「七夕って織姫と彦星が、年に一度だけ逢うというお話ですよね。
もし、町田さんがその立場だったらどうしますか?」
「七夕?」
『そう言えば、もうそんな時期だったか…。しかし、七夕とはまたベタな話をするもんだな』
「その前に麻野さんが織姫だったら、彦星と年に一回だけしか逢えなくても平気なのか?」
「あたしですか?そんなの嫌に決まってます。好きな人とは、一分一秒離れていたくないし、
毎日でも逢いたいですもの」
「そうかぁ、毎日か」
不敵な笑みを浮かべる町田さん。
えっ、あたしなんか変なこと言った?
「なんだよ。そうならそうと早く言えって」
町田さんは、あたしをぎゅっと抱きしめると、額に軽くくちづける。
「うわぁ、ちょっと。なにするのっ!」
あっ、それより町田さんは、あたしの質問に答えてないじゃない。
「町田さん、質問に答えてないですよ?」
「質問?あぁ、俺もお前と同じ。一分一秒離れていられないし、毎日でも逢いたいよ」
え?町田さんが?
なんか意外かも〜。
町田さんって、そういうとこどこか淡白な感じだし、彼女が『逢いたいの―――』って言っても、仕事が忙しいから我慢してくれとかなんとか言いそうじゃない。
なのにあたしと同じことを思っていたなんて…。
「お前。今、意外とか思っただろ」
さっきくちづけたところに今度は、デコピンくらわす。
『痛っ〜い』
ちょっと痛いじゃない、なにするのよっ!
「俺はな、お前といつだって一緒にいたいし、こうやって触れていたいんだ。それなのに…」
「町田さん?」
やだ…町田さん、あたしのことそんなふうに思ってたの?
「な〜んてな。こんなこと、今日しか言わないんだからな」
町田さんは照れているのか、少しだけ顔が赤い。
いっつも意地悪なことしか言わない彼が、年に一度でも言ってくれるなら…
それでもいいかな。
「町田さん、好きです」
でも、あたしだって今日だけですからね。
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