『あ〜ぁ―――』
せっかく陽が家に来てくれたっていうのに、結衣はさっきから元気がなく『あ〜ぁ―――』とソファーに寝転んでしまう。
どうしたんだ?
結衣の好きなKFCのチキンを買って来ても、ほんの少し食べただけで残してたし…。
どこか、体調でも悪いのだろうか。
「結衣、どうした?調子悪いのか?」
「え?ううん、そんなことないけど」
「そんなことないって言うわりに食事もほとんど取ってないし、元気もないみたいだしさ」
「ちょっと食欲がないだけ。なんだか、揚げ物を見るとムカムカしてきて」
ムカムカ?
そう言えば、酸っぱいものが食べたくてとかいって梅干をやたらに食べてたな。
えっ…まさか、それって…。
眠ってはいないようだけど、目を閉じている結衣を心配しながらも陽はカレンダーに目を向ける。
最近は忙しかったからご無沙汰しているが、今まで週一度か二度は必ずと言っていいほどえっちをしていたわけだから、いつとは断定できないが、ただ、一度だけそのままで…。
結衣は安全日だって、言ってたけどな。
そんなことは、誰にもわからない。
ってことは、俺は父親になるってことなのか?
漠然とではあったが、結婚も考えないわけじゃない。
もちろんその相手は結衣に決まっているけど、それを通り越して父親になることまでは考えていなかった。
そうはいっても、きちんとケジメだけはつけなければならないだろう。
しかし、俺が出来ちゃった婚とはねぇ。
世間でも、今や普通になりつつある出来ちゃった婚。
芸能ニュースで、立て続けにその話題が報じられた時期もあったくらい。
結衣はもう、病院に行ったのだろうか?
一人で、悩んだりしていないだろうか…。
陽のことを気遣って一人で抱え込んだりしないか、それがとても気掛かりだった。
こういう時は、俺からさり気なく聞いてあげる方がいいのかな。
上手くタイミングが掴めない。
彼女の両親にも挨拶に行かなければならないし、自分の親の反応はどうなんだろう?
まず彼女を連れて行って、反対することはないと思うけど…。
それに貯金もある程度はあるつもりだが、でも…。
その前に結衣は、俺が相手でもいいのか?
もっと、他の男の方が幸せにしてあげられるのでは…。
「陽?」
「えっ」
「陽こそ、どうしちゃったの?真剣な顔して」
黙り込んでしまった陽が気になって、結衣が声を掛ける。
今まで見たことがないような、陽の真剣な顔。
「あっ、いや…」
―――ん?
陽、どうしたのかしら…。
あぁ〜ぁ、それにしてもダルイわぁ。
最近、寝不足が祟ったせいか体がダルくてしょうがない。
わけもなく胃もムカムカして、あっさりさっぱり系の食事しか取る気もしないし。
そこへ追い討ちを掛けるようについさっき、月のものもやって来た。
あぁ〜ぁ…。
「あのさ、結衣」
「ん?」
「あの…その…もしかして…」
途中まで言い掛けて、次の言葉が出てこない。
「ごめんね、さっきなっちゃったの」
「あ?」
なっちゃった?!
「そうなの。タイミング悪いっていうか、良過ぎ?だから、今夜はごめんね」
なんだ…そういうことかよ…。
俺の勘違い…。
「いや、無理しないでもう横になった方がいいぞ」
「うん、ありがと」
ほんの一瞬の間に随分と色々なことを考えたような気がするが、男としてそれだけ真剣に受け止めていかなければならないということ。
今度、実家に連れて行くか―――。
陽はそっと、結衣を自分の胸に抱き寄せた。
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