彼の住むマンションは想像通り豪華なところで、東京のシンボル東京タワーの夜景がすぐ間近に見える。
「うわぁっ、すっごい夜景。青ったら、こんなにすごい景色を毎晩独り占めしてるわけ?」
一面ガラス張りのリビングから見える見事な夜景に、葉月はうっとりしてしまう。
しかし、よく考えてみれば、彼に付いてここまで来てしまったものの、地位も名誉もあって誰もが羨むマンションに住んでいるのだから、女性関係もそれなりに派手だったに違いない。
「これがすごいと思ったのは、初めだけだったな。案外、見慣れると普通だぞ?それに言っとくけど、俺は誰でも家には入れない主義なんでね」
「そうなの?てっきり、素敵な女性を連れ込んでるんだと思った」
「素敵な女性か…今夜は、君の言う通りかもしれないな」
ふっと笑みを浮かべると、青は葉月の背後から腰に腕を回して抱きしめる。
「…っぁ…んっ…青…ったら…お世辞が、上手いんだからっ…っ…」
「お世辞?俺は本当のことを言っただけなのに」
耳たぶを甘噛みし、ふーっと息を掛けるとそこが弱いのか葉月は腰をくねらせて逃げようとするが、青はそのままうなじに唇を這わせる。
口では余裕たっぷりに言っているが、実際こんなにも余裕がないのは初めてかもしれない。
人一倍女性に対して警戒心が強い青は、誰にでも声を掛けたりしないし、ましてや自分の家になど簡単に入れたりしない。
それが、葉月だけは別だった。
「…やぁ…っん…」
「可愛いよ、葉月」
自分でも不思議なくらい、恥ずかしげもなくこんな言葉が口をついて出てくる。
すっかり見慣れたはずの夜景も葉月を前にしたら、そんな雰囲気にさせたのかもしれない。
「…ぁんっ、もうっ青ったらっ。恥ずかしいこと、言わないでっ」
「言ってるだろ?本当のことだって」
彼女の肩を抱き寄せ、唇を塞ぐ。
何度も何度も角度を変え、舌を絡め合い、息ができないほどに…。
「…ぁっ…んっ…」
時折漏れる葉月の甘い声に感じつつも、青はそれを止めることができなかった。
一度彼女の唇を味わってしまったら止められない。
まるで、麻薬のよう…それ程に心地いい。
唇を塞いだまま、ブラウスのボタンを外し、スルリと手を差し入れる。
ブラ越しにもそのふくよかな膨らみを感じ取ることができるくらい、スレンダーなボディの一体どこに…。
「…やっ…ちょっ…待って…っ…」
葉月は力いっぱい青の胸に手を突くと、やっとの思いで体を離す。
これは決して、彼とそうなるのが嫌だからと言うのではなくて…。
「ごめん、嫌だった?」
「ちっ、違うの。そうじゃなくて…」
俯いたまま、ブルブルと首を左右に振る葉月。
「葉月?」
「…や…なの…ちゃんと…」
最後の方は消え入るような声だったが、青ももう少し気配りが必要か…。
そこがまぁ、慣れていないところなのかもしれない。
「ごめん、気付かなくて。なんか、俺も余裕なくて…葉月を目の前にしたら、止められなくなった」
「ううん」
「シャワー先に使う?それとも一緒に…あっ、いや」
言ってしまってから、絶対怒られると思った青。
でも、葉月の反応は意外にも…。
「うん」
「えっ…いっ、いいのか?」
まさか、『うん』なんて返事が返ってくるとは思わない青は、逆に狼狽えたりして…。
「ほっ、ほらっ。青、明日はニューヨークだしっ…って、あたし…何言って…」
大胆発言したわりに、青より狼狽えている葉月。
よく見れば、顔も真っ赤だし…。
…もしかして、気を使ってくれた?というより、言ってみるものだなと思う。
彼女の気が変わらないうちに、早いとこバスルームへ行かないと。
「…わっ」という葉月の声が聞こえたかと思ったら、青は彼女を軽々と抱き上げてバスルームへと直行する。
このマンションの目玉は夜景もそうだが、ジャグジーの付いたガラス張りのバスルーム。
今夜はそんな至福のバスタイムを味わっている時間はないが、それを見た葉月が羨ましいと思うのは当然で。
「すごい。このバスルーム、ガラス張りなの?それにジャグジーまで」
「一応、このスイッチを押すと半透明にるんだけど、今日は必要ないな」
スイッチ一つでガラスが半透明になり、中を見られないようにすることは可能だが、青はいつも一人で入る時は使わないし、今夜はその必要もない。
お互い恥ずかしい気持ちがないわけではないが、子供のようにはしゃぎながら服を脱がせ合い、生まれたままの姿になる。
「あんまり見ないで」
「何だよ、今更。ここまできて、見ない方が無理ってもんだけど」
真っ白な肌に出るところはちゃんと出ていて、締まるところはしまってる。
理想のボディーとは、このことだろう。
自分が女性だったら、見せて歩きたいくらいだというのに何で隠すんだ?とは、青の意見。
恐らく、社長という立場から女性らしさを隠すことで、変な色目を使われたくなかったのだろう。
「…やぁっ…ちょっ…くすぐっ…たい…て…ばぁ…」
「ほら、じっとして。でないと洗えないだろ?」
「…いいっ…自分で…やる…か…ら…」
「俺の楽しみを取るつもりか?」
「…楽しみっ…てぇ…」
妙に嬉しそうな青、彼に出逢って一番の笑顔がこれってどうなの…。
なんて、葉月の心の声など今の彼に届くはずもなく…。
シャワーを浴びた二人はバスタオルで体を包み、じゃれ合いながらそのままベットへと雪崩れ込む。
「葉月」
青は葉月の上に覆い被さるようにして、キスできるくらいの至近距離で囁くように言う。
さっきまでのはしゃいでいた時と違い、その声にドキっとする。
「青、あたし…」
「俺、葉月にめちゃめちゃ溺れてる。ヤバイくらい」
まだ、逢ったばかりで、お互いのことはほとんど知らない。
それでも、好きという気持ちだけは、確実に大きくなっていく。
「あたしも、青に溺れてる」
こんなふうに突然始まる恋もある。
「…あっ…んぁっ…」
「葉月、好きだ」
優しくしようと思っても、既に感じて大きく固くそそり立つ自身を青は抑えることができなかった。
もちろん葉月だって、それは同じ。
彼の存在を感じ、受け入れる体制は十分に整って…。
「早く、葉月の中に入りたい。一つになりたい」
「あたしも、青と一つ…っあぁ…っん…っ…」
彼女の言葉を聞いたのと同時に、青は一気に貫いた。
あまりの気持ちよさに入っただけで、すぐにでもイってしまいそう…。
「…あぁぁぁぁ…っ…せ…い…っ…だ…めぇ…そ…イ…ちゃ…う…っ…ぁ…」
「ごめっ…止められない…」
腰の動きが早くなり、絡めていた指に力が入る。
「…ぁっ…青…好…き…っぁ…んっ…」
「…葉月っ…」
葉月イったのが、わずかに早かっただろうか?
その後を追うようにして、青は彼女の中で自身を解き放った。
※ このお話はフィクションです。実在の人物・団体とは、一切関係ありません。作品内容への批判・苦情・意見等は、ご遠慮下さい。
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