ブラインド越しの太陽の光で目を覚ましたあたしは、すぐ目の前に遼哉の顔があって昨日の出来事が嘘じゃなかったことに体の奥底が熱くなるのを覚えた。
なかなか想いが通じなくて―――それは、突然の形でやって来た。
遼哉が警察に連れて行かれたと矢野くんに聞かされた時には、本当に心臓が止まるかと思った。
何事もなく済んで本当によかったけれど、あたしの想いは一気に溢れ出していた。
結果、こうやって結ばれたのだからそれはそれでよかったと思うべきなのだろうが、こうなったことには少なからずあたしのせいでもあったと思う。
矢野くんと付き合っている…そんな嘘をついたばっかりに…。
遼哉の顔の傷を見て、胸が痛む。
ボーっとしていてと言うのは、きっと矢野くんとあたしのことを考えていたから…。
そっと目元から頬を伝って、口元へと撫でるように指を滑らす。
こんな顔で会社に言ったら、みんなになんて言われるだろう?
せっかくのいい男が、これじゃあ台無しじゃない。
わけもなく涙が、込み上げてきた。
あたしが『痛い?』って聞いたら、『これくらい、たいしたことないよ』って…。
こんなに腫れて、そんなわけないのに…。
「憂」
「あっ、ごめん起こしちゃって。痛かった?」
眠っていると思っていたが、あたしが傷に触れたから起きてしまったのだろう。
「ううん。気持ちよかった」
遼哉はあたし手を握って、微笑みながら言う。
今まで素直になれなくて、意地悪なことばかり言っていた俺様の遼哉だったのに心が通じ合うとこんなにも自分の気持ちをストレートに言葉に出すようになるのだろうか?
「腫れてきちゃったわね。冷やさないとせっかくのいい男が、台無しじゃない」
「俺のこといい男だって、思ってくれるんだ」
「そっ、そういうわけじゃ…なくって…」
どうもあたしは遼哉みたいには、素直になれないみたいだわ。
「照れてるのか?」
「ちがっ…」
あたしの顔を見れば、それが違ってないってすぐにわかるんだけどね。
いくらいい男だって思ってたって、そんなの急に言えないわよ。
それを知っている遼哉は、自分の胸にあたしを抱き寄せた。
「遼哉?」
「やっと、俺のモノになったんだな。ずっとずっと欲しくて、でもどうしても手に入れられなくて…」
切なそうに言う遼哉にあたしも今だけは、自分の気持ちを言葉に出してみる。
「あたしは、遼哉のモノだから。だから…絶対離さないで…」
「憂…俺は憂が嫌って言っても、離すつもりないから。案外、執着心が強いんだよ」
「絶対だからね」
「あぁ」
あたしは、自分から遼哉にキスをした。
これはあたしも遼哉を離さないって印の意味を込めて、そして。
「好き」
って、小さく耳元で囁くように言った。
遼哉が破顔したのは言うまでもなく、その日は土曜日で休みだったこともあって、一日ベットの中で過ごすことになった。
+++
頬を優しく撫でられて俺は、目を覚ました。
「あっ、ごめん起こしちゃって。痛かった?」
その言葉で俺の頬を撫でていたのは憂だということがわかったのだが、憂は俺が目を覚ましたのは自分のせいだと思ったのだろう。
まったくの反対で、それはとても気持ちよかったからだと憂の手を握りながら言うと泣きそうだった顔がホッとしたような表情に変わる。
勘のいい憂のことだから俺が、どうしてあんな場所で考え事をしながら歩いていたのか、その理由がわかったのだろう。
俺の傷跡を見ながら、自分のせいだと責めたに違いない。
あんな今にも泣きそうな涙を一杯に瞳に溜めて、それを一生懸命に堪える彼女が愛しくて…。
なのに『腫れてきちゃったわね。冷やさないとせっかくのいい男が台無しじゃない』と言われて、『俺のこといい男だって思ってくれるんだ』などとつい意地悪な言い方をしてしまう。
憂が、素直に『うん』と言わないことをわかっていながら。
案の定、ものすごく動揺していたが。
それがまた俺のハートを鷲掴みにしているなんて憂は、わかっていないんだよな。
思わず胸に抱き寄せて口に出した言葉が、『やっと俺のモノになったんだな。ずっとずっと欲しくて、でもどうしても手に入れられなくて…』。
即行あたしはモノじゃないっ!て怒ると思ったんだけど、意外にも帰ってきた言葉が『あたしは遼哉のモノだから。だから…絶対離さないで…』。
離すわけがない。
やっと、俺のモノになったのに。
俺は自分でも気付かなかったが、ものすごく独占欲が強いんだ。
それは、憂限定ではあったけれど。
だから、一生離すつもりなんてない。
もう、どんなことがあっても。
END
『ASPHALT☆LADY』いかがでしたか?
実は俺様遼哉、ものすごく甘甘男です。
そんな一コマを次のEXTRA STORYで書いていますので、続けて読んでいただけたらと思います。
また、お会いできる日を楽しみしております。
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