Mini Mini STORY
ドラマみたいな恋がしたい
2


あの日、プイッと部屋を出て行ってしまった桜。
それからというもの、信哉との仲は妙にギクシャクして…。
…俺、桜を怒らせるようなこと、言ったのか?
真剣に考えても、思い当たるふしはない。
いつもの会話だったし、いつもなら彼女もあんな態度をとったりしないのに…。

そんなことを思っていると「どうした信哉、マジな顔して。とうとう近藤さんにフラれて、パソコンに恋したのか?」なんて、冗談交じりで背中をポンッと叩いたのは同期の勝彦(かつひこ)。
外見もちょっとチャラ男に見えるし、お調子者だけど、意外にも人の心の中を鋭く見抜く才能の持ち主だ。
…こいつなら、桜のあの態度の理由がわかるかも。

「あのさ。この前、桜と家でドラマを見てたんだよ。ほら、流行の韓国ドラマってやつ?あいつ、ああいうの大好きでさ。だけど、俺にはさっぱり理解できないんだ。あんな甘ったるいの」

甘い声なんか出すから『襲うぞ』って言ったら、『信哉って、ちっともロマンチックじゃないのね』とだけ言い残して、帰っちゃったんだとあの時の状況を勝彦に説明する。
その話を聞ききながら腕を組んで考え込んでいた勝彦は、その後「なるほど」と一人ゴチながら大きく頷いた。

「そりゃぁ。お前が、乙女のキモチってやつをわかってないからだな」
「乙女のキモチ?そんなの、お前にわかるのかよ」

「当たり前だ。俺は少なくとも、自分の彼女にそんな言葉を言わせた覚えはないぞ」と反論する勝彦。
言われてみれば、勝彦には付き合って5年になる彼女がいるが、未だにらぶらぶで毎月付き合い始めた日には花束を贈っているらしい。
なんでも韓国では記念日を大事にするとかで、付き合い始めてから100日目に花束を贈る習慣や毎月14日は恋人達のイベントがあって、あいつも真似たと言っていたのを思い出す。
信哉にはこっ恥ずかしくて、絶対にできそうにないことだが。

「あのなぁ。人にもよるかもしれないけど。近藤さんがそう言ったってことは、お前にもっと優しくして欲しいんだよ。今更とか思ってないで、ドラマを見習ってみろよ。これで別れるようなことになるより、いいんだから」
「ドラマねぇ」

本気で惚れた彼女と、こんなことで別れるようなことにだけはなりたくない。
ここは勝彦の言うことを素直に聞いて、カッコいい俳優になってみよう。
上手く演じられるか、どうかわからなけど。
帰ったら早速、『ドラマを見てみるか』そんなふうに思う信哉だった。


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