「実はもう一つ、莉麻に言ってなかったことがあったんだ」
莉麻はちゃんと話してくれたのだから、命だってきちんとあのことは言っておかなければならないだろう。
「彼が日本に帰って来ていることは、知ってた。莉麻が携わっている映画の撮影カメラマンをしていることも」
「え？」
「莉麻、携帯を忘れて行ったことがあっただろ？あの日、電話が掛かって来て…つい、出てしまったんだ」
―――あ…あの日、命は電気も点けずに熱でもあるのかと思った日…。
着信履歴なんて見てなかったから全然、気付かなかった。
でも、命はそれを知ってて…。
きっと、何で言い出さないんだろうって命は思ってたはず…なのに…。
「ごめんな、勝手に電話に出たりして」
「ううん。私こそ、命にもっと早く言うべきだった。嫌な思いさせて、ごめんね」
「それじゃあ、お互い様ってことで、この話は終わりにしよう」
「うん、えっと…」
―――何を話したのかしら？
まさか…喧嘩、なんてことはないと思うんだけど…。
「その顔は、彼と何を話したのか気になってる顔だな？」
「バレタ？」
ペロッと舌を出した莉麻が可愛いなぁと思いつつも、命は鼻の頭をチョンっとつつく。
元彼と今の彼氏が電話で話すなんてことはそうそうないわけで、気にならない方がおかしいかもしれない。
「別にたいした話はしてないよ。彼はしきりに莉麻とは何でもないからって、言ってたし」
「そう」
「ホッとした？もしかして、喧嘩になったとか思ってただろ」
「え…そっ、そんなこと…」
「莉麻は、すぐ顔に出るからな」
―――だって…もしもって、こともあるじゃない。
そんな冷静に話ができるとは、限らないし…。
「言ってたよ彼、莉麻を幸せにしてくださいって」
「総司が？」
―――総司がそんなことを…。
で、命は？命はなんて、答えたの？
すぐ顔に出る莉麻の表情で、何が言いたいのか命はすぐにわかったようだ。
「そのつもりだって、答えたよ。だって、本当のことだから」
「命…」
「この体勢でそんな顔されると、さすがに俺も我慢できないんだよな。今すぐ、押し倒してもいい？」
「え？そんなことっ、真顔で聞かないでよっ！ダメに決まってるでしょっ」
「なんだよ、いいじゃん。減るもんじゃないし」
「減るってっぇ…」
なんて、莉麻の声など今の命に届くはずがなく…。
全部吐き出して、二人にとって今が、本当の意味でのスタートラインなのかもしれない。
「ちょっ、命ったらっ。下ろしてったらっ」
「ベットの上でね」
「やっ、だ・か・ら・そうじゃなくってっ！」
いくら足をバタつかせて暴れても、命に抱きかかえられていてはビクともしない。
こんな時間から…。
まだ外は明るいわけで、こんな時間からベットなど、どうなのか？
だいたい、同窓会の幹事なんでしょ？案内作りしなければならないはずなのに…。
「ほらっ、同窓会の案内作るんじゃなかったの？」
「あれ？もう、ほとんどできてるし。あとはプリントアウトするだけだから、すぐ終わるよ」
「あと、なんて言ってるうちに忘れちゃうかもしれないしっ。早くした方がっ」
遠まわしに言っているつもりなのだが、ことごとく命に言い返されてしまい、あっという間にベットの上に寝かされてしまう。
「莉麻、ブツブツ言ってないで、もう観念しなさい」
「だってぇ…こんな時間から」
「俺も無理にとは言わないけど、今すっごく莉麻を抱きたいって思う。こんな可愛い莉麻を前にして、気持ちが高ぶってる時に同窓会の案内なんて作ってられないだろ」
命の顔がすぐ目の前にあって、視線が絡み合う。
莉麻は真剣なその眼差しにようやっと観念したのか、おとなしく瞼を閉じた。
それが合図となって再びお互いの唇が重なり、一つになる。
「…っん…っ…ぁっ…命っ…」
舌を絡め合い、息も吸えないほどの情熱的なくちづけに莉麻の体はそれだけでカーッと熱くなって溶けてしまいそう。
「莉麻、可愛いよ。もっと、声を聞かせて」
「…あっ…んっ…やぁ…っ…」
あっという間に服を脱がされて、ブラのホックも外されてしまう。
やんわりと膨らみを揉まれ、感じて硬くなった蕾を指で弾かれる。
「…あぁぁぁ…っ…ん…ぁっ…っ…」
「いいよ、莉麻。もっと感じて」
下半身にかろうじて身に着けていた小さな布もあっという間に取り払われて、莉麻は生まれたままの姿になる。
若いということもあるが、肌にハリがあって本当に美しい。
ただでさえ今日の彼女は可愛らしくて、命自身も服の上からでもはっきりわかるほど、主張していた。
「ダメだ、俺も余裕ない。莉麻、入れてもいい？」
「うん…きて」
愛撫もそこそこでまだ早いかとも思ったが、彼女の秘部に触れるとそこはもう命を受け入れる準備は整っているようだった。
命は自分の着ていたものを全て取り払うと、ゴムを着けようとしたところを莉麻に止められた。
「そのまま…お願い」
「え？だって…そのまま入れたら、子供が」
「いいの。命の子供なら」
―――命の子供が欲しい。
「莉麻…わかった。もし、できたらすぐに言うんだぞ」
黙って頷いた莉麻の中に命自身をゆっくりと沈めていく。
ほんのコンマ数ミリの境がなくなっただけで、この気持ち良さはなんなのか？
本当に一つになれたという喜びは、ここにあるのかもしれない。
「…あぁぁぁぁっ…っ…っん…っ…」
「莉麻っ、ごめ…止められない…」
あまりの心地良さに命は動きを止められなくて、このままでは莉麻を壊してしまいそう。
「…あ…き…らっ…」
「莉麻、もっと俺の名前を呼んで」
命は、絡めていた莉麻の手に力を込める。
「あ…き…ら…」
今、莉麻が呼んでいる名は紛れもなく命だということ。
総司ではないことをもう一度確かめたかった。
「莉麻っ」
「命っ…あぁぁぁっ…んっ…イっ…ちゃ…う…っ…」
「俺も…」
命が白いものを莉麻の中に吐き出し、二人がイったのはほぼ同時だった。
いつもより激しかったせいか、まだ息が荒い。
「莉麻、ごめん。大丈夫か？」
「うん、大丈夫」
命は、額に汗で張り付いた莉麻の髪を指で払う。
そして…。
「莉麻、結婚しよう」
「命？」
「嫌？俺と結婚するの」
「そうじゃなくって、え？」
前提に一緒に住んでいたのだから、いずれはそうなる覚悟はできていたが…。
「デキちゃった結婚なんて、言われるの嫌だろう？」
「まだ、わからないわよ」
「いや、絶対出来た」
「すごい自信」
クスクスと笑っている莉麻に、もう一度命は言う。
「結婚しよう、莉麻」
「はい。不束者ですけど、よろしくお願いします」
「ヤッター」と命は叫ぶと、莉麻をぎゅっと抱きしめる。
もう離さないという意味を込めて。
※ このお話はフィクションです。実在の人物・団体とは、一切関係ありません。作品内容への批判・苦情・意見等は、ご遠慮下さい。
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