「あっ、詩音」
「麗」
キャンパス内でこうやって二人が遭遇することは極稀で、今日はツイているかもしれない。
「昨日は、ごめんね。みんなにカラオケに誘われて、うるさかったから電話の声がよく聞き取れなかったの。帰りもすっごく遅くなっちゃって、もう眠いし」
「ううん。でも、ほどほどにな」
だから、電話もメールの返事も来なかったのか…。
そういうことなら仕方ないなと思いながら、それでもこうやって短い時間とはいえ、やっと二人きりで話ができる…そう思った矢先に邪魔者が…。
「麗、ここにいたの?この後、みんなでボーリングに行こうって話をしてたんだけど、もちろんOKよね?」
「えっ、ボーリング?」
―――えっ、今日もなの?
昨日はカラオケで、今日はボーリング?
学生の本業は勉強のはずなのに、すっかりどこかに行ってしまってる。
いくら、社会人になったら遊べないといっても、これではどうなんだろう…。
「彼氏さん。そういうことなので、麗を借りますね」
詩音に向かって、ニッコリ微笑む希良。
―――ちょっと待ってよ…。
まだ、行くとも何とも言っていないのにぃ。
「ちょっ、希良ちゃんっ。待ってよぉ」
麗に考える隙も与えず、希良は彼女の腕を引っ張って強引に連れ出してしまった。
―――何だよ、せっかく麗と話してたのにぃ。
そんな二人の後姿を見て、詩音は大きく溜め息を吐いたのだった。
「詩音、何やってんだ。行くぞ」
とそこへ、ボーっと立ち尽くしている詩音の周りを取り囲んだのは数人の友達。
「行くって、どこへ」
「あぁ?忘れたのかよ。ボーリングだよ、ボーリング」
「ボーリング?」
「昨日、みんなで行こうって約束したじゃないか」
「そうだったっけ…」
「これだからなぁ、詩音は」
―――そんな、約束したか?
全く覚えがない詩音だったが…。
あれ?そう言えば麗もたった今、友達にボーリングに行こうと拉致られていたが、これは何かの偶然か…はたまた…。
「あっ、思い出した。ほら、行くぞ早く早くっ!何やってんだよ」
ついさっきまで、約束したことすら覚えていない様子の詩音が、打って変わってやる気満々で先に行ってしまう。
「どうしたんだ?あいつ…」
首を傾げ暫く仲間は呆然と詩音の後姿を見つめていたが、「俺達も行くか…」と後に付いて行った。
◇
詩音達がボーリング場へ向かうと数レーン離れたところで麗達は先にゲームを始めていたところだったが、彼女は詩音が来たことに気付いていないよう。
付き合い始めて1年以上になるが、詩音は一度も麗とボーリングをしたことがない。
―――あぁ〜麗、惜しいっ〜ガーターかぁ。
途中までは真っ直ぐに転がっていたボールはピンの手前でカーブして、ガーターに落ちてしまった。
もうちょっとこう、腕を真っ直ぐにだな…。
「麗ちゃん、腕を真っ直ぐにするといいよ」
「えっと、こんな感じ?木谷くん」
「そう、もうちょっと」
―――おい、木谷。
気安く、麗に触るなッ!!
詩音が思っていたことを木谷が代わりに麗に丁寧に教えているのだが、その教え方がどうにも体に触れ過ぎる。
ダーッー腰に触れるなッ!!腰にっ。
「次は、詩音の番だぞ。おい、聞いてるのかよ」
友達が何度も詩音の番だと言うことを告げているのだが、麗に夢中でそれどころではない。
「あ?今、それどころじゃないんだよ」
「それどころじゃないって…さっきは、あんなに張り切ってたくせに」
「何しに来たんだよ」と周りは、呆れ顔。
詩音は自分がプレーするどころか、麗に目が行ったきりで誰の言葉も耳に入らないらしい。
「ヤッターッ!!ストライクだぁ」
「すっご〜い、麗ちゃん」「麗っ」
麗が手を高く上げて、一人ずつパッチンパッチンと合わせる姿が視界に映る。
―――あ?何だよ、どうしたんだ?
