プリンな彼女
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R-18

「稲葉、つぶれちゃったな。新井さん、一人で大丈夫か?」
「多分…」

中川君とあたしは、酔いつぶれた稲葉を見て溜め息を吐いた。
居酒屋での一次会が終わり、次は別の店で二次会、最後はカラオケで三次会となったのだが、さすがに彼は酔って寝込んでしまった。
───こんなに飲んで…。
そうは思っても、同期で久し振りに集まれば楽しくないはずがない。
まして明日は休みだし、羽目を外したくもなるだろう。

「楽しかったんだろうな。こいつがこんなになったのって、見たことない」
「うん、そう思う」
「俺さ、抜け駆けしようと思ったんだ」

「稲葉が新井さんのこと好きなの知っててさ」と話す中川は、いつもはもっと飲むはずなのに幹事というのもあったからかあまりお酒を飲んでいないようだった。

「え?」
「っていうか、稲葉があまりにじれったいから鎌を掛けた」

中川は随分前から、いや入社当時から稲葉が祐里香に好意を持っていることを知っていた。
なのに、あまりに稲葉が自分の気持ちを言おうとしないので、同期として一肌脱いだ…つもり?
彼自身も祐里香に想いを寄せていたのは事実だから、隙あらばと思わなかったわけではない。

「それで、あたしを誘ったの?」
「あぁ。いやぁ、あの時、駅に稲葉が来るとはな」
「あたしも不思議なんだけど、どうして稲葉が知ってたのかなって」

───そう言えば、何でか聞いてなかったわね。
どうして、稲葉が中川君と駅で待ち合わせていることを知ってたのか…。

「あの時のあいつ、怖いくらいにマジだった。新井さんのこと、すっげぇ好きなんだって。だから、付き合うようになって良かったなぁって思った」

───中川君にまで、迷惑掛けて…。
稲葉がじれったいのか、あたしが鈍感なのか…。
今だって、付き合っているっていうのはちょっと語弊があるし…。

「そろそろ、帰った方がいいぞ?他の連中は、朝まで飲むつもりらしいから」

目の前でカラオケを歌っているというか、怒鳴ってると言った方が当たっている人達は、とても帰る気配がない。
稲葉もこのままにしておけないし、中川の言うように先に帰った方がよさそうだ。

「うん。じゃあ、そうさせてもらう」
「俺、タクシー呼んでもらうよ」

何から何まで中川の世話になって申し訳ないと思いつつ、稲葉を見ればスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。
───今度こそ、ちゃんと好きって言わないと…。



「稲葉、大丈夫?取り敢えず、スーツは脱いで。シワになるといけないから」

結局、稲葉を彼の家には連れて行かず、あたしは自分の家に連れて来てしまった。
朝起きて、『何で、新井がっここに!』とか、騒がなければいいけれど…。

「ねぇ、ったらぁ」

───ダメかぁ。
ビクともしない稲葉にいくら話し掛けても、無理というもの。
仕方なく、あたしは稲葉のネクタイに手を掛けて着ていた服を脱がせていく。

『祐・里・香』
「えっ、何?稲葉」

あたしは名を呼ばれたような気がして稲葉に問いただしてみるものの、彼は目を瞑ったままで寝息を立てて眠っている。
───でも、確かに今、『祐里香』って、呼んだわよね?
気のせいかもしれないけど、あたしは勝手にそう決めると稲葉のううん、航貴の唇に自分のそれを重ねた。
ほんの一瞬、羽が触れるようなキスだったけど、自分からするのはなんだか恥ずかしい。
すぐに彼から離れると、あたしはシャワーを浴びることにした。

…◇…

稲葉が目を覚ますと既に辺りは明るく、カーテン越しに部屋に光が差していた。
しかし、そこはいつもの見慣れたものではない。
ふと、微かに残る唇の感触を思い出した。
『祐里香…』

「祐里香」

大きな声で名前を呼ばれて、キッチンにいたあたしは慌てて稲葉のところへ行く。
ベットで上半身だけ体を起こし、放心状態の稲葉を思わず胸に抱きしめた。

「どうしたの?稲葉。怖い夢でも見たの?」
「あっ、いや。祐里香が、いないから…」

ついさっきまで側にいてくれたはずなのに…。
大人気ないとわかっていても、急に不安になったのだ。

「今ね、朝食を作ってたの。でも、大丈夫?二日酔いになってない?」
「ごめん、大きな声を出して。結構飲んだなとは思うけど、大丈夫みたい」
「そう。だったら、シャワー浴びてきたら?すっきりすると思うし。その間に食事の用意しておくから」

