『もしもし、俺だけど』
俺って誰よ?って思ってみても、あの人しかいないんだけど…。
「こんな時間に何ですか?」
今は、夜中の1時を過ぎたところ。
『悪い。まぁ、そうぶっきらぼうに言うなよ』
この時間なら誰だって、普通こう言うでしょ。
「で、何なんですか?」
『明日、暇か?って言うか、もう今日だけどな』
はぁ?いきなり何?
「何か、あるんですか?」
『デートしよう』
デート?!
ちょっ、ちょっとデートって恋人同士が、一緒に出掛けるあれよね。
だけど、あたしと町田さんは恋人じゃないでしょ!
「何でですか?」
『何でってなぁ。俺はただ、お前と一緒に出掛けたかったんだけど』
どうしてこの人、こういうことさらっと言うのかしら?
「町田さん、あたしのこと好きなんですか?」
わざと聞いてみる。
『あれ?言ってなかったか?』
言ってなかったか?ってねぇ。
「聞いてませんけど」
『そうだったか?まぁ、そういうことだ』
そういうことって、どういうことよ。
勝手にひとりゴチてないでよ。
「ちゃんと言ってくれないとわかりません」
あたしもかなりイジワルだわ。
『好きだよ』
「え?」
『だから、好きだって言ってんの。ちゃんと聞いとけよ』
「本当に?」
『こんなこと嘘言って、どうすんだよ』
まぁそうですけど、あまりに唐突だから…。
『そういうお前は、どうなんだよ』
「どうって?」
『俺のこと、どう思ってるんだ?』
「あれ?言ってませんでした?」
あたしのイジワル心がうずいてきたわ。
うふふ…だって、いつも町田さんにはイジワルされてばかりだもの、これくらいいいわよね。
『聞いてねえよ』
「それは、聞いてない町田さんが悪いです」
『何だよ、それ』
「そういうことです」
電話の向こうで町田さんの『あのな〜』って、声が聞こえる。
『俺にだけ言わせておいて、ズルイだろ』
そう、あたしはズルイ女なの、だから絶対言ってあげないんだから。
だけど、心の中では言ってあげる。
「あたしも好きです」
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