Happy Happy Traveling
STORY5


今日の夕食は、ディナーショーを見ながらのバイキング。
やっぱり、お決まりのファイアーダンスとか見ないとね。

「彩那、まだ龍くんと仲直りしてないの?」
「う…ん」
「もうっ、明日で旅行も終わりなんだよ?さっさと仲直りしちゃいなさいって」
「そう…なんだけど…なんだか今更、言いにくくて…」

まだギクシャクしている二人に業を煮やした美花だったが、彩那が引くに引けなくなってしまっていることが少し気がかりだった。

「彩那は龍くんより年上だから、自分から謝るの嫌なの?」
「そんなこと…」
「うそ。彩那は、自分が龍くんより年上だからって素直になれないんでしょ」

美花の言う通りだったから、彩那は言い返すことができなかった。
表面的には甘えているように見えても、やはりどこかお姉さん気取りしてしまうところがあって、変なところで意地を張ってしまう。

「だったら、彩那から謝ってあげたら?龍くんは、ちゃんと謝ってくれたんでしょ?」
「そうよ、彩那ちゃんから言ってあげた方がいいわ。彩那ちゃんの気持ちもすごくよくわかる、彼のためにしたことだもの。でも、それを押し付けたりしたらダメ。それに多分、彼は気付いていたと思うわ」
「え?」

龍は、ちゃんと気付いていたのではないかと絵里香は思う。
それは、彩那が着替えて部屋を出てきた時の龍を見ればわかること。
本当は気付いていたのだが、それを口に出せなかっただけなのだろう。

「あたしもそう思う。だって、龍くんずっと彩那のこと見つめてたもの。きっと恥ずかしかったのよ、彩那があんまり可愛いから」
「そうね。それ当たってる」

ゴチている二人だったが、彩那にはやっぱり素直に受け入れられない。
確かに龍は、あまりそういうことを口にしないタイブではあったけれど…。
でも、可愛いっていうのはどうなのか…。

「彩那、ほら龍くん待ってるよ」
「う…ん」

美花は、龍のところへ彩那を引っ張るように連れて行く。
龍もかなり反省している様子、それは彼の表情を見ればすぐにわかる。

「ほら、彩那」

美花が、彩那の背中をポンと押すとやっと彼の元へ行く。
笑顔で迎える龍に彩那も同じように笑顔を返す。

「龍、ごめんね」
「俺こそ、ごめん。服装だけじゃないけど、いつもと感じが違って本当はすっげぇ、可愛いって思ってたんだ。だけど、そういうの俺今まで口にしたことないし、彩那より年下だから、カッコつけちゃった」
「え?」

龍は、美花や絵里香が言っていたようにちゃんと気付いていた。
でも自分は年下だからと、変なところでカッコつけてしまった。
彩那が龍より年上だということを気にしているように、また龍も彩那より年下だということを気にしていたのだ。

「今度からは、ちゃんと思ってること言うよ。だから彩那も思ってること全部俺に言って、でないと俺鈍感だからわからないかもしれない」
「うん」

遠目に見ていた美花と絵里香だったが、どうやら無事二人は仲直りできたようだ。

「よかった、二人が仲直りできて」
「そうね。でも、私には彩那ちゃんの気持ち、ちょっとだけわかる気がするな」
「絵里香さん?」
「私は、一郎よりも3歳も年上じゃない?彩那ちゃんと龍くんよりも歳の差がある。気にしていないって言ったらやっぱり嘘になるかな。隣にいてもいいのか、美花ちゃんや彩那ちゃんのように同い年の可愛い彼女の方が、一郎には合ってるんじゃないかとかね」

美花は、絵里香と一郎が一緒にいるところを見るのは今回が初めてだったけれど、どことなく絵里香が一郎に気を使っているように思えたのは確かだった。
機内で美花は二人の隣に座っていたのだが、一郎が絵里香に『もっと甘えて欲しい』と言っているのを聞いていたから、尚更そう思う。
雅巳と同い年の美花には絵里香と彩那の気持ちはよくわからないが、どうしてもそう思ってしまうのは仕方がないのかもしれない。

「美花ちゃんは、雅くんと同い年だからそういうこともないのよね」
「そうでもないかも」
「え?」
「あたしが雅くんの彼女でいいのかなって、いつも思うし」
「ええー、美花ちゃんが?」

絵里香には、美花の発言がとても信じられなかった。
こんなに可愛くて素直な美花が、雅巳の彼女でいいのかなんて不安を抱いているなんて。

「あたし、雅くんとは家もすぐ近くで中学までずっと一緒だった幼馴染なの。でも、その頃はすっごいブスで。なのにかっこよくて人気のあった男の子に堂々と告っちゃって、見事に玉砕」

そう言って笑う美花だったが、今はとても可愛い美花がブスだったというのは本当なのだろうか?

「高校で彩那と出会って、変わったの。そしたら皮肉なことに合コンで散々なことを言ってあたしのことをフった相手に会っちゃって、でも彼はあたしのこと全然気付かなかった。それがすごく悔しくて…。そのすぐ後に雅くんに再会して、ブスな頃のあたしをずっと好きでいてくれたんだって知ったの」

あの日偶然に再会して雅巳の気持ちを知った美花だったが、多少外見が変わってもやっぱり雅巳のような素敵な人の彼女でいいのかという不安は常にあった。
どんなに好きだって言われても。

「そっか、みんなそれぞれ不安を抱えてるのね。でも意外、美花ちゃんがブスだったなんて」
「自分で言うのもなんですが、すっごいブス。なのに雅くんは、そんなあたしを好きでいてくれたの。でも外見は変わってるかもしてないけど、中身は変わってない。そんなあたしが雅くんの彼女でいいのかなって」

「いつも不安なの」と言う美花に絵里香は、恋をするということはそれと同じだけ不安も抱えることなんだなと思った。
自分だけじゃない、そう思ったらなんだか少しだけ気分が軽くなってきた。

「だから、雅くんの言葉を信じるしかないって思う。それと自分の気持ちをできるだけ、言葉にするの。そうすれば、少しは不安もなくなるかなって」
「そうね。私も、実践してみる。ところで美花ちゃんと雅くんって、喧嘩したりしないの?」
「喧嘩?しょっちゅうしてるけど」
「例えば?」
「う~ん。ミニスカートは絶対ダメとか言うから何で?って喧嘩になったり、えっと…待ち合わせ場所に早く着いたらダメとか言うから」

それを喧嘩と言うのだろうか…。
絵里香は思ったが、しかしあまりに微笑ましくて想像しただけで心の中が暖かくなってくる。

「絵里香さんを初めて見た時すっごく綺麗で、さすが一郎さんが選んだ彼女さんって思ったの。お似合いだなあって。歳の差を気にするなっていうのは無理かもしれないけど、どんどん甘えちゃえばいいの、一郎さん喜ぶなぁきっと」
「そうかな?」
「そうそう」

美花と一緒にいるとなぜだかその気になってくるから不思議だった。
ちょっとだけ一郎に甘えてみよう。
そう思う絵里香だった。


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