Actor
おまけ

【注】このお話は、おまけに店主が書きました。


自分の腕の中に隠すように未来を抱き込んで撮影現場を後にする大和。

「ねぇ、もうちょっと離れた方が…」

「こんなにくっ付いていたら、みんなに変なふうに思われちゃうわよ」と体をよじらせる未来を大和はワザとおもしろがって自分の方に引き寄せる。

「こういう時こそのS企画。米澤さんっていう敏腕部長がいるんじゃないか」

これだけ、大胆な行動を取っているにも関わらず、二人の中が、いや、未来が”はるか”という名でドラマに出ていても一切の素性が洩れないのはS企画の厳重な包囲網に守られているからと彼の言うように米澤さんの力が大きいことは確か。
しかし、だからといってそれをいいことに大っぴらに見せる必要などどこにもないのだ。

─── 段々…エスカレートしているように思うのは私だけ?!
二人っきりの時でも、相手があの国民的俳優の吉原 大和なんだと意識しただけで、緊張とドキドキが止まらないのを彼はわかっているのだろうか?
一風変わって扱いが難しい、気難しいのと我侭で担当者が気に入らないとすぐに辞めさせてしまうと何人もマネージャを辞めさせたあの吉原 大和の担当が、とうとう自分に回ってきた時のあの貧乏くじを引いた時のようなこの世の終わりを味あわせたことなんてね。
まぁ、本人はこれっぽっちも思ってないんでしょうけどっ。

「だからって、人に見せるものじゃないでしょ」
「そうなんだけどさ。でも、俺達普通の恋人同士みたいに手を繋いで太陽の下を堂々と歩けないんだぜ?部屋の中でいちゃいちゃもいいけど、やっぱラブラブなところを誰かに見せ付けたいとか思うわけよ」

「未来は俺のもんだ!!ってね」と、さらっと言う大和を見ていると自惚れてるって言われても愛されているんだと思わずにはいられない。
とはいっても、打ち上げの時までこんなことをされてはたまらない。

「今は多めに見てあげるけど、打ち上げの時は離れててよね」
「は?なんで」
「なんでって、みんながいる前でこれはどうかと」

真顔で『なんで』と言われても、そんなことは言わなくてもわかってるでしょっ。

「じゃあ、打ち上げはとっとと切り上げて、スィートでスィーツな休日の続きをしようぜ」

「この前みたいにホテルのスィート貸しきってさ」と味をしめた大和は、またもやスィートルームを貸し切って一夜を過ごそうという気なのだろう。
未来だって思い出しても顔がニンマリしてしまうほど、優雅で甘い時間(とき)を過ごしたことは間違いないが、大事な打ち上げを抜け出してなんて、マネージャーとしては到底容認できませんからね。

「ダメぇ。打ち上げは最後まできっちり出ること。大和君は主役なんだから、米澤さんにもちゃあんと報告しなきゃ」
「あ?わかったよ。後で、未来が何か言われるのは嫌だから」

渋々という表情を浮かべつつも、未来のことを第一に考えていることに変わりはない。
…まっ、次回はまたスィートでスィーツな休日を。
密かに目論む大和だった。


おしまい。


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