SLS
No.15 花粉症


ヒヤっ…ク…シュんっ―――

ふぇ…

鼻水はズルズル。
さっきから、ずっとくしゃみも止まらない。
―――これって、花粉症かしら?
自分はそうじゃないって思ってたけど、とうとうなってしまったのかも。

「風邪って感じじゃなさそうだな。結衣って、もしかして花粉症だったのか?」
「あたしはそんなことないと思ってたのに、とうとう今年はなっちゃったみたい」

ヒヤっ…ク…シュんっ―――

ふぇ…

ティッシュ一箱片手に目は充血しているし、化粧はすっかり剥げて、髪はボサボサ。
せっかく、彼が家に来てくれたというのにムードも何もあったもんじゃない。
だいたい、こんなに大きなくしゃみを繰り返したら、近所迷惑にならないかしら?

「大丈夫かよ」
「だめぇ…」

ヒヤっ…ク…シュんっ―――

ふぇ…

うつるもんじゃないだけ良かったかもしれないけれど、花粉症の彼女って何だか可愛くない感じぃ。
あたしのくしゃみも可愛くないからかな。

「ほら、鼻水出てるぞ」

彼が、子供にふ〜んって鼻を咬ませるみたいにあたしの顔に後ろから手を回してティッシュを数枚を鼻の位置に被せるとゴシゴシって―――。

「痛っ〜ぃ」

そんなに強くしたら、痛いじゃない。
なんて、あたしの言葉など全く無視して陽はゴシゴシ、ティッシュを擦り当てる。

「つべこべ言わない。ったく、子供なんだから」
「もう、いいっ。自分でやるから」
「あっ、鼻の頭が真っ赤になっちゃったな」

―――え?
陽が、強く擦るからっ。
時期外れのトナカイじゃあるまいし。

「今夜は俺が夕飯の支度と片付けはやってやるから、結衣はそこでゆっくりしてていいぞ」

―――陽が?
まぁ、彼は意外に料理も上手だし、片付けもわりと手伝ってくれるけど…。
花粉症くらいで、そこまでしてもらわなくても。
そうだった!風邪をひいた時のために可愛いキャラのマスクも買ってあるもの。
あれをすれば、大丈夫。

「大丈夫、鼻水垂らさないようにちゃあんとマスクするから」
「あ?」

「そうじゃなくってさ」と苦笑する陽は、鼻水をズルズルと垂らしながら料理している結衣を想像したから。
今夜はそういうつもりではなくて、たまには自分が彼女のために腕を振るうのもいいかなと。
晴れて、彼女が花粉症になった記念?!に。

「たまにはさ、俺が結衣のために腕を振るうよ」
「ほんとに?」
「あぁ」
「わぁい。花粉症になったら、陽が優しくなったぁ」
「どういう意味だよ。俺はいっつも優しいだろう?」

「そんなことないもん」と口を尖らせる彼女の鼻の頭はやっぱり赤かったけど、どんな彼女も可愛いことに変わりない。
いつだって優しくしたいけど、そこは俺っぽくないっていうか、やっぱり恥ずかしいんだよ。
だから、こういう時だけ…。

ヒヤっ…ク…シュんっ―――

ふぇ…

隣で豪快にくしゃみをしている彼女を抱きしめた。


To be continued...


続きが読みた〜い、良かったよ!と思われた方、よろしければポチっとお願いします。
福助


NEXT
BACK
INDEX
SECRET ROOM
TOP


Copyright(c)2006-2013 Jun Asahina,All rights reserved.