うわぁ―――。
こんなに大変なの?
片っ端から買ったファッション誌のメイク術やら美肌特集なる記事を見て勉強しようとしたものの、とてもじゃないが自分にそれを施すのは無理だ。
今まで手を抜いていた代償のあまりの大きさに、何もする前から白旗を揚げたい気分になってくる。
『あたしが変わるまで、少しだけ待って』と勢いで言ったはいいが、こんなに大変だとわかっていたら、さっさと彼の胸に飛び込んでしまえば良かったと後悔しても、もう遅い。
しかし、このままの姿で彼と対等に付き合うのはどうしたって分が悪い。
―――だいたい、男の人なのにあたしより肌が綺麗ってどうなの?
やっぱり、若いから…。
どんなに足掻いても過去には戻れないし、日々老いていく現実をしっかり見据えなければ未来はない。
な〜んて、理屈コイている場合じゃないのよねぇ。
やらないより、やった方がいいに決まってるし、今ならまだ何とかなるかもしれないじゃない!!
そうよ!!
彼のために綺麗になろうって気持ちが、きっと内面からも美しくしてくれるに決まってる。
あぁ〜あたしって、なんて楽天家なんだろう。
こんなあたしを好きだと言ってくれた織田君に応えるためにも、頑張らなきゃっ。
+++
「あら、お弁当?」
「それ、自分で作ったの?」とお昼を一緒に食べている仲良しの彼女達が、あたしの前に広げられたお弁当を驚きの表情で見つめている。
「そう。コンビニのサンドイッチやおにぎりばかりじゃ、体にも良くないし」
『それに太るから』と心の中で呟くように言う。
特に現状のあたしを見てまだまだ心配することなんてないのにと思うかもしれないが、そういう積み重ねがある日どっと体に現れるかもしれないのだ。
今まで食べたいものを食べて、食事のことなど気にもしなかったけれど、朝夕は野菜を中心にしたものを自分で作るようになったら肌の調子もかなり良くなってきた気もするし、何より健康になったと感じるほど。
「道理で最近、綺麗になったと思ったのよ」
「えっ」
―――それ、ほんと?
「そうそう、あたしも思った。前がそうじゃなかったという意味ではないのよ?ただ、すごく変わったなって」
「そんなふうに思ってくれるの?」
だとしたら、頑張った甲斐があるってものだ。
女性に言われると実感がこもっているし、自信にも繋がってくる。
―――彼も少しは気付いてくれているのかな?
「年下彼氏の存在は偉大ね。あぁ〜あたしも、織田君みたいなあんな可愛い彼氏が欲しくなっちゃった」
「まだ、彼氏というか、あたしの方が彼女じゃないんだけど…」
既にみんなが知っているあたり、どうなのよ…。
でも、一歩前進。
織田君に似合う彼女になる日は、もうすぐそこに。
※ このお話はフィクションです。実在の人物・団体とは、一切関係ありません。作品内容への批判・苦情・意見等は、ご遠慮下さい。
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