SLS
No.2 ズルイ女


『もしもし、俺だけど』

俺って誰よ?って思ってみても、あの人しかいないんだけど…。

「こんな時間に何ですか?」

今は、夜中の1時を過ぎたところ。

『悪い。まぁ、そうぶっきらぼうに言うなよ』

この時間なら誰だって、普通こう言うでしょ。

「で、何なんですか?」
『明日、暇か?って言うか、もう今日だけどな』

はぁ?いきなり何?

「何か、あるんですか?」
『デートしよう』

デート?!
ちょっ、ちょっとデートって恋人同士が、一緒に出掛けるあれよね。
だけど、あたしと町田さんは恋人じゃないでしょ!

「何でですか?」
『何でってなぁ。俺はただ、お前と一緒に出掛けたかったんだけど』

どうしてこの人、こういうことさらっと言うのかしら?

「町田さん、あたしのこと好きなんですか?」

わざと聞いてみる。

『あれ?言ってなかったか?』

言ってなかったか?ってねぇ。

「聞いてませんけど」
『そうだったか?まぁ、そういうことだ』

そういうことって、どういうことよ。
勝手にひとりゴチてないでよ。

「ちゃんと言ってくれないとわかりません」

あたしもかなりイジワルだわ。

『好きだよ』
「え?」
『だから、好きだって言ってんの。ちゃんと聞いとけよ』
「本当に?」
『こんなこと嘘言って、どうすんだよ』

まぁそうですけど、あまりに唐突だから…。

『そういうお前は、どうなんだよ』
「どうって?」
『俺のこと、どう思ってるんだ?』
「あれ?言ってませんでした?」

あたしのイジワル心がうずいてきたわ。
うふふ…だって、いつも町田さんにはイジワルされてばかりだもの、これくらいいいわよね。

『聞いてねえよ』
「それは、聞いてない町田さんが悪いです」
『何だよ、それ』
「そういうことです」

電話の向こうで町田さんの『あのな〜』って、声が聞こえる。

『俺にだけ言わせておいて、ズルイだろ』

そう、あたしはズルイ女なの、だから絶対言ってあげないんだから。
だけど、心の中では言ってあげる。

「あたしも好きです」


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