「やぁっ…ん。もうっ、恭ちゃん!!どこ触ってるのっ」
「美春、また胸が大きくなったんじゃないか?」
「そんなこと、聞いてないでしょっ」
ひとつになった日から恭は美春と二人っきりになるとこうやって引っ付いているのだが、今は美春が夏休みの宿題をやっているところ。
宿題を見てあげるという口実で、恭は背後から美春のことを抱きしめていた。
そして、美春が怒っていたように胸を触っているわけで…。
「いや、大きくなった。これって、もしかして俺のおかげ?」
「恭ちゃんは、どうしてそういうえっちなこと言うの?」
「男はみんな、こんなもんだろ。っていうか、我慢してたしな」
これは、恭の本音。
好きな子に触れたいと思うのは男なら仕方がないわけで、それを恭はずっと我慢していたのだから。
「だからって…」
「そんなに胸が大きくなって、どうするんだ?」
恭のおかげかどうかは別として、美春の胸は前よりも大きくなっていたのは事実。
発育盛りなのだから、ただ美春の場合、背は伸びずに胸だけが大きくなっているようにも思えるのだが…。
「恭ちゃんは、胸が大きい子は嫌い?」
「胸が大きくても小さくても関係ない。俺は、美春のことが好きなんだから」
「恭ちゃん…」
恭の顔が段々と近づいてきて、お互いの唇が重なる。
もうキスは何度もしているけれど、やっぱり心臓がドキドキする。
唇を挟むようにキスされて、思わず美春の口から甘い声が洩れた。
「…っん…」
「ヤベっ。このままだと美春のことを押し倒しそうだから、ここでやめとくよ」
「押し倒すって…」
何事もなかったように恭は美春の宿題を見てくれる。
側に息を感じて美春は宿題どころではなかったが、それでも恭の自分を好きだと言ってくれたことが嬉しかった。
+++
夏休みに入って恭と美春は雄太とルミを誘い、4人でプールに行くことにした。
このために美春はルミと一緒に新しい水着を買った。
もちろん恭にお子様って言われないようにビキニを、でもこのことはまだ内緒だった。
先に着いた恭と美春が待ち合わせの最寄り駅で待っていると、すぐにルミがやって来た。
「ルミちゃん、おはよう」
「早乙女さん美春ちゃん、おはよう。あれ?雄太さんは、まだ?」
「いつも早いのに、まだ来てないんだよ」
恭と正反対に雄太はなぜか朝が強い。
学校にも早く来ているし、待ち合わせに遅刻などしたことはないのだが…。
と思っていると、汗を拭きながら走って来る雄太が見えた。
「ごめんごめん。遅くなって」
「珍しいな、雄太が一番最後なんて」
「実はさ―――」
雄太が、恭に耳打ちするように言う。
『髪型がうまく決まらなくて』
「はぁ?そんなことかよ」
「そんなことってなぁ、こういうのは重要なんだよ。彼女の前では、カッコよく決めなきゃいけないし」
「なぁ、雄太。俺達、これからどこに行くんだ?」
「プールだろ?あっ…」
水に入れば、髪形も何もあったものじゃない。
それにこんなに走ってくれば汗もかくし、いくら家でビシッと決めてきても崩れてしまうのに…。
苦笑する雄太。
まぁ、こういうところが彼らしいんだけど。
向かった先は、遊園地の中に室内と屋内の両方にプールがある大型施設。
こういうところは野郎ばかりで来てもナンパをしに来たと思われて敬遠されるだけなので、恭も雄太も初めてだった。
恭と美春は毎年プールに行ってはいたが、決まって近所にある公共の施設。
カップルというより、子供達か家族連れしかいなかったから、なんだか落ち着かない。
先に水着に着替え終わった恭と雄太は、近くにあったベンチで二人を待つことにする。
「美春ちゃん、胸デカクなったか?」
「ちょっと待て、なんでお前がそれを」
「やっぱり」
腕を組んで、ひとりゴチている雄太に呆れ顔の恭。
―――だいたい、人の彼女の胸が大きくなったとか、なんで雄太が知ってるんだよ。
「やっぱりって、人の彼女の胸なんて見てんじゃねぇよ」
「そういうわけじゃないんだけどさ、気にしてんだよ」
「誰が」
「ルミちゃんが」
「ルミちゃんが?」
雄太とルミがえっちをした時も頑なに両手で胸を隠すものだから、無理にどけようとすると半分泣きそうになってしまって…。
嫌なのか?と聞くとどうもそうではなくて、消え入るような声で『小さいから』と。
そりゃあ、男は大きな胸の子には自然に目が行くけれど、それとこれとは話が別で、好きな彼女の胸の大きさなど関係ないのだ。
しかし、女の子はそうもいかないのだろう。
雄太はそんなことはないのだとルミに言い聞かせて、なんとか最後までスルことができたというわけだった。
「俺は関係ないって言ったんだけど、まだどこかで気にしてるんじゃないかな」
「そっか。いや、美春もそんなこと言っててさ」
「美春ちゃんが?」
「あぁ。美春に大きくなったんじゃないか?って、聞いたんだよ。そうしたら、恭ちゃんは胸の大きい子は嫌い?って。別に胸で好きになったわけじゃないからな、そう言ったんだけどさ」
「女の子って、難しいんだな」
これには、恭も同感する。
大きくても小さくても、気にしてしまう。
女心を理解するのは難しい。
「そういう時こそ、彼氏がしっかりするしかないだろ」
「だな」
そんな男同士の会話をしているところへ、彼女達が着替えて戻って来た。
「恭ちゃん、お待たせー」
明るい声で恭の目の前に立つ美春に、目が点になった。
「美春…」
―――オイオイ、聞いてないぞ?ビキニなんてよぉ。
淡いピンク色で、胸元とショーツにもたくさんフリルが付いているもの。
弾けんばかりの膨らみに目が釘付けになってしまう…。
白い肌の美春にはピッタリだったが、ちょっと露出が多過ぎだろう。
「似合わない?」
「そっ、そんなことないけど…」
「けど?」
段々と不安げな表情に変わる美春の腕を引っ張って、恭は自分の方へ密着させる。
「ちょっと、恭ちゃん」
「ダメだ」
「え?」
「こんな可愛い美春を世間の目にさらすわけにはいかない」
「さらすって…」
なんて、美春の言葉が届くはずもなく…。
その日一日、ベッタリと引っ付いて過ごす羽目になった。
それを見ていた雄太とルミは…。
「見せつけられている俺達は、どうなるんだよ」
「ほんと」
「まっ、いいか。だったら、俺達もイチャイチャしよっか」
「え?雄太さん」
黒地に白の水玉模様のビキニは、スレンダーなルミに大人の魅力を感じさせる。
いち早く輩どもの視線を感じた雄太は、恭同様にルミの腰に腕を回す。
可愛い彼女をもつナイトは、大変だぁ。
と声にならない声を発した雄太と恭だった。
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