恋に臆病だった私は実はかなりの乙女…だったり…した。
もちろん…尾西さんを振り回したかった気持ちが少しもなかったと言えば嘘になるだろう。
少し高額な婚約指輪をおねだりすれば、この早急な結婚を諦めるかな?
(その程度の結婚願望がない…とか色々わかるじゃない?)
と思ったけど嫌な顔もしないで笑顔のまま他の指輪も勧める。
「星良に似合いそうだな。気軽につけるのが嫌なら、少し大人しいデザインの
小さな石のついたリングも一緒に買えばずっと着けられるだろう?」
と、妙に優しい。
俺様で通っていた彼なのに。
喧嘩していた3日間が堪えたのかな?
私もしんどかったし…仲直りの…エッチも…ありえないほどハードだったし…。
結局彼が選んでくれた、プチピンクダイヤのリングと私が選んだエンゲージリングを
買ってもらい。私好みのシチュでプロポーズすると言い張った。
少し考えて…半年先にある、自分の誕生日に、して欲しいとお願いすると
そんなに待てないと言われ、1ヶ月以内で。と制限をつけられてしまった。
お付き合いしていた人もいなかった私が半年で結婚なんて考えたこともなかったし
現実主義だと思っていたから乙女…なんて思ったこともなかった。
だけど同じされるなら私の望むものよりも『自分自身の言葉と態度』でプロポーズして欲しい。
そう言えば怒っちゃうんだろうか?
いつものように二人っきりの彼の部屋で黙り込んだ私は賭けに出た。
ぎゅっと抱きついて、そのままの姿勢で彼を見上げる。
演技が出来る人間じゃないけど心を込めてお願いしたら聞いてくれる?
「尾西さん…。私…あなたの言葉で…聞きたい。」
真っ直ぐ私を見下ろす彼がゴクンと喉を鳴らすのがわかった。
「星良…。出逢ったあのときから俺はお前に囚われていた。
―覚悟を決めてお前に向き合って…正直…手放すことなんて出来ない。
たった―3日離れた現実も耐えられなかった。」
「―うん。」
私も同じ。
出逢った時は精神的に普通じゃなかったから彼のことはすっかり忘れてしまったんだろう。
ただ…彼以上の人に惹かれることはなかった…。
「―だから星良は俺のモンだよ。」
俺様と言われる彼らしいプロポーズ。
飾ることなく自信満々で…いやもしかして…チラッとでも不安なのかもしれない。
だから私の望むシチュでしたかったのかな?
「私をあげたら…私にあなたをくれる?」
私の両頬を大事そうに包みながら彼はこれ以上ないくらい真剣な目を向けた。
「当たり前だろう?返品は不可だ」
濃厚な夜を過ごし夜以外も私の頭は彼一色になる。
困った…。仕事にも影響があるかもしれない。
彼と出逢って私…どんどんバカになってきている気がする。
いいのかな?
でも―…離れるなんて嫌だ。
無意識に彼を目で追っていたようで私に気がついた彼は手を軽く揺らし私を手招く。
なんだろうと思いつつも彼に向かうと私の直属の上司と話していた。
「岩城?」
いきなり現れた私に上司は声をかけてきた。
「主任お疲れ様です。」
「ん。お疲れさん。何かあった?」
「いえ…」
私と主任の会話を邪魔するように尾西さんが主任に話しかける。
「俺が呼んだんですよ。―さっき話していた企画から彼女を外してもらいたくて」
「は?」
尾西さんの言葉に主任はポカーンと口を開けた。
「まだ正式に話してないんですが、彼女は近々会社を辞めることになるので。」
「お…尾西さん?」
待ってよ。そんな話聞いてない。
確かにプロポーズは受けたけど…。近々って…何?
グイと私を抱き寄せ彼はいつもの意地悪そうな顔をした。
「俺の嫁になるので。」
「お…尾西?冗談はキツいぞ?」
「冗談ではないっすよ?なので手出しは厳禁!
企画と称して飲み会や食事に誘うことも駄目ですよ?」
言葉はそれほどきつくないけどその目は怒りさえ見える。
ほぇ?珍しい…尾西さんが敵意むき出しなのは。
「そういう訳で、退職の時期は考えるつもりですが、
俺としたら最短で来月にでもさせたいんですけどね?」
力を籠めてそう言うと私を抱いたまま主任の前から歩き出した。
小さく舌打ちする尾西さんを覗き込むと何故だか睨まれた。
「星良!いいか?一刻も早く会社を辞めて、俺んちに来い!
まだ何も決まってないから結婚まで日数があっても先に入籍だけでもするか。」
またまた命令?俺様100%の尾西さんには何を言っても聞いてもらえないけど
急にどうしたのかな?
「どうして?…急に辞めろなんて…今まで何も言ってなかったのに…」
尾西さんはまた不機嫌そうな顔を隠さない。
「…お前の上司。新しい企画にお前を推して二人っきりの時間を増やしたいから
俺に協力しろって…言ってきやがった。確かに俺に関係する企画で、
お前と俺の関係を知らなくても…言って悪いことと良いことがあるだろう?
もう隠さず、お前は俺のものだと宣言して一刻でも早く寿退社させてやる!」
拳を握りそう言い張る彼の顔は至って真剣だ。
嘘っ…。
彼は有限実行するタイプ。
今までそうだったし、今後もそうだと思う。
何を言っても無駄だと観念した私は、結婚情報誌でも買って幸せに浸るべきだと思った。
終わり
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じゅん様 200万HITおめでとうございます。
最近どうも自サイトの更新も思うように行ってませんが、
じゅんさんのサイト、200万HITと記念となる数字ですもの。ぜひ何かさせてください♪
ということで、何かお祝いにリクエストありますか?とこそっと伺ったところ
例のカップルに会いたいとおっしゃられたので久しぶりに書かせていただきました。
けっこうラブラブな二人です。(笑)
これからも素敵な作品心待ちしてます。
佐和
2008.07.20
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佐和 さま
200万ヒットのお祝いに素敵なお話をいただき、ありがとうございました。
また、この二人に会えてとっても嬉しいです。
いよいよ、寿退社ですね。
尾西さんも早く身を固めないと、星良ちゃんを狙う輩は多いですから。
お忙しい中、我が侭を聞いて書いてくださって、本当にありがとうございました。
暑い日が続きますが、どうかお体にはお気を付け下さいね。
2008.7.20 朝比奈じゅん
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