Stay Girl Stay Pure
Story20
世間は大騒ぎ、警察で事情を聞かれてイアンと涼がホテルに戻ったのは、その日の夜遅くだった。
食事だっていつが最後だったか思い出せないくらいだったが、なんだかお腹も空かなくて、シャワーを浴びただけで二人ソファーに寄り添って深く腰を埋めるようにして座る。
「あたしのせいで、こんなことになっちゃって本当にごめんね」
「涼さんのせいでは、ありませんよ。元はと言えば、私の仕事のことで涼さんを巻き込んでしまったのですから、謝らなければならないのはこちらの方なんです」
涼は悪くないんだという意味を込めて、イアンは涼の肩に回していた腕に少しだけ力を入れる。
「でも、よかった。イアンに何もなくて」
「私も迂闊でした。涼さんはてっきり連れて行かれたものと思っていましたので、相手の言葉を信じてしまって」
いつも冷静沈着なイアンが、あの時だけは考えることよりも体が勝手に動いていた。
ただ、涼のことだけが心配で…。
結果、このようなことになってしまったことに罪悪の念がないわけではないが、これも全て秀吉のおかげ。
「みんな、秀吉のおかげね」
「そうですね」
涼に思っていたことを言い当てられて、イアンはひとり苦笑する。
「ねぇ、ところで秀吉って何者なの?」
ずっと気にはなっていたことだったが、なぜか聞く機会がなかったこと。
―――あたしが連れ去られた時もホテルの側を通りかかったからだと言っていたけど、本当にそうなの?
ついさっきだって、『これが、俺の仕事だからな』と言っていたし、あんな技が普通の人に使えるとはとても思えない。
「涼さんは、聞いていなかったのですね。秀吉は、私立探偵なんですよ」
「私立探偵!?」
探偵と聞くと小説とかアニメとか、今では離婚や浮気調査などでもよく聞くが、秀吉もそうなんだろうか?
「といっても、一般の探偵とは違います。有名企業や政治家といった有力者からの依頼が主で、極秘情報の保護とボディーガード的な役割も果たしています」
「そうなの?あの秀吉が…」
「でも、本業は違うんですよ」
「え?他にもまだ、何かやっているの?」
「彼は私と同じ、有名な企業のトップなんですよ。ただ、副業の探偵の方に身を入れてしまっているようですが」
―――へぇ、あの秀吉が企業のトップ。
ちょっと信じられない気もするけど、すごい家に住んでいたのも頷ける。
それにイアンの従兄弟なんだもの、普通の人じゃないに決まってるわ。
「ところで、涼さん。昨日は、ちゃんと眠れましたか?」
「ううん、全然眠れなかった。イアンのことも心配だったし、それに…」
抱き枕がなければ眠れない、というよりもイアンが側にいないと眠れなくなってしまっていたのだから。
冗談で、秀吉が代わりになってくれるって言ってたけど…。
「そうですか。では、もう休みましょうか」
涼は黙って頷くと、イアンと一緒にマスターベットルームに入る。
その時、ふと秀吉の言葉が頭を過ぎった。
『イアンは、何もしないのか?』
好きだという言葉とキスもしてくれるが、それ以上は何もない。
―――イアンは、本当にあたしのことが好きなの?
「涼さん、どうかしましたか?」
二人並んでベットに横になったが、涼の様子がいつもと違う。
「ねぇ、イアンはあたしのことが好き?」
「もちろんです。急にどうしたんですか?」
「だったら…どうして、キス以上のことは何もしないの?一緒に寝てるのに…それって、あたしに女としての魅力がないから?本当に好きなの?」
思っていたことが、どんどん涼の口からこぼれ出る。
―――外国人のイアンから見たらあたしなんておこちゃまみたいな体型だし、きっと魅力ないのね…。
「涼さん、そんなことを考えていたのですか?」
イアンは、上半身だけ起こすと覆いかぶさるようにして涼の右頬に手を添える。
「私が毎日どんな想いで隣に寝ていたか、涼さんは全然わかっていませんね」
涼の寝つきがいいことだけが、唯一の救いだったかもしれない。
もし、そうでなかったら、とっくに手を出していただろう。
いくら女性が苦手とはいっても、本気で好きになった人を目の前にして何もしない男などいるはずがないのだ。
「え?でも…」
「隣に寝ているからといって、襲うわけにもいかないでしょう?涼さんに軽い男だと思われたくはないのでね」
「なら…抱いて…」
自分でもどうしてこんな大胆な言葉が出てきたのかわからなかったが、なぜかイアンが遠くに行ってしまいそうな気がして怖かった。
「涼さん…」
「イアン、あたしのことが好きなら…抱いて」
涼は、頬に添えられたイアンの手を取ると指先にキスをおとす。
それが合図となって、唇と唇が重なると深いものに変わっていく。
「…っん…イ…アン…」
「涼さんが悪いんですよ、挑発するようなことを言うから。ずっと我慢していたのに」
くっついて寝ていれば、自然に涼の柔らかい膨らみが触れることもある。
男には男の事情というものもあるし、それを悟られないようになんとか抑えてきたというのに…。
「だっ…て…ぁんっ…」
「知りませんよ。もう、抑えられませんからね」
―――うわぁっ、イアンっ。
自分で言ったこととはいえ、イアンのハートに火をつけてしまった涼。
それでもイアンがそう思っていてくれたことの方が、涼には嬉しかったかもしれない。
「イアン…」
「涼さん、好きです」
