「…は…っぁ…っん…っ…」
海の貪るような激しいくちづけに、帆波は背後に壁がなかったら立っていられないくらいだった。
頭をしっかりと固定されて、舌を絡め合う。
湊にそっくりだけど、湊じゃない。
たった今、会ったばかりの男性とキスしているなんて…それにこんなの…したことない。
「…やぁ…っ…ん…ちょっ…どこ…触っ…て…る…のぉ…」
いつの間にか海の手が帆波のスカートを捲って、ショーツの間から指を入れてくる。
キスだけで感じてしまっていた帆波のそこは、既に濡れてしまっていたわけで…。
「そんなに俺のキスがよかったんだ。ここ、びしょびしょじゃん」
「ちょ…や…ぁっ…っん…」
ただでさえ立っているのがやっとだというのに、海は容赦なく帆波の中心を攻め立てる。
指を出し入れされて、それだけでイってしまいそう…。
「…あっ…ダ…メぇ…っ…そ…こ…」
「その顔は、イくって顔だな」
「…っ…っん…やぁ…っ…」
―――やだぁ、こんなの…。
平然と自分を見下ろしてくる海が憎らしい。
帆波はなんとか我慢していたが、もう限界は近かった。
「我慢することないぞ?イっていいんだからな」
「…でも…っぁ…ん…っ…」
「いい声出すなぁ、俺までヤバイ」
指を増やされて中心を掻き回された途端、そのまま帆波はズルズルと床に崩れ落ちた。
―――立ったまま、イかされるとは…。
悔しいけれど、こればかりはどうしようもない。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃ…ないわよ。こんなところで」
覗き込むようにして見ている海を、帆波はギロっと睨みつける。
「あはは、そうだな。ごめんごめん」
髪を撫でる、海の大きな手が心地いい。
―――でも、え…入れてくれないの?
帆波は指でイかされたものの、彼はそういう素振りを全く見せる気配がない。
ちょうど視界にあった彼の下半身は、大きくなっていてズボンの上からもそれは確認することができた。
なのに…。
「海さん」
「ん?どうした?」
全然平気って感じの海、いや平気じゃないはずなのに…なぜ?
「ねぇ…入れてくれないの?」
「入れて欲しい?」
―――『入れて欲しい?』って…ここまでやっておきながら、それはないでしょう…。
こっちだって、初めての人にこんなこと…恥ずかしいの覚悟で言ってるのに…。
「なによ…その言い方」
「そう、膨れるなよ。俺だって…わかるだろう?ここ、もうパンパンなの」
海は、床に腰を下ろすと帆波を自分の胸に抱き寄せる。
さっきの荒々しさはどこにいったのか?今の彼は、とても優しかった。
「じゃあ、何で?」
「うん?何でかな。あんたの…帆波の心が、欲しかったからかな」
「心?」
「そう」と頷く海。
兄の湊から帆波のことは聞いていたが、というよりも聞かなくても湊の方から話してくるのだが。
どんな子なのか、実際に会ってみたかった。
『ちょっと強がってるけど、すっごく可愛い子なんだ』
これを聞いただけでは、その辺にいる子とそう変わらないだろう。
ただ、海は兄がどの子でも付き合えるわけじゃないことを知っている。
双子だからその辺のところは言わなくてもわかっているのだが、だからこそ湊が惚れ込む帆波に会いたかったのだ。
「帆波の心が欲しい。ちゃんと俺という男を見てほしいんだ。兄貴じゃない俺を」
「海さん」
「だから、今日は我慢する。すっげぇ、きっついけどな」
海らしく『あはは』と笑っていたが、その表情は少し寂しげだ。
「でも…あたし…」
―――日向さんと何度もそういう関係になっている…。
自分の気持ちはまだよくわからないけれど、昨日の夜キスしていたのを見て嫉妬した。
それは、実際海さんだったけれど…。
「わかってる。帆波が湊のこと、好きなことも」
「好きかどうかは…」
「好きだろ?昨日、湊と俺を勘違いして怒って家に入れてやらなかった。違うか?」
「それは…」
「現に夕飯も用意してないくらいだし」
言い当てられて、帆波は言葉を返すことができなかった。
―――確かにそうだけど…。
「でもその感じだと、まだ自分の気持ちがはっきりしてないってところだな」
「何でもわかるのね」
「そんなふうに見えないって思ってんだろうけど、俺って案外人の心の中は読めるんだよな」
「ふうん」
「なんだよ」
「痛っ」
額をデコピンされて、帆波は思わず声を上げた。
それでも怒るというよりは、むしろ楽しいといったところ。
自然に笑みも浮かんでくる。
「それにさ、俺の方が湊よりいい男だろ?」
「え?」
―――いい男って…それは別として、同じじゃない…。
「今、同じだとか思っただろ」
「違うの?」
「違うだろ」
帆波には、外見での違いはわからない。
ただ、内面がかなり違うということ。
双子だけど、正反対。
―――きっと…この人に先に出会っていたら、好きになった。
でも、今は…。
「あいつ、そろそろ帰ってくるな。俺、帰るわ」
「え?ご飯、食べていかないの?」
「どうせ、ないんだろ?」
「3人分くらいなんとかなるわよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」と、海は立ち上がるとソファーに戻って行った。
そのすぐ後に帆波の部屋を訪ねて来た湊。
海がいたことに驚いた様子だったが、今朝出掛けに会ったことを話すと何も疑うことはなかった。
そして、3人で囲んだ夕食は、なんだか不思議な光景ではあったけど、そっくりじゃなくてクリソツ?!な二人が並んで同じような仕草をするのがすごくおかしかった。
※ このお話はフィクションです。実在の人物・団体とは、一切関係ありません。作品内容への批判・苦情・意見等は、ご遠慮下さい。
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