………えっ、シャワー?
それより、未だに顔が祐里香の胸にあたっていて…そっちの方が気になって気になって。
思ったより、大きい?なんて言ったら、張り倒されるだろうなぁ…。

「そんな簡単に男に向かってシャワーを浴びてきたら?なんて、言うもんじゃないぞ」
「だって…稲葉は…」
「ん?俺が?」
「もうっ、言わせないでよ」

せっかくの感触は離れてしまったが、その代わり稲葉はしっかりと祐里香の腰に腕を回して逃がさない。
意地悪だとは思っていても、はっきり彼女の口から聞きたかったから。

「ちゃんと言ってくれよ。俺が何?」

───やだ、もうっ。
自分で言っておきながら、墓穴を掘ったと思っても、もう遅い。
一応、彼氏なんだから、シャワーくらいいいじゃないって思っただけなのにぃ…。

「あたしの彼氏なんでしょ?航貴は。だから…」

彼女の言葉を聞き終わるか終わらないうちに稲葉は、ぎゅっと抱きしめた。
既にシャワーを浴びたのか、祐里香からは微かにシャボンの香りがする。

「嬉しいな。彼氏だって、思ってくれるんだ」
「何よ、それ。違うの?」
「違わない。祐里香は、俺の彼女だろ?プリン好きの」

クスッと笑う祐里香の鼻のてっぺんにそっとくちづける。
真っ赤になったところがまた可愛くて、今度は唇にと思ったら、手で押さえられた。
………何だよ。おあずけ、かよっ!

「シャワー浴びてから」
「はいはい。その後、どうなっても知らないからな?覚悟するように」
「げっ…」

───あたしったら、また余計なこと言った?!
稲葉はベットから出ると、シャワーを浴びに行ってしまった。
でも…覚悟って…。


「もうっ、そんな格好で歩き回らないでっ」

シャワーを浴びて出てきた稲葉は、腰にバスタオル1枚であたしの側にいる。
───まぁ、着ていた物は洗濯中だから、仕方がないんだけど…。
それにしても…。
見惚れちゃうくらい、いい体してるのよ。稲葉ったら。

「いいだろ。着る物もないし、どうせ脱ぐんだろうから」
「えっ、脱ぐって…っやぁ…っ…ちょっ…」

稲葉に背後から抱きしめられて、耳たぶを甘噛みされ、思わず声を上げてしまう。
こうなることは想定済みであっても、恥ずかしいやらドキドキやらで、どうしていいかわからない。

「祐里香は、嫌なのか?俺とこうなるの」

その声は少し低くて、悲しげに感じられるのは気のせいだろうか?

「そうじゃないけど…恥ずかしいもん」
「恥ずかしがることないだろ?俺しかいないのに」

───まぁ、そうなんだけどっ。
でもでもね?航貴だから、恥ずかしいんでしょ?そこのところ、わかってよ。

「そうなんだけど…」
「好きだよ。祐里香」

全身がゾクゾクっと震える。
───あたしも好き、航貴が…。

「…っん…っ…ぁ…」

優しいけど、溶けてしまいそうなくらい情熱的なくちづけに祐里香は航貴につかまっていないと立ってもいられないほど。

「俺のキスって、そんなにいい?」
「ちがっ!」

───本当は違わない。
けど、言わないんだから。

「祐里香は嘘が下手だな。気持ちいいって、言えばいいのに」
「違うのっ…わぁっ…」

航貴は、祐里香を軽々と抱き上げるとベットへと運ぶ。
そのあまりの軽さに、彼女はちゃんと食べているのか疑うくらい。

「航貴…」
「ん?」

すぐ目の前に航貴の顔があって思わず目を逸らしそうになったが、それを堪えて見つめ合う。

「好き」
「ん、もっと言って」

───調子に乗らないでっ!って思ったけど、一度言ってしまえばどうってことないかも…。
っていうか、前にも言ったはずなんだけど…。

「好き、航貴が好き」
「俺も好き。もう、離さないから」

啄ばむようなくちづけの後、それは段々と深いものになっていく。
舌を絡め合い、息もできないほど。

「…っあ…んっ…こ…き…っ…」
「祐里香。もっと呼んで、俺の名前」
「航貴…」

祐里香は言われるままに航貴の名を呼び続ける。
航貴は彼女の着ていたカットソーと一緒にブラごと捲り上げると、真っ白な肌に形のいい膨らみが露になり、それだけでも欲情するには十分過ぎる。