普段の温厚なイアンからは想像も出来ないくらいの激しいくちづけに、涼の心も体も溶けていってしまいそう…。
「…っいやぁ…っん…」
「涼さん、イヤじゃないでしょう?」
「…だっ…耳…」
「耳が、どうしたんですか?」
―――うっ、イアン意地悪…かも。
あたしは、耳がめっぽう弱い。
なのに…イアンったら…。
「やぁっ…」
涼は身をよじってイアンから逃げようとするが、これがきゃしゃだと思っていたのが間違いで、しっかり抑えられてしまうとまったく身動きが取れない。
レースのネグリジェは、すっかりお腹の上まで捲れあがって、そこに透かさずイアンの手が進入してくる。
「これは、邪魔ですね。全部、脱いでしまいましょうか」
―――脱いでしまいましょうかって…。
なんて、あたしの心の言葉など届くはずもなく、ネグリジェと寝る時はブラはしないから代わりに身につけていたキャミまであっけなく脱がされてしまう。
実は抱いてなんて言ったはいいが、自分の体に自信なんて全然ない。
胸だって、そんなに大きくないし…。
「涼さん、どうしてそんな格好を…」
「だって…恥ずかしい…」
涼は両腕で自分の体を覆うように隠すと、イアンに背を向ける形で体を丸めてうつ伏せになる。
―――だって…恥ずかしいんだもん。
急に恥ずかしさがこみ上げてきて、どうしていいかわからない。
するといつの間に脱いだのか、背中にイアンの素肌が直に触れる。
「私も恥ずかしいんですから、同じですよ」
耳元で囁くように言われて、そっと顔を向けるとちょっぴり頬を赤く染めたイアン。
「綺麗ですよ、涼さん」
「イアン…あっ…んっ…」
体を向かい合わせにされて、イアンの大きな手が胸の膨らみに触れると優しく揉まれる。
初めて見るイアンの体は、とても引き締まっていて思わず見惚れてしまい、恥ずかしさはどこかにいってしまったよう。
「涼さん、もっと声を聞かせて」
「…だっ…て…」
「さっきから、だってばかりですね」
クスクスと笑っているイアン。
だって…また言っちゃったけど、しょうがないじゃない…。
膨らみの先端を指で弾かれると、我慢していた声さえも抑えられなくなる。
「…んぁっ…っ…あぁ…」
もうひとつの先端を口で吸われて舌を転がされると、その声は益々大きなものになっていった。
そして、唯一覆っていた小さな布も取り払われて、生まれたままの姿になる。
「すごいですね、涼さん。こんなに―――」
「もうっ…そういうこと、言わなくていいのっ」
イアンの言葉を遮るように言う涼だが、指を入れられた秘部はしっとりと濡れて、イアンを受け入れる体制が整っていた。
「もう、入れてもいいですか?私も、そろそろ限界です…」
彼自身、布越しに大きくそそり立っているのがわかる。
―――えっ…おっきい…かも。
やっぱり○○さんは、大きいの?なんて思っていると準備を施した彼自身が秘部に触れ、ゆっくりと涼の中に入ってきたが…。
「いっ…」
「涼さん、大丈夫ですか?」
「…だっ…じょ…ぶ…」
本当は大丈夫じゃなかったけど、それよりもイアンとひとつになれたことの方で気持ちはいっぱいだった。
「…んっ…あぁぁっ…っ…」
何度も何度も奥まで突かれて、どうにかなってしまいそう…。
「イ…アン…っ…イ…くっ…」
「涼っ…さんっ、私も…」
イったのは、二人同時だったと思う。
まだ息は荒かったが、涼は言っていなかった言葉を口にする。
「イアンが…好き。ねぇ、あたしから離れないって、言ったわよね?」
「涼さん…」
「ずっと側にいてくれるんでしょ?」
イアンは、ニッコリと微笑むと涼の唇にそっと触れるようなキスをおとす。
「ええ、どこにも行きません。ずっと側にいますよ、涼さんの側に」
それを聞いて安心した涼は、イアンの腕の中で静かに眠りについた。
+++
部屋の中にだいぶ高く昇った太陽の日差しが射し込んできた頃、ようやく涼は目を覚ましたが、隣にいたはずのイアンの姿はない。
先に起きたのかしら?と自身の体をゆっくり起こすと昨夜のことが思い出された。
彼は、思ったよりもずっと情熱的で…体の奥底がカーッと熱くなる。
部屋に付いていたシャワールームを使うと着替えてリビングへ行くが、やはりイアンの姿はない。
「ねぇ、リック。イアンの姿が見えないんだけど、どこかに行っているの?」
いつもならだいたいデスクでパソコンを操作しているはずのイアンの姿が、今日に限ってなぜか見えない。
あんなこともあったわけだしどこかに行くようなこともないはず、だいいちリックがここにいるんだものね。
「実は…」
なぜか、ものすごく言いにくそうにしているリック。
「リック?」
「セシルさまは、突然ロンドンに帰られたんですよ」
「えっ?ロンドンって…。だって…3ヶ月間日本にいるんじゃ…まだ、半月以上あるのに?」
3ヶ月の期限まであと半月以上あるはず、どうしていきなり帰ってしまったの?
それにあたしに何も言わずに…。
「そうなんですが、急に…」
リックは、涼にだけはロンドンに帰ることを話すべきではないのかとイアンに言ったのだが、彼は首を横に振るだけだった。
「そんなっ…ひどい…ひどいよ…」
―――どこにも行かないって、ずっと側にいるって言ったじゃない…あれは嘘だったの?
勝手にひとりでロンドンに帰っちゃうなんて…。
その場に泣き崩れた涼の肩にリックはただ、触れることしかできなかった。
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