Happy Happy Traveling
STORY3


ホテルに行く前にまず、簡単な市内観光に。
素晴らしい眺めではあるが、遠い昔美しい娘が結婚を迫るスペイン人総督から逃れ恋人と永遠の愛を誓い、髪を結びあって身を投げたという悲しい恋の伝説が残る恋人岬。
その話をガイドさんに聞いた時、美花の目には薄っすらと涙が浮かんでいるのを雅巳は見逃さなかった。
自分達もここにいるみんなも、絶対にそんなことにならないようにと願い雅巳は美花の手をしっかりと握りしめた。
それから、スペイン広場にラッテストーン公園など一通りの観光スポットを回ってホテルに向かった。
今回の旅行で泊まるホテルは、コンドミニアム形式のホテル。
みんなで同じ部屋に泊まる方が楽しいからと旅行会社に勤める一郎の従姉が取って置きの部屋を探してくれた。
一郎に彼女ができたということもあって、特に気を利かせてくれたらしい。

「え?部屋が、こんなにたくさんあるの?」
「みんなで泊まれるように3つ、ベットルームがあるんだよ」

部屋数に驚く美花に一郎が説明する。
美花はこういうのがあること自体知らなかったから、驚きとみんなで一緒に泊まれるというのがなんだかとても楽しみだった。

「龍、あたし達はこっちのツインの部屋にする?」
「うん。やっぱりこっちのダブルは、一郎さんと絵里香さんでしょ。雅巳さんと美花ちゃんは、こっちの可愛い感じの部屋かな?」

ツインの部屋が2つにダブルの部屋が1つあって、それぞれ感じが違う。
彩那と龍がみんなに似合いそうな部屋をセレクトしていたが、美花にはこの状況がわかっていないようだ。

「あたし、雅くんと同じ部屋なの?」
「美花、何言ってるの当たり前でしょ。雅くん以外、誰と美花が一緒に寝るのよ」

彩那のひと言にみんなが美花を見て、ニヤニヤしている。

―――だってぇ…そういうことなの?
みんなで泊まるなら、部屋は女の子同士だと思ったんだもん。

「美花は、俺と一緒に寝るの嫌なの?」
「うぇっ、そっそんなこと…」

雅巳に詰め寄られて言葉を返せない美花だったが、よく考えたらめちゃめちゃ恥ずかしい内容で…。

「もうっ美花ちゃん、可愛いっ」

真っ赤な顔の美花があまりに可愛くて、絵里香が思わず抱きついた。
本人は褒められているのかどうか、微妙なところだったけれど…。
こんなに可愛い子が彼女なら、さぞかし雅巳は大変だろうなぁと思わずにはいられない。
絵里香は、そっと雅巳の方へ視線を向けると複雑な表情の彼の顔があった。



既に日も陰ってきていたからということで、今日のところはこれでおしまい。
明日は、アクアウォークに念願のイルカウォッチングを楽しむことにした。
今夜の夕食はみんなも朝早くて疲れているからとホテルで済ますことにして、一休みしてから行くことに決めた。

「美花、テンションちょっと下がっちゃったんじゃないのか?」

「大丈夫?」と雅巳に言われて、美花は少しボーっとしていたことに気付く。
朝から今まで初めてづくしだった美花は、ゆっくりしたらなんだか疲れが出て来たのか大人しくなってしまったようだ。

「大丈夫、ホテルに着いたら落ち着いたっていうか、ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったみたい」
「それならいいけど。ちょっとこっちに来てみて、もうすぐ陽が沈むよ」

窓からはオレンジ色の日差しが注いでいたが、海外で夕陽を見るのが初めての美花は急いで雅巳のところへ行く。

「うわっ、すっごい〜」

見たことがないくらい大きな夕日に再び、テンションが上がり始める美花。
そんな美花をそっと包み込むように抱きしめる雅巳。
夕日ももちろん綺麗だったけれど、オレンジ色の光に包まれた美花はもっともっと綺麗だった。

「美花、愛してる」
「雅くん…」

自然に出てくるこの言葉だったけれど、今までは恥ずかしくて口になど出したことはなかった。
それが、美花の前だと不思議と勝手に声になっている。
好きで好きでたまらない、何度言っても言い足りないのだ。
美花の腰に腕を回して自分に向かい合わせ、存在を確かめるように頬に触れる。
日焼けはしないようにと言ったけれど、やはり日差しは強かったのだろうか、なんとなく赤く火照っているように感じた。

「美花、焼けちゃったみたいだね」
「えっ、ほんと?どうしよう…」

あんなに焼きたいって言っていたのに雅巳に注意されて、すっかり言うことを聞いてしまう美花が可愛くて愛しくて。

「こうすれば、平気だよ」

手を添えていた頬にくちづけを注ぐ。
そんなことで火照りが治まるとは到底思えないが、美花のことだからこれも信じてしまうのではないだろうか?

「雅くん、くすぐったい」
「ダメだよ、動いたら」

最後に狙いを定めたように唇に触れると、もうやめることなどできなかった。
すっかり陽は沈んでしまったけれど、みんなが呼びに来るまでの間、雅巳は美花の唇から離れられなかった。


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