ。単なるお供だもん」
「ほらほら、急がないと。あとはほんのり薄化粧と髪を可愛くアレンジしたら、出来上がりなんだから」と沙良に肩に手を置かれて床にペタンと座らされた清良。
―――だってぇ、こんな姿で外に出るのなんて初めてなんだから、しょうがないじゃない。
この前は、まんまとお姉ちゃんに騙されて撮影に連れて行かれたが、それでもスタジオ内でのことだったから、まだなんとかなったものの。
制服姿で空さんに会ったことも今となってみれば、ありえないことではあったけれど…。
「はい、完成!!清良ちゃん、完璧だわ」
「ほんと?」
自我自賛の沙良だったが、それを確認するためには眼鏡を掛けなければならないのに、さっき取られてしまってボンヤリとしか映らない。
「だ〜めっ。眼鏡は今日はナシ」
「えっ、そんなことをしたら、全然見えないのに」
家の中はどこに何があるか、大抵の物は知っているからいいが、外に出たら一人で歩くのもやっとだというのに。
「眼鏡なんか掛けたら、可愛い顔が台無しじゃない」
「だから、コンタクトにしなさいって言ってるのに」と今更、言われたって困る。
友達にも言われるが、コンタクトは怖いから嫌なのだ。
「眼鏡がなきゃ、誰かに捕まってないと歩けないって、お姉ちゃんも知ってるでしょ?」
「だから、いいんじゃない」
「?」
清良には、その意味がわかっていないらしい。
もちろん、ちゃあんとそこまで計算済みで沙良は言っているのだが…。
…クックック、清良ちゃんったら、全然わかってないんだから。
でも、二人でいちゃいちゃしてるところを見るのは、姉としてはちょっぴり微妙よねぇ。
自分は単なる付き添いでとことん脇役に徹しなければならない、とはいっても空の友達だという遥(はる)は一緒に来るが初対面の彼と会話が弾むとは思えず。
ましてや、その先になんて…とても、考えられる状況でもないわけで…。
仕事で着飾っているせいか、普段は至ってよく言えばシンプルで、悪く言えば無頓着?な沙良。
なんといっても、今日は空も来るとなれば目立つことは間違いないのだから、極力地味にいかなければ、楽しい時間も作れないのだから。
「そろそろ、迎えに来る頃ね」
時計を見ながら、「川波君、玄関先で倒れちゃうかもね」と話す沙良に「大げさね」とは言ったものの、実際、清良を目の前にした時の彼は…。
◇
父親が所有しているというセダンを運転する遥(はる)の隣で沙良の明るい声が聞こえ、初対面ながらも楽しそうな会話で花が咲いていたが、後部座席の清良と空良はというと二人とは対象的に黙ったままだった。
この日をどれだけ待ち望んでいたか、話したいことはたくさんあったが、今の空良の口からは清良を褒め称える甘い言葉しか出てきそうになく、きっと前の二人のこと、自分達の会話に夢中になりながらも注意深く聞き耳を立てているに決まっている。
膝の上に小さなバックをちょこんと抱えて俯き加減に窓の外を見ている清良のクルンとカールした睫毛やほんの少し開いた艶やかな唇、スラっとした足に視線が行くのを深く被ったキャップで隠しながら、空良もまた窓の外をジッと見つめるしかなかった。
空良が眼鏡を掛けていない彼女を見るのは初めて会って以来2度目だったけれど、玄関先で一瞬時間が止まり、暫くの間、遥(はる)に呼ばれていることさえ耳に入らないくらい見惚れていた。
恐らく、本人の好みというより、沙良の個人的な好みで選んだ服に違いないとは思ったが、女は化けると言うのは本当なのか、ほんのちょっと見ないうちに随分大人っぽくなっていたように思えた。
4人が乗った車が向かっている先は、清良が巨大迷路にチャレンジしてみたいという何とも可愛らしい要望を元に沙良と空良で探した牧場だった。
都心からも近いし、ここならモデルの二人が来ていても(いや3人?)そんなに目立たないのではないかと思ったから。
動物もいるし、この場所を提案したら大喜びしていた清良。
大人のデートを楽しむのは、もう少し先に取って置いてもいいだろう。
それは、今後の空良の行い次第なのかもしれないが…。
「どうしたのよ。二人とも黙っちゃって」
あまりにも清良と空良が静かなのを気にして、沙良がそう言って後ろを振り向いた。
とは言っても、後ろでいちゃいちゃされるのもどうかと思うが、せっかくこの機会を設けたのだから、もうちょっと楽しそうにしてくれてもいいのではないか。
「えっ、あぁ」
「まぁね、お邪魔虫が居たら、楽しい会話もできないでしょうけど。いいのよ?私達のことは、気にしなくっても」
それは、空良もわかっているのだが、二人っきりの時のようには上手く話題が出てこない。
何かキッカケがないと自然に会話なんて弾まないのだから仕方がないのだ。
大体、会うのはこれが3回目であって、初対面の沙良と遥(はる)がこれだけ話せる方が不思議なくらいだった。
「でも、空良が清良ちゃんに夢中になるのもわかるな」
ちらっとバックミラーに視線を向けた遥(はる)の記憶にあった清良と雑誌の表紙の彼女がどうも一致していなかったのだが、実物を見て納得したし、女性は変われば変わるものだという驚きと惚れた空良の気持ちもわかるような気がした。
姉の沙良とはあまり似ていないものの、二人並んだらすごい姉妹だということだけは間違いない。
そこへ空良が加わって、もちろん今日のことは妹の奈留にも内緒で来ていたから、自分はなんというメンバーの中にいるのだろうと思わずにはいられない。
「そういう、遥(はる)はどうなんだ。沙良に夢中なんじゃないのか?」
「あ?」
今度は運転に気を付けながら、隣に視線を送ると沙良と目が合った。
彼女のことも雑誌で見て知っていたが、モデルなんてお高く留まっているに決まっているという思い込みがどこかにあったのは確か。
こんな機会はめったにないという好奇心からの申し出ではあったけれど、それが話してみて、気さくな彼女とこんなに気が合うとは思わなかったのだ。
「そうかもな。沙良さんは、どう思っているかわからないけど」
「ふ〜ん、あっさり認めるのか。で、沙良は遥(はる)に会った感想は?」
遥(はる)の後ろに座っていた空良が、運転席のシートを覗き込むようにして聞き返す。
「は?あたしのことは、どうでもいいでしょ。清良ちゃんが寂しがってるわよ?」
上手くかわされた代わりに、いきなり振られた清良はどうしていいかわからず、俯いてしまった。
…あぁ、何て可愛いんだろう。
手とか握ったりしたら、もっと赤くなったりするんだろうな。
そうしたら、キスしないでいられる保障もないし。
それとなく振り返って二人を見た沙良は、思わず持っていたデジカメのシャッターを切ってしまったほど。
はにかんだ表情の清良を愛しい瞳で見つめる空良。
ふと、さっき『そうかもな。沙良さんは、どう思っているかわからないけど』遥(はる)が言った言葉を思い出す。
愛し合っている二人の思いが、こっちまで伝染してきそう。
…そうなればいいんだけど。
To be continued...
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