「俺、今夜は瑞希を家に帰したくないんだけど」
「はぁ?なっ、何言ってるのよ」
―――いくらなんでも、そんな急に…冗談やめてよ。
瑞希と高沢はあれから店を出て、ずっと手を握ったまま駅までの道のりを歩いていた。
冷静になって考えてみれば、高沢とは仲のいい同僚というだけでそれ以上の感情はなかったのだ。
それが成り行きとはいえ、いきなり結婚の話になって…。
そして今、高沢は瑞希を家に帰したくないとか言い出して…頭の中が混乱して、どうしていいのかわからない。
それでも断ることもできないで、瑞希は高沢に手を引かれたまま彼のマンションの前に立っていた。
思ったよりも大きくて立派な建物に驚いた。
―――驚いている場合じゃないんだけど…。
「高沢…」
部屋に入るということは…その…そういうことなのよね?
「俺が、怖い?」
瑞希は、首を横に振った。
いつになく優しい高沢の物言いに、それだけで心臓がドキドキしてくる。
「瑞希、好きだ。だから、俺を信じて」
高沢はそう耳元で囁くと、そっと瑞希を自分の胸に抱き寄せた。
彼の部屋は外観同様、とても一人で住むには広すぎる間取りのように思えた。
聞くと、彼は次男だから将来を考えてご両親が買ってくれたのだそう。
結婚したら、瑞希もこの家に住むことになる…。
そんなことを考えながら真っ直ぐに彼の寝室に連れて行かれると、おもむろに唇を彼のそれによって塞がれた。
「…んっ…ちょっと待って…高沢っ」
「慎之介」
「え?」
「俺の名前。まさか、知らなかったとか言わないよな」
そんな…今までずっと高沢だったのに、いきなり名前でなんて呼べるはずがない。
「瑞希、名前呼んで?」
「…慎之介」
恥ずかしいけど、瑞希は小さな声で彼の名前を呼んだ。
それが合図のように慎之介は瑞希に唇を重ねると彼の舌がゆっくりと彼女の口内を味わうかのように這っていく。
段々と瑞希もそれに応えるように慎之介の舌に自分の舌を絡める。
「…っん…ぁっ…」
何度も何度も角度を変えて繰り返される口づけに、麻酔をかけられたように身体が麻痺して瑞希は立っているのもやっとだった。
「そんな顔されたら、俺もう限界」
慎之介は、そんな瑞希の着ていたジャケットを脱がすと彼女を抱き上げてベットに横たえた。
「高…慎之介っ。シャワーっ、シャワー浴びてからね」
「ダメ。我慢できない」
―――我慢できないって…。
その間にも彼の唇は瑞希のこめかみから首筋を行ったり来たりしていて、手は器用にブラウスのボタンを外してあっという間に脱がせてしまう。
時折、耳に息を吹きかけられると思わず瑞希から声が洩れた。
「…ぁっ…っん…」
「瑞希、ここ弱いんだ」
「そんなんじゃ…はぁん…ないっ」
「いいよ我慢しないで、瑞希の声もっと聞かせて」
慎之介は、瑞希の背中に手を回すとブラのホックを外す。
急に胸の締め付けがなくなって軽くなったと思ったら、あっけなく取り外されていた。
恥ずかしさのあまり、瑞希は思わず胸を両腕で隠した。
「慎之介っ。脱がすのうますぎるって」
「そうか?それより、どうして隠すんだよ」
「だってっ、恥ずかしいもん」
瑞希の顔は、真っ赤だった。
今まで男として意識していなかった相手とこんなことになっていることが、