Mini Mini STORY
ドラマみたいな恋がしたい
4
バンっ―――
バフっバフ―――
ボカっ、バンっ、バンっ―――
「痛ってぇ…」
―――へ?
今、『痛ってぇ』って…。
それも、聞き覚えのあるっていうか、たった今考えていた人の声…。
「お前なぁ。ドアを開けるなり、思いっきりクッションでボカスカ人の頭を叩くやつがあるか」
乱れた髪を左手で直しながら、おでこを何度も擦っている信哉。
「信哉…だってぇ、こんな時間に来るとは思わなかったんだもん。それにドアスコープを覗いても、誰もいなかったし」
抜き足差し足で玄関まで行った桜はそっとドアスコープを覗いてみたが、人影は見当たらない。
怖かったけど覚悟を決め、勢いよくドアを開けた瞬間に黒い人影が動いたのに驚いて、思いっきり持っていたクッションでボカっと叩いたのだ。
それが、まさか信哉だったとは…。
――― 来るなら来るって、電話くらいしてくれてもいいのに。
「あっ、あぁ…ごめん」
…確かに考えてみれば、こんな時間に何の連絡もせず来れば女の子の一人暮らし、警戒もするだろう。
それに訳あって、壁に隠れてたし…。
「ねぇ。こんなところじゃなんだから、中に入って」
「あぁ」
尋ねて来たわりに中に入ってと言っても何を躊躇っているのか、信哉の足は止まったまま。
「信哉、どうしたの?」
返って来た返事はやっぱり、「あぁ」とだけ。
もう一度彼の名を呼ぶと、今まで見たことがないくらい恥ずかしそうに「桜、これ」と信哉が、後ろ手に持っていた物を桜の前に差し出した。
「え?」
それは、サーモンピンクの薔薇の花束。
もう、何本あるのっていうくらい大きな…。
―――信哉が、薔薇の花束?
今日は誕生日でもないし、付き合い始めた日とも違う。
だったら、何で?!
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