ふたりの夏物語W
1


「雨宮さぁ〜ん。急なんですけど、週末に一泊で海に行きませんか?」

「友達と行く予定で貸し別荘を予約していたんですけど、今になってダメになっちゃって。キャンセル料を払わないといけないんで、雨宮さん一緒に行ってくれないかなぁなんて」と今年新人で入社した如月 深耶(きさらぎ みや)ちゃんが可愛くペンで印が付けてあるカレンダーを指差しながらお願いのポーズを取っている。
週末はほとんどといっていいほど空いている私には、悲しいかなその日も予定は空白のまま。
というより、夏だっていうのに恋人もいなけりゃ誰とも予定が入ってないってどういうことよ〜。

「まさか、女二人でってわけじゃないでしょ?」

海の貸し別荘に女二人で行くなんてあり得ないと思うが、かといって彼女の友人の中に自分一人が加わるのはどうなんだろう?

「4人で行く予定だったんですけど、私以外の全員がキャンセルになっちゃって。雨宮さんが来てくれてもあと2人探さないと。女の子だけだったんで、できれば男子がいいなぁなんて。私、彼氏いないし」

な〜に、そういうこと?
私に男を見繕えって?そんな人がいたら、予定なんてとっくに埋まってるって。

「雨宮さんから芹澤さんを誘ってみてくれませんか?ついでにそのお友達の彼なんかも。彼のお友達だったら、きっといい男だと思うんですよねぇ」
「は?私にあの芹澤 魁(せりざわ かい)を誘えって?」

無理、無理!!絶対、無理っていうか、それだけは勘弁して欲しいわよ。
よりによって芹澤君と一緒に海に行くなんぞ、考えただけでも恐ろしい。

「雨宮さん、芹沢さんと付き合ってるんじゃないですか」
「えっ!?どっから、そんなガセネタ…」

「違うんですか?」って違うに決まってるでしょ。
誰に聞いたかわからないけど、深耶(みや)ちゃんがそう思ってるってことは、他に人もそう思って人がいるってこと?
嘘でしょ。
何であいつが私と付き合ってるのよぉ。

「芹沢君とは単なる同期ってだけ。別に仲が良いわけじゃないし、っていうかその逆だし。第一、あの男が誘って来るわけ」

だいいち、もしもよ?もしも来るって言われたら、それはそれで困るというか。

「ダメ元で、聞くだけ聞いてみて下さいよ」
「聞かなくてもダメだと」
「そう言わずに一応、聞いてみて下さいって。雨宮さんなら」

こう懇願されると断れないこの性格を何とかして欲しいわ。
「わかったわよ」どうせ、ダメなんだから聞かなくてもいいじゃないと思ったが、それでは彼女は納
得できないらしい。
本当は聞きに行くのでさえも嫌なのに。
仕方ないか、どうせダメに決まってるんだから。
芹澤とは3年前にこの会社に同期入社したがお互い違う部署に配属されて、それでも結構頻繁ではあるものの、同期で集まって飲みに行くくらいの仲でしかないのに。
なのに、あの男との数少ない接点を頼りにこうやってお近付きになろうという女性が後を絶たないのよ。
全く以って、迷惑以外の何者でもないわ。



「芹澤君、ちょっといい?」

隅の方から彼に熱い?視線を送るとバッチリ目が合ったので手招きしてみたら、嫌々、でもなく心なしか嬉しそうな表情でやって来た。

「雨宮 来夏(あまみや らいか)さんが、俺に用なんて珍しいな」

私だって深耶(みや)ちゃんに頼まれなかったら、こんなところまでノコノコやって来ないわよっていうか、フルネームで呼ぶな!!フルネームで。
仕事の話ではないからとフロアの外に連れ出したが、周りの視線、特に女性の視線が痛いのは気のせい?

「あのね。今度の土日なんだけど、一泊で海に行かない?」
「雨宮さん、随分大胆だな。俺と二人っきりで海に行きたいなんて。それも泊まりで」

「は?ちょっとっ、勘違いしないでよ。誰が二人っきりでなんて言ったのよ!!新人の子が友達と4人で貸し別荘を予約してたんだけど、急にキャンセルになったからあんたを誘ってって」

ったく、何わけのわかんないことを言ってるかな。
誰が、芹澤君なんかと二人っきりで海になんぞ。
頼まれたって行くもんか。

「な〜んだ。俺はてっきり、雨宮さんと二人かと思ったのに」

「残念」なんて、冗談も休み休みに言いなさいよ。

「そんなわけないでしょ?で、どうするの?どうせ、芹澤君はダメだって言ったんだけど」
「いいよ。別に予定もないし、海なんて久し振りだな。それに雨宮さんの水着姿も拝めるし」
「は?水着!?」

そうだった。
海に行くんだから水着は必須アイテムよね。
そんなことまで考える頭がなかったわよ。
って、その前に今、芹澤君は行ってもいいとかなんとか言ったような…。

「もちろん、ビキニだよな」
「ちょっと待って。芹澤君、本気で来るの?」
「何だよ。自分から誘っておいて、その言い草は」
「だって、何で?」

何で、断らないのよ。

「何でって、海にも行きたいし、雨宮さんの水着姿も拝めるし、こんな楽しいイベントはそうそうないだろうから」
「断ってよ。私はあんたなんかに水着姿を見せる気なんて、これっぽっちもないんだから」
「なら、何で誘いに来たわけ?」
「それは…頼まれたから。まさか、芹澤君が来るなんて思わなかったし」
「雨宮さんは、俺が来ないことを望んでるんだ?」
「え?そういうわけじゃ」

そういうわけだけど…そんな言い方しなくても。
そりゃあ、できれば避けたい事項よ?
だって、芹澤君といるといっつもこんなだし、イライラするっていうか、喧嘩越しにしか話せないし。

「じゃあ、他に誰か男子を一人誘ってくれる?あと、できれば車を用意してもらえるとありがたいんだけど」
「わかった。大学時代の友達でもいい?」
「うん」

ひょんなことから4人で海に行くことになったけど、果たしてどうなることやら。


お名前提供:雨宮 来夏(Raika Amamiya)&芹澤 魁(Kai Serizawai)/如月 深耶(Miya Kisaragi)/近藤 蓮(Ren Kondou)…ライカ さま


※ このお話はフィクションです。実在の人物・団体とは、一切関係ありません。作品内容への批判・苦情・意見等は、ご遠慮下さい。
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