好きなもの。
歩の気持ち


あっ。

晋(しん)君に一緒に帰ろうと言われて門のところで待ち合わせをしていたんだけど、門には既にかなりの人だかり。
その中心にいるのは紛れもないあたしの彼氏の晋君で…。
そう、あたしと晋君は一週間前にめでたく彼氏と彼女になった。
だけど当の本人のあたしが一番信じられないのよね。
だって、晋君はサッカー部のレギュラーで勉強だっていつも10番以内に入ってるくらい頭がいい、それに加えてすごくカッコいいんだもの。
あたしみたいな十人並み以下の人間が彼女になれたことが奇跡としか思えない。
ちょっとぽっちゃりのあたしはダイエットの本を探して本屋さんに行った時にバッタリ晋君に会ってしまって。
晋君はあたしのことを全然太ってなんかいないって言うんだけど、そんなこと絶対にないって思う。
なのに痩せたらそのことをみんなに言っちゃうからって言われて、ダイエットはしてないんだけど。
それからちょっとずつ普通に話ができるようになって、しばらくして好きだって言われたの。
信じられなくて冗談だと思ってたら、晋君はクラスが違っていたのにこの学校に入学した1年の時からあたしのことが好きだったって。
あたしは、あんなにカッコいい晋君のことを知らなかったっていうのに…。
何度も晋君にはあたしなんかのどこがいいのか聞いてみたんだけど、可愛いの一点張りで。
麗子ちゃんの方がよっぽど可愛いのに晋君の目がおかしいんじゃないかって思うくらい。
だから、今でも晋君の傍にいるのは本当はあたしじゃないって思ってしまう。

今だって…。

「歩」

顔が見えなくてもどんなに離れてても、晋君のあたしの名前を呼ぶ声はわかってしまう。

「晋君」

晋君は周りの人達を避けながら、ゆっくりあたしの元に歩いてくる。
後ろの女の子達の刺さるような視線が痛い。
あたしが立ち止まったままなのを不信に思った晋君が、少し屈んであたしの顔を覗きこむ。

「歩、どうかしたの?」

あたしは、ただ俯いたまま黙って首を横に振った。

「そう?じゃあ、帰ろうか」

晋君は、自然にあたしの手を取って歩き出す。

「晋君?」

思わず名前を呼んでいた。

「ん?」

立ち止まって振り向いた晋君の顔があまりにも優しくて、思わず涙が出そうになる。
自惚れだって言われるかもしれないけど、その顔はきっとあたしにしか見せてくれないものだから。

「心配しないで、歩は俺のものだって教えたいだけだから」

きっと晋君はあたしが思っていたことがわかったんだと思う。
ぎゅっと手を握り返すと晋君もそれに応えてくれる。
それが嬉しくて微笑み返すとゆっくり歩き出す。
晋君のこと信じていいんだよね。

「晋君」
「何?」
「晋君」

「な〜んだよ」晋君が繋いだ手の方の腕であたしをつつく。

「好き」
「うん。うん?」

不意に晋君が立ち止まった。
あたしが晋君を見上げると

「もう一度言って」
「え?」

そんなの恥ずかしくって何回もなんて言えないよ。

「なぁ、もう一度言ってくれよ」

晋君はやっぱり覗きこむようにしてあたしの顔を見る。
そんなに近づいたら緊張しちゃうじゃない。

「晋君が好き」
「俺も歩が好き」

そう言うと晋君は掠めるようなキスをした。
あたしがまん丸の目で固まっていると

「歩の唇、いただき〜」

って。

「もうっ」


To be continued...


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