甘い唇
5


デートに誘ったものの、はて?どこに行ったらいいかしら。
せっかくだから、何かこう成果を発揮できるような、人のたくさん集まるところとか。
もう、大丈夫よね?あたし、ちゃんと彼の隣に並んでも。
散々待たせて、こんだけ?じゃあ、しょーもないし…
やっぱり彼より年上だし、どんなに頑張ったって若い子には敵いっこないんだから。

―――あぁ〜ぁ。
よくやったと自分を褒めてあげたいと思うし、周りからもそういう声を聞くけど、やっぱり自信ないなぁ…。
並んで歩く姿を想像すると、どうにも釣り合わない気がするし…。
でもでも、こういうのって恋する乙女って感じよね?
随分、長い間忘れていた胸のときめきというか、彼のおかげで、いや唇のおかげ?で、きっと少しは違うあたしを見つけることもできたはず。

「小室さん、な〜に一人で百面相してるんですか?」

「遅くなって、ごめん」と約束よりほんのちょっと遅れて、織田君の登場。
やっと、彼女から正式にお付き合いする許可をもらったということで、今夜は会社帰りに二人で軽く一杯飲みに行くことに。
ついでに週末デートのことも決めちゃおうと。
なのに女性を待たせるのは少々気が引けたが、出掛けに主任に捕まって。
そのおかげといっちゃあなんだが、待ち合わせ場所に先に来ていた彼女の可愛い仕草を垣間見ることができたのだ。

「あっ、織田君。見てたの?」
「そりゃぁ、可愛い彼女ですから。どんなに離れてたって、目に入りますよ」

―――かぁっ〜。
そういう、こっぱずかしい台詞を素面(しらふ)で言わないでっ。
でもでも、本当はこんなふうに言ってもらいたかった自分がいるのも確か。
ダサい男性(ひと)だったら幻滅だけど…織田君なら全然オッケーっていうか、目の前にいるスーツ姿の彼はめちゃめちゃカッコいいのよ?
彼女の欲目とかじゃなくって、正真正銘いい男なんだから。
自身を磨くことにせいを出していて気付かなかったのか、それとも彼も変わったの?!

「何、食べますか?小室さんの好きなもの、何でもいいですよ」
「ほんとっ?じゃあねぇ」

なんだかんだいって、色気より食い気。
無意識にぎゅーって彼の腕に抱きついていた。

「ごめんね、ベタベタするの嫌いだった?」
「いいえ、全然。俺はこっちの方が好きですけど」

織田君は、そっとあたしの手を取るとしっかり指を絡ませる。
温かい、そしてガッシリした大きな手。

…小室さんって、華奢な体のワリに出るところは出てるんだな。
それにすっげぇ、いい匂い。
本音を言えば、ベタベタくっ付いて欲しかったが、あのまま抱きつかれてたらマジでヤバかった。
益々、綺麗になっていく彼女に目が離せない。
大人の魅力漂う彼女に似合う男になろうと、俺も努力していることを果たしてわかってくれているだろうか。

「あれ?もしかして、織田君?」

「あぁっ、間違いない。織田君でしょ?高校3年間、一緒のクラスだった。覚えてない?あたしのこと」と突然、現れた女性。
全く記憶にない顔だったが、高校3年間一緒のクラスだったと言っていた。
…あっ、やたらに俺の後を追いまわしていたあの子か。
あれだけ、ベッチョリくっ付いてたにも関わらず一瞬、思い出せなかったのは、あの頃はポッチャリしていた彼女が今は別人のようにスマートにそして派手に変身していたからだ。

「隣の女性(ひと)、彼女さん?年上好みだったんだ、織田君って」

「ふ〜ん」と嘗め回すように見つめる、鋭い視線。
―――うわぁっ、織田君の同級生ってことは、あたしより若いの?
見えな〜い。
だけど、肌もスベスベだし、綺麗だわ。

「どうだって、いいだろう?」
「懐かしい高校の同級生に会ったっていうのに冷たいのね」
「これから、行くところがあるんだ。じゃあ」

彼女は何かを言っていたけど、あたしの手を引っ張るようにして歩き出す織田君。

もしかして、元カノ?!


To be continued...


※ このお話はフィクションです。実在の人物・団体とは、一切関係ありません。作品内容への批判・苦情・意見等は、ご遠慮下さい。

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