午後になって集合場所の駐車場に着くと笠原の友達はもう先に来ていたようで、彼と藍が車から降りると二人に気付いた一人の男性が手を振っているのが見えた。
「こちらは同じ会社に勤めている神谷さん」
「神谷 藍です。初めまして」
藍が挨拶をしてもみんなひと言も声を発することなく、押し黙ったままで藍を見つめている。
「おい、お前らなんだよ。神谷さんが、挨拶してるっていうのに」
「あっごめん。だって、お前が女性を連れて来るのも初めてだけど、まさかこんな可愛い子だとは思わなかったかさら」
笠原の言葉でやっと口を開いたのは背は笠原と同じ位だけど、黒く日に焼けてがっしりとしたスポーツマンタイプの男性だった。
周りの人達もこの男性の意見に同意しているようで、みんなそれぞれに頷いている。
「神谷さん、こいつは大学の時の同級生で佐野 仁(さの まさし)」
笠原がその男性を藍に紹介してくれた。
「こんにちは。えっとぉ、藍ちゃんって呼んでいいかな?俺のことは、仁(まさし)って呼んでくれていいからさ」
仁は甘いマスクで人懐っこそうな笑顔を藍に向けた。
笠原とは同じ大学だったけれど、大学院には進まず教員試験を受けて、今は公立中学校の社会科の教師をしているそうだ。
そして隣にはこれまた美人な女性が、彼女だろうか?
「そんで、こっちが俺の彼女の百合。俺と笠原と同じ大学で1年後輩だったんだ」
「藍ちゃん初めまして、川上 百合です。百合って、呼んでね」
「はい。仁さん百合さんこちらこそ初めまして、今日はよろしくお願いします」
百合はそれほど長身ではなかったけれど、髪が長く大人の女性という感じで本当に綺麗な人だった。
彼女は、損害保険会社に勤めているそうだ。
「俺は元木 一哉(もとき かずや)、一哉って呼んで。こっちは彼女の宮沢 真由子(みやざわ まゆこ)、同じ会社に勤めているんだ」
仁と百合の隣に立っていた一哉は、カッコいいというよりは可愛いと言ったら男性には失礼だけどそんな感じのする人で、真由子も同じように可愛らしい人だった。
一哉は笠原と仁と同じ大学だったが、学部は違ったらしい、外資系のコンピューターメーカーに勤めていて真由子とはそこで知り合ったそうだ。
笠原が毎回違う女の子を連れて来るやつもいると言っていたのは実は一哉のことだったらしいが、最近はずっと真由子一筋で落ち着いているとのこと。
後で聞いたら、真由子は一哉より1歳年上だということだが、まさにお似合いのカップルだなあと藍は思った。
「えっと一哉さんと真由子さん、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね。ねえ、藍ちゃんもしかして前にファッション誌のモデルやってた?」
「はい、高校と大学の時に少しだけですけど」
「やっぱり?私、藍ちゃんのファンでずっと雑誌を買ってたのよ。やぁ、こんなところで会えるなんて」
真由子は、いきなり藍に抱きついた。
「ちょっ、真由子さん?」
それを見ていた百合も、思い出したように声を上げた。
「あっ、私も思い出した。神谷 藍ちゃんって名前どこかで聞いたと思ってたのよね。いゃ〜ん藍ちゃんあの頃も可愛かったけど、今はすっごく大人っぽくなっちゃって」
藍に抱きついている真由子に加わって、百合までも藍を取り囲むように抱きついた。
「いゃ、あの…真由子さんに百合さん?」
困り果てている藍を他所に仁と一哉は「当面のライバルはあの二人だな、笠原も苦労するよ」口々にそう言う。
笠原は、ただ目の前の光景に苦笑するしかなかった。
※ このお話はフィクションです。実在の人物・団体とは、一切関係ありません。作品内容への批判・苦情・意見等は、ご遠慮下さい。
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