「…あぁっ…っ…ん…っ…」

大きな手で優しく揉み解され、時折蕾を刺激されると体中に電流が流れたような衝撃が走る。

「…やぁ…そっ…ぁあ…っ」

もう一方の手がスカートの中に足を割って入り、ショーツの上から指が秘部を行ったり来たり。
つい、声も大きくなって、思わず指を咥えた。

「祐里香、声我慢しないで」
「だってぇ…」
「もっと、声が聞きたいんだ。だから、我慢しなくてもいいよ」

───そうは言われても、恥ずかしいじゃない…。

「…あぁぁぁっ…っ…っん…っ…」

ショーツの間から秘部の中に指が差し入れられて、我慢していた声が洩れてしまう。
───そんな…イっ…ちゃう。
感じやすい祐里香は、すぐにでもイってしまいそうだった。

「いいよ、イって」
「…でもっ…あっ…んっ…あぁぁぁっ…っ…」

呆気ないくらいに早くイってしまったあたし…。
これって…どうなの?

「祐里香、まだまだこれからだぞ?大丈夫か?」
「これからって…大丈夫って、言われてもっ…」

祐里香はまだ身に着けていた服を全部脱ぎ去って、生まれたままの姿になる。
そのあまりの美しさに航貴はもう我慢することなど出来なかったが、生憎ナニを持っていない。
そのまま、彼女の中に入ることは躊躇われた。

「と思ったけど、やめとく」
「え?どうして…」

───それって、あたしがすぐにイっちゃったから…。

「祐里香が悪いんじゃないんだ。俺、今日ゴムを持ってないから。もしもってこともあるし」
「えっと、ある…と思う」
「え?」

そりゃあ、いい大人なんだし、それくらい持っていても変じゃない…けど…。
航貴にとっては複雑な思いもないこともなかったが、彼女の中に入れるのなら、この際何も言わないことにする。

祐里香の持っていたゴムを自身に装着すると、ゆっくりと彼女の秘部にそれをあてがう。
一呼吸置いてからすこしずつ、自身を沈める。
………くっ、そんなに締め付けるとヤバイ。

「祐里香、そんなに締めるなっ」
「…だってぇ…あぁぁ…っん…っ…」

男として、すぐにイってしまうのはどうかと思うが、あまりの気持ちよさにすぐにでもそうなりそう。
ずっと想い続けた彼女とやっと一つになれるというのに、こんなに余裕がないなんて…。

「…あぁぁぁぁ…っ…こ…き…そ…ん…な…壊…れ…ちゃ…う…っ…」
「ごめっ、止められないんだ…」

本当に壊してしまうんじゃないかと思うくらい、彼女の最奥まで突き続ける。

「…やぁ…っ…イっ…ちゃ…う…っ…あぁぁぁっ…っ…」
「俺もっ…」

ほぼ同時にイっただろうか、航貴は祐里香の上に覆いかぶさるように倒れ込むと荒い息だけが部屋に響く。

「ごめん。大丈夫か?」
「大丈夫じゃない…わよ。あんなにしたら、壊れちゃう」
「ごめん、次は優しくするから」
「え…次って…」

───次って、どういうことよ。
まさか…。

「まだ、あるんだろ?ゴム」
「えぇぇぇぇっ。まだ、ヤル気?」
「当たり前だろ?一回で、済むわけないじゃないか」
「そんなぁ…」

───これじゃあ、いくら体があっても足りないわよぉ…。
でも、惚れた弱みだから、仕方ない。
とほほ…。

そんな困った表情の祐里香に航貴はそっとくちづけて、耳元で「愛してる」と囁く。
彼女は一体、どんな反応をするだろうか?
きっと、真っ赤になって抗議するに違いない。
………さっき、言っただろう?離さないって。
心の中でそう呟きながら、今度は真っ直ぐに目を見つめてもう一度「愛してる」。
より一層赤くなった彼女をぎゅっと抱きしめた。


END


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