友達が話し掛けるものだから、肝心な麗のストライクシーンを詩音は見逃してしまったのだ。
「ったく、お前らが話し掛けるから見逃したじゃないか」
「はぁ?知らねぇよ。そんなに見たきゃ、あっちに行けばいいじゃんか」
言われなくてもそうしたいところだが、だからといっていきなり行くわけにも…。
…のはずだった…。
「麗っ」
大声で名前を呼ばれ、突然現れた詩音に麗は驚いた顔でこっちを見てる。
「詩音?どうしたの?」
「どうしたも、こうしたもない。帰るよ」
「えっ、わぁっ…何?詩音ったらぁ、どうしたのよぉ…」
さっきは希良に拉致られ、今度は詩音に拉致られた麗。
「ねぇ、詩音。詩音ったら、どうしたの?そんな怖い顔して」
「どうもしないけど…」
どうにも我慢できなくて、みんなで楽しんでいた麗を詩音は連れて来てしまったが…。
子供みたいだと言われても、今は麗を独り占めしたかったから。
「どこに行くの?」
「僕の家」
「詩音の家?」
「あぁ、二人っきりになりたいんだ」
こんなふうに手を繋ぐのも、大学の合格発表以来かもしれない。
ずっと一緒にいたくて、頑張ってきたのに…いつの間にか忘れてしまっていたのかも。
お互い無言だったけど、手から感じる温もりが心地いい。
「誰もいないの?」
「母さんは、友達と観劇に行くって言ってた。遅くなるってさ」
「そうなの」
誰もいない家に二人っきり。
初めてじゃないけど、やっぱり緊張する。
「何か飲む?」
「お構いなく」
詩音がペットボトルのジュースとグラスを持って、2階にある彼の部屋に入る。
いつも思うけど、麗の部屋の倍くらいの広さがあって、すっごく大きな机の横の壁一面にある本棚はまるで図書館みたい。
それらを眺めていると、後ろから詩音に抱きしめられた。
「詩音?」
「ごめん、子供みたいなことして。なんか、麗が取られるような気がして」
「取られる?」
周りにいたのは単なる友達だとわかっていても、詩音には麗が取られてしまうような気がしてならなかった。
「あぁ、それに抱き合ってたし」
「抱き合ってたって」
抱き合ってたと言われて思い当たるのはストライクを取った時、希良とは確かにそうしたが…。
相手は女の子なのに?!
「えっとそれって、希良ちゃんのこと?」
「例え、女の子でも。麗を抱きしめていいのは、僕だけだから」
「焼き餅?」
「あぁ、もう何とでも言って。そうだよ、みんなで麗のことを取るから、焼き餅焼いた」
「もう、めちゃめちゃ嫉妬したね」という詩音が可愛いというか、それ以上にその気持ちが麗にはとっても嬉しかった。
麗は体の向きを変えて詩音と向かい合う格好になると、彼の背中に腕を回して胸に顔を埋める。
「嬉しいかも」
「嬉しい?」
「だって、焼き餅焼いてくれたんでしょ?」
「まぁ、そうだけど…ぁ…っ…」
麗は、詩音の首に腕を回してグッと自分の方に引き寄せると唇を重ねる。
不意の彼女からの熱いくちづけに、詩音は思わず声を漏らしてしまう。
「…麗…っ…」
舌を絡め、どんどん深くなっていくくちづけ。
彼女から、こんな不意打ちを受けるとは…。
唇を塞いだまま麗を抱き上げて、ベットに運ぶ。
―――麗が悪いんだよ。
僕のハートに火を点けたんだからね。
「…詩音っ…ぁ…っ…んっ…」
「可愛いよ、麗。もっと、その声を聞かせて」
「…やぁっ…そ…んな…っ…ぁ…」
カットソーを胸の位置まで捲り上げ、真っ白なその胸元にいくつものバラの花を咲かせる。
―――麗は僕のモノ…。
誰にも渡さない。
ブラのホックを外し、着ていた物を全部取り払うと本当に綺麗だった。
形のいい膨らみは張りがあって、淡いピンク色の蕾はツンと上を向いている。
「…んっ…ぁ…っ…詩…音…っ…」
「気持ちいい?」
「…そ…んな…あっ…っ…」
唇で吸いながら時折甘噛みし、蕾を舌でゆっくりと転がしていく。
その度に麗の口からは甘美の声が漏れ、それだけでも詩音の中心は熱く反り上がっていくのがわかる。
「…麗…好きだよ…」
「…あ…たし…も…詩音…が…好き…」
「もっと言って、僕が好きって」
「…好き、詩音…あぁ…っ…ん…っ…」
ショーツの上から秘部を指で擦り上げると、さっきよりも甘い声が麗の口から漏れた。
そこはもうしっとりと濡れていて、詩音を受け入れる準備は整っているように思える。
「麗、入れてもいい?僕はもう、我慢できそうにないんだ」
「…ぁっ…んっ…詩…音…き…て…っ…」
いつになく、大胆な彼女。
詩音は身に付けていた物を全部取り払うと自身に準備を施して、麗の中にゆっくりと沈めていく。
そのあまりの心地良さに、すぐにでもイってしまいそう。
「…うっ…麗っ…そんな…に…締め…たら…ぁ…」
「…だって…ぇ…ぁ…んっ…っ…」
腰の動きが段々と早くなって、お互いの絡めていた指に力が入る。
「…あぁぁぁぁぁぁ…んっ…イっ…ちゃ…う…っ…」
「…僕…もっ…麗っ…愛してる…っ…」
「…あた…し…も…っ…愛し…て…る…っ…あぁぁぁ…っ…」
麗は体を仰け反らせた後、そのままぐったりとして荒い息だけが部屋に響く。
詩音も同じ、暫くの間動くことができなかった。
◇
「そろそろ、帰らないと」
二人はずっと抱き合ったまま、すっかり外は闇に包まれていた。
「わかってる。でも、僕がちゃんと家まで送るから、もう少しだけこうしていて」
「うん。じゃあ、もうちょっとだけね」
本当は麗だって、ずっとこうしていたい。
だけど、ちょっと恥ずかしいかな…。
さっきは、あんなに大胆なことをしたのにねぇ…。
一人頬を染める麗を詩音は優しく抱きしめて耳元で「好きだよ」と囁くと、より一層真っ赤になったのでした。
To be continued...
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