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Chapter13-1

R-18

新吾はそっと、楓を抱きしめた。
楓は内心複雑な心境ではあったが、不思議なことにそれがとても心地いいことに戸惑いを覚えずにはいられない。

「ここまで来てくれたってことは、俺の気持ちを受け入れてくれたと思ってもいいんだよな?」

ここは彼のマンション、確かめるように問う新吾に楓はただ黙って頷いた。
こんなふうに自分のことを想っていてくれた新吾の気持ちに応えたかった。
本当はすごく一途で真面目な新吾のことを楓が勝手にそうじゃないと決め付けていたのだから。

「楓」

名前で呼ばれて、反射的に新吾の胸に埋めていた顔を上げる。
そこには、満面の笑みで楓を見つめる新吾がいた。

「ごめんね」
「どうして、楓が謝るんだ?」

新吾には、突然謝罪の言葉を口にした楓の意図がつかめない。

「北沢はいつだって優しく接してくれたのに私は酷い態度をとって…」

北沢はいつだって、楓には優しかった。
それをわかっていながら、酷い態度をとっていたのだから。
それなのに…。

「そんなこと、気にすることないよ。俺は返って、楓のそんな姿がすごく新鮮だったんだから」
「え?」
「俺さ、何かわかんないけど女の子達にチヤホヤされて有頂天になってたんだと思う。だから、女の子なんて誰でも同じだって思ってた。でも、楓は違ったんだ。あんなに避けられたのは、初めてだったな」
「ごめん」

また、謝罪の言葉を述べる楓に新吾は慌てて否定する。

「違うんだ。楓だけは俺のことちゃんと見てくれてるんだって思った。さすがに最初は凹んだけどさ、でも少しして楓はただ俺のことを嫌いなんじゃないってわかったから。楓は俺のいいところはきちんと誉めてくれてただろう?」

楓は、新吾の全てを否定していたわけではない。
新吾の相手に対して自分を押し殺してまでもいい人を演じる部分は嫌いだったが、最後まで諦めないところとか人を信じる心とかそういうところは尊敬できると思っていたのだから。

「俺のことをはっきり言ってくれる子は周りにはいなかったから、俺自身すごくいい勉強になった。楓に出逢えて良かったって」
「北沢…」

新吾の言葉に楓の目頭がジンと熱くなった。

「楓、新吾って名前で呼んで」

…あの時、みたいに。
新吾は、楓が嘘でも自分のことを名前で呼んでくれたあの夜を思い出していた。
そして、今度は楓自身の口から呼んで欲しかった。

「新吾」
「あぁ、聞き間違いじゃないんだな」

新吾は、抱きしめていた楓の腕の力を一層強めた。
絶対、手に入らないと思っていた。
その彼女が今、この腕の中にいる…。

「きゃっ」

突然、新吾が楓を抱き上げると奥の部屋に入って行く。
もう、止められなかった。

「ちょっ、ちょっと北じゃなくて新吾っ。何するのよっ!」
「だめ、俺もう抑えられない」
「抑えられないってっ」

などという楓の言葉など到底耳に入らない新吾は、ベットの上に楓を下ろすとその上に馬乗りになって覆い被さった。
次に楓が何かを言おうとする前に新吾の唇で塞ぐ。

抑えられないと言った割にそれは激しいものではなく、何度も何度も啄ばむような優しいもので、楓はそれだけで溶けてしまいそうだった。

「…はぁ…っ…」

合間に楓の声が漏れるとそれこそ新吾の理性は吹き飛びそうだったが、なんとか耐えていた。

「楓、愛してる」

くちづけの間に耳元で新吾に囁くように言われ、楓の胸の鼓動は急に速度を速めた。
―――新吾って、こんなに優しいんだ。
改めて彼の優しさを感じずにはいられない。
その反面、新吾はというとこの前のように激しくしないよう我慢するのがやっとだった。
楓はまだ、自分の気持ちを100%受けきれていないはず。
なのに、ここで焦っては元も子もない。

ゆっくりとブラウスのボタンを外すと楓の形のいい胸が露になる。
あの時のように思わず手が触れてしまいそうだったが、寸でのところでそれを自制して胸元に赤い薔薇の花を一杯に咲かす。
そして、これだけは誰のものでもない自分のものだという証だけは譲れなかった。
肩からブラウスを脱がせ、背中に手を回すとブラのホックを外す。
ここまでなんとか耐えていた新吾だったが、楓の既に主張しているピンク色の蕾を目にした途端そんなものはどこかへ消えてなくなっていた。
吸い寄せられるようにそれを唇に含むと楓が喘ぎ声を上げる。

「…いやぁん…っ…」
「楓、嫌じゃないだろう?気持ちいいって言って」

―――そんな…。
意地悪って思ったけど、心とは裏腹に勝手に体が反応してしまう。

「…そ…んな…っ…ぁ…んっ…」

体を捩って抵抗する楓をガッシリと新吾が抱きしめて離さない。
スカートと一緒にショーツを体から抜き、現れた彼女のスタイルのいい体が余計に新吾を酔わせた。
すぐにでも中に入りたかったが、余裕のない男と思われたくなくて。
…こんなところで強がっても、仕方ないんだけど…。

「綺麗だよ」
「…恥ずかしいから、あんまり見ないでっ…っ…」

ほんのり頬を赤らめながら瞼を伏せる楓が、とても可愛らしい。
自身も身に着けていたものを全て脱ぎ去って、生まれたままの姿でもう一度彼女を抱きしめる。
その存在を確かめるように…。

「新吾…」
「ん?」
「キスして」

おねだりされてキスすると、安心したのか楓の顔に微笑が戻る。
まだ信じられない気持ちはわかるけど、新吾の想いは本気だから。
ゆっくりでいい、全てを受け入れて欲しい。

「…っ…あぁ…っん…ぁ…っ…」

秘部に触れるとそこはもうしっとりと濡れていて、そろそろ限界にきていた新吾は彼女の耳元で囁くように「楓、好きだよ」と言うと自身に準備を済ませ、彼女の中へ。
早く一つになりたい。

「入れてもいい?」

黙って頷く楓の中へゆっくりと体を沈めていく。

「…っあぁぁぁ…っ…んっ…し…んごっ…」
「楓っ」

頭の中ではわかっていても彼女の中があまりに気持ち良くて、抑えることができなかった。
あの時とは違う、気持ちも一つになったという喜びが新吾を絶頂へと導いて行く。

「…新吾っ…ゃぁ…んっ…イっ…ちゃ…う…っ…ぁ…」
「いいよ、イって」
「…やぁっ…新…吾も…一緒…に…っ…あぁぁぁっ…んっ…っ」

一緒になんて可愛く言われて、新吾のかろうじて残っていた余裕も吹き飛んでしまう。

「好きだ、楓」
「…私も…新吾…が好き…っぁ…あぁぁぁぁ…っん…っ…」

ほとんど二人同時にイくと荒い息の中、重なり合うようにして楓の上に倒れ込む新吾。
幸せ過ぎて…夢なら覚めないで…。

「ごめん、無理させて」
「ううん。新吾は優しかった」

とっても―――
彼の想いを感じて涙が出そうになる。
こんなにも、自分を好きでいてくれるなんて…。

「あぁ、ダメだ」
「えっ、何がダメなの?」

突然、『ダメだ』とは一体、何がダメなのか…。
楓にはさっぱりわからない。

「楓があんまり可愛過ぎて、俺のここがまた元気になってきちゃってさ」
「はぁ?!」
「もう一回」
「もう一回って…」

―――そんな…体がもたないわよ。
なんて、楓の言葉が彼に届くはずもなく…。
知ってか知らずか、可愛く微笑む新吾。
私のことを可愛過ぎてなんて言ってたけど、新吾の方がずっと可愛いわ。

楓からくちづけると、それは第二ラウンド突入の合図。
惚れた弱み、でも今回だけね。


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