Happy Happy Traveling
STORY2


朝早い便で、6人はグアムへ向かう。
3時間ほどの短いフライトではあったが、美花にとっては初めての海外旅行、朝からずっと興奮気味だった。

「美花、大丈夫?そんなにはしゃいで。旅行はこれからなのに」
「だって、初めてだから興奮しちゃって」

そんな2人のやり取りを見つめる4人だったが、なんとも微笑ましい光景である。
特に美花と雅巳が一緒にいるところを見るのが初めての絵里香には、特にそう思えた。
一週間前に女性陣だけで買い物に出掛け、その時初めて顔を合わせた3人だったが、絵里香から見た2人の印象はというと彩那はちょっとお姉さん的な存在で綺麗系の可愛い感じ、それに対して美花はというと純粋に可愛いっ!のひと言だった。
会社勤めもようやく2年目に入り、もうすぐ新人も配属されてくるが、あまり年下の子と交流がなかった絵里香には一気に2人の妹ができたようで旅行がとても楽しみだった。
彼氏である一郎からは雅巳のことも美花のこともよく聞かされていたが、実際2人を目にすると羨ましいというかなんというか。
自分も負けていられないなと思ってしまう。

「絵里香、どうかした?」

ボーっとしていた絵里香を覗き込むようにして見ている一郎。

「ううん、なんでもない。美花ちゃんと雅くんは、仲がいいなぁって思っただけ」
「何?絵里香、妬いてるの?」
「そういう意味じゃ…」

完全に否定できないところが、悔しいけれど仕方がない。
絵里香は、一郎よりも年上だということを少なからず気にしているからか、素直に彼に甘えられないところがあった。

「俺達だって、仲がいいだろう?」

シートベルトを締めているから、腰に腕を回してというわけにはいかなかったが、一郎は絵里香の指に自分の指を絡ませてそっとくちづける。

「ちょっ、やめてよ。こんなところで」

機内だったからあまり大声でいうことはできなかったが、絵里香は慌てて周りを見回して手を離そうとしたけれど、そうはさせまいという一郎の手を握る力が強まった。

「大丈夫だよ、みんな周りなんて目に入らないって」

家族連れや女性同士のグループは別として、行き先がリゾートだけにカップルが多いのは確か。
前の座席に座っているにも関わらず彩那と龍など、周りそっちのけでいちゃついているのがわかるくらいだった。
彩那と龍は絵里香と一郎とは反対で龍が彩那より2歳年下だが、彼は素直に彼女である彩那に甘えている。
彩那もそんな龍をしっかり受け止めて、お姉さんふうを装いながらもお互い上手く自分の気持ちを表に出しているのがわかる。

「そうだけど…」
「絵里香は、もうちょっと俺に甘えて欲しいな。これから行く場所は常夏のリゾートなんだから、大胆にならなきゃ」

―――大胆にって…。
まだ、大学生の彼に甘えてもいいのだろうか?
今回の旅行で、変わることができるのだろうか?
楽しむことはもちろんだが、絵里香にとってはこっちの方が重要なことだったかもしれない。



あっという間に飛行機は、グアム国際空港へ到着した。
GWと言えば、日本は一年で一番いい季節だが、ここグアムは年中無休の暑さである。

「あっつー」

他にないのかと思っても、彩那にはこの言葉しか浮かんでこない。

「ほんと暑いわね。美花ちゃん、気をつけないと白い肌が大変なことになっちゃうわ」

絵里香の心配するのも頷ける。
美花は雪のように真っ白な肌の持ち主だから、こんなに強い日差しに当たろうものなら大変なことになってしまうだろう。

「大丈夫。これでも結構肌は強い方だし、あたしね今回は絶対黒くなって帰るんだもん」
「えぇぇぇぇぇっ!」

美花の大胆発言に彩那や絵里香だけでなく、雅巳もそこに加わった。
白い肌が自慢の美花なのに真っ黒に日焼けした美花なんて…。

「ダメ!絶対ダメ!美花は焼かなくていいの!」

誰よりも大声を出した雅巳にみんなが驚いた。

「どうして?せっかく南の島に来たのに少しくらい黒くなって帰らなきゃ、来た意味がないじゃない」

美花にしてみれば、南の島=日焼けになってしまうのだろう。
それに白いから、余計に小麦色に焼けた人に憧れてしまうのだ。

「いいの、美花は焼かなくて。ほら、こんなに肌を出したらダメだろう?」

「皮膚がんにでもなったら、どうするんだ?」と雅巳は、急いで美花が手に持っていたカーディガンを肩に掛ける。
そんな雅巳に不満顔の美花だったが、周りのみんなもこればかりは雅巳の意見に賛成だった。
特に医者を目指している雅巳と一郎からしてみれば、無理な日焼けは避けるに越したことはない。
それに世の中、美白ブームでお金を山ほどかけている女性が多いというのにこんな美花の行動を見たら怒り心頭だろう。
まだ、ぶつぶつ言っている美花の背中を押すように迎えに来たバスに乗って市内観光へと向かった。


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