Happy Happy Whiteday
2/E

R-18

+++

2時間程クルージングとディナーを楽しんで船を降りるとあたしは、すぐに雅くんに今日のお礼を言う。

「雅くん、今日は本当にありがとう。クルージングも素敵だったし、ディナーもデザートもすっごく美味しかった」
「それは、よかった」

予想以上に美花は喜んでくれたようで、雅巳はホッと胸を撫で下ろす。
そしてこれからまだ先があるのだが、果たして美花はうんと言ってくれるだろうか…。

「あのさ美花、明日は何か用事とかある?」

もう試験も終わって講義もないし、既に休みに入っているようなもの。
バイトもしていないあたしは、特になんの予定もない。
でも、何かあるのかな?

「明日?特にないけど」
「そっか、よかった」

何が良かったのか、雅くんはなんだか嬉しそうに繋いでいた手に力を込める。
ちょっとほろ酔い気分のあたしは、自分の住むアパートとは違う方向に足が向いていたことに気付かなかった。

「ここは?」

目の前にあるのは、ウォーターフロントに建つ豪華ホテル。
てっきり家に帰るものとばかり思っていたあたしは、どうしてここにいるのかわからない。

「実は美花には内緒にしてたんだけど、今夜はここを予約してるんだ」
「え?」

ホテルを予約してるって…。
この場合、どういうリアクションを取っていいものか…。
雅くんの誕生日以来、お互いの部屋に泊まることは珍しくないことではあったけれど、こんなふうにホテルに泊まるってことは今日が初めてのこと。

「ダメ?」
「ダメって、ことはないんだけど…。でも…」

そりゃあ、あたしだって雅くんと一緒にいられるって思ったら嬉しいし、一度泊まってみたいなって彩那とも話していたおしゃれなホテルだもん。
だけど、またお金のことって雅くんは言うかもしれないけど、さっきだってすっごく贅沢なはずだったのにこんなにしてもらっていいのかなって…。

「じゃあ、行こう。せっかく予約したんだし」

雅巳は、美花が思っていることがわかっていたからこそ、それについては敢えて何も言わずにホテルの中に入って行く。
一郎にクルージングのパンフレットを見せられた時には、雅巳自身もホテルに泊まるとまでは考えていなかった。
予約を頼む時に『もちろん、オプションもだよな』と一郎に言われて、初めてそういうものがあるのだと知ったのだった。
クルージングにそんなに時間を取られるわけではないので、泊まらなくても十分家には帰れるけれど、できることなら朝まで一緒にいたいと思うのは当然のこと。
敢えて雅巳はそこで明確な返事はせずにただ微笑んだだけだったのだが、一郎にはそれだけで雅巳の気持ちは伝わったらしい。
『従姉には、俺の大事な親友の彼女のために特別眺めのいい部屋を取ってくれ、と頼んでおいたから』と後で言われて、さすが一郎だなとそしてそこまでしてくれる親友に感謝した。

チェックインはフロントではなく、いきなりエレベーターに乗って専用のレセプションデスクで行う。
何もかもが初めてのあたしには、ただ雅くんの後に付いて行くしかない。
そして案内されたのは、最上階の海の見える眺めのいいお部屋。
―――うそ…これってスィートルームって、言うんじゃないの?
あたしは泊まったことがないからよくわからないんだけど、豪華なソファーが真ん中にあって、なんだかものすごく部屋だって広いんだもの。

「うわっ。すっごい、綺麗っ!!」

部屋の豪華さもさることながら、一面ガラス張りの窓から見えるウォーターフロントの夜景は、さっき船上から見たものとはまた違った美しさだった。

「気に入ってくれた?」
「うん。っていうか、こんなすごいお部屋に泊まるなんて」
「俺もびっくりした。さっきのクルージングもこのホテルも、全部一郎が旅行会社に勤めてる従姉に頼んで予約してくれたんだ」
「一郎さんが?」

あたしも雅くんの親友の一郎さんには、何度か会ったことがある。
すっごくカッコいいんだけど面白くて気さくな感じが、ちょっと男の人が苦手なあたしでもすぐに打ち解けることができた。

「そう、だからかなこんなに頑張っちゃってさ」

一郎に任せたままだったから、まさかこんなにすごい部屋を予約していたとは思いもしなかった。
特に驚くような金額を支払ったわけでもないのにいくら旅行会社に勤める従姉の力でもここまでできるものなのか?
後で、一郎に確認しなきゃダメだな。

「じゃあ、一郎さんに感謝しなきゃね」
「そうだな。あいつ今頃、同じ大学の女の子達と楽しくやってるはずだよ」

バレンタインの時に雅巳にチョコレートを渡しに来た女の子達から代わりに受け取って、今日はそのお返しにとみんなを誘って豪遊するんだと意気込んでいたからな。
美花の言うように一郎に感謝しなければならないなと思いながら、雅巳は美花を背後からそっと抱きしめる。
こんなに綺麗な美花を目の前にして、もう我慢などできるはずがない。

「美花」

名前を呼びながら、美花の耳を甘噛みする。
耳の弱い美花は身を捩って雅巳の腕から逃れようとするが、腕に少しだけ力を入れてそれを許さない。

「いやぁ」
「嫌、じゃないだろう?」

わざと意地悪な言い方をすると背後からはよく見えないけれど、美花が少し膨れたような顔をしているのがガラス越しになんとなくわかる。
そんな美花の腰に腕を回して彼女を自分の方へ向かせるとすかさずに唇を奪う。
何度も何度も角度を変え、唇を少し離しかけたところで今度は一気に舌を絡める。
――― 美花とのキスは、なんでこんなに気持ちいいんだろう?
幾度となく繰り返してきたが、一度味わってしまうと手放せなくなってしまう。
そして、美花の着ていたキャミソールワンピースの肩紐をずらすとストラップレスのブラの内側に手を忍ばせて、直に彼女の膨らみに触れた。
さっきのキスで感じたのか、既に蕾は固くなっていた。

「…っん…いやっぁ、雅…くん…こんな…ところ…で…」

地上24階のこの空間を覗く者はいないが、それでも恥ずかしさには変わりない。
だからこそ、普段ではとらないような大胆な行動に出てしまう。

「大丈夫だよ。誰も見てないから」
「もうっ。そういう、問題じゃないでしょっ」

ここで機嫌を損ねては元も子もないわけで、雅巳は名残惜しさを残しつつも彼女から一旦手を離す。

「じゃあ。俺のお願い聞いてくれたら、ここでは我慢する」
「お願い?」

雅くんのお願いとは、一体なんだろうか?

「ここね、バスルームからの景色が最高なんだって。だから、一緒に入ろう?」
「えぇぇぇ?!」

まさか、お風呂に一緒に入ろうと言われるとは思ってもみなかった。
だけど、雅くんのさっきの言い方だとお願いを聞かなければ、ここで続きをするということになる。
―――これって、究極の選択じゃない…。

「ダメ?」
「ダメって…。お風呂に一緒に入るなんて、恥ずかしいもん」
「別に恥ずかしがることなんか、ないだろう?」
「だって…」

雅くんは、恥ずかしくないのだろうか?

「じゃあ、ここで続きをしてもいいのかな?」
「うぅっ」

―――意地悪だ…。
雅くん、いつからこんなに意地悪になったの?
でも、バスルームから見える景色が最高だって、雅くん言ってたわよね?

結局、あたしは雅くんの言う通りに一緒にお風呂に入ることになった。
ものすごく恥ずかしかったけど、バブルバスだったから泡で見えなかったし、何よりもバスルームからの夜景は最高だった。

「すっごい。お風呂に入りながら、こんな綺麗な夜景が見えるなんて」
「だな。でも、俺はやっぱり夜景より美花の方がいいけどな」

そう言いながら、雅くんはあたしの胸に手をあててゆっくりと揉んでくる。

「もうっ。雅くんっのえっち!」
「言ったろ?男は、みんなえっちなんだって。それにこんな色っぽい美花を目の前にして、普通でいられるヤツなんていないよ」

今日の美花はいつもの数倍色っぽくて、手を出すなという方が無理というもの。
一郎に付け加えるようにして、バスルームからの眺めは最高らしいぞとは言われていたが、これほどとは思わなかった。
しかし、今の雅巳にはそれすら目に入らないほど美花の方が美しかったのだから。

「ちょっ、雅くんっ。こんなところで」

雅巳の手は、胸の膨らみから段々と下の方へと下がっていって秘部へと触れる。
泡のせいなのか美花自身が感じているからなのか、ヌルヌルとしたものが指に絡む。

「んっ…あっ…」

口では嫌と言いつつも、体は正直である。
雅巳の指が美花の中に入ってくると甘い声が洩れる。

「美花、感じてるの?」
「いやぁ、そんな…はぁ…」
「俺、もう我慢できない」

こんな可愛い声を聞かされて、我慢できるはずもなく…。
雅巳は美花を正面に向かせると、自身を美花の部分にあてがって一気に貫く。

「やあぁっ、雅…くんっ」

向かい合っての行為は、今までに感じたことのない奥まで雅くんを感じて、頭の中がフリーズしてしまいそうになる。

「はあぁぁぁっ…んっ…」

雅くんに容赦なく下から突き上げられて、波が立つように泡が揺れる。
あたしは、雅くんの首に腕を回してしがみ付いているのがやっとだった。

「やっ、イっちゃうっ…」
「俺もっ…イくっ…」

二人同時に果てたけれど、美花は暫く動くことができなかった。

+++

「もうっ、雅くんの馬鹿っ。せっかくの夜景だったのにっ」

若さというものは、恐ろしいもので…。
美花には悪いけれど、あの状況で雅巳が一回で終わるはずがなく…。
最後には美花がのぼせてしまい、ゆっくり夜景を楽しみながらのバスタイムを過ごす間などなかった。
それで、美花はこんなにもご立腹なのだが…。

「ごめん…」

美花を喜ばせるために計画したのに最後がこれではどうしようもない。
しかし美花だって、雅巳の気持ちがわからないわけではないのだ。
自分のためにこんなに素敵なホワイトデーを考えてくれたのだから。

「あたしこそ、ごめんね。雅くんは、こんな素敵なホワイトデーを考えてくれたのに」
「美花―――。    あっ、忘れるところだった」

雅巳は、掛けてあったジャケットのポケットの中からあるものを取り出すと美花の手のひらにそっと載せる。
それは、ガラスでできている瓶の中に色とりどりのキャンディーが入っていた。

「ホワイトデーって、バレンタインのお返しにキャンディーを贈る日なんだろう?」
「うん?これ…」

よく見るとキャンディーに混じって何かキラキラと光る物が、透明のカプセルに入っているのが見える。

「開けてみて」、そう雅くんに言われて瓶を開けてカプセルを取り出すとその中には種類の違うピンク色のいくつもの小さな石が付いたピアスが入っていた。

「ピアス?」
「美花、ピアス付けたいって言ってただろう?だから」

前々から、ずっとピアスを付けたいんだと雅くんに話してはいたのだが、なかなか穴を開ける勇気がなくて保留のままだった。
耳に穴を開けることに雅くんはあまりいい返事をしてくれなかったけど、あたしがどうしてもっていうのを聞いていたからこうして後押しすることも兼ねてプレゼントしてくれたに違いない。

「ありがとうっ、雅くん。すぐ病院に開けに行く」
「どういたしまして。でも、大丈夫?」
「大丈夫。だって雅くんがせっかくくれたピアス、早くしたいもん」

あたしは、雅くんがくれたピアスの入ったカプセルを目の辺りにかざして見る。
キラキラと輝くピンク色の石が、ルームライトにあたってとても綺麗に輝いている。

「雅くん、今日は本当に素敵な夜をありがとう」

お礼を込めて、雅くんの頬に軽くキスをする。
不意の行動に一瞬、驚きの顔を見せた雅くんだったけど、すぐに笑顔に変わってあたしをぎゅって抱きしめた。
一時はどうなることかと思った雅巳だけれど、終わり良ければ全て良し。
しかしこの後、雅巳は調子に乗ってまた美花のご機嫌を損ねてしまうのだけれど…。

何はともあれ、甘々な二人の夜はゆっくりと更けてゆくのでした。


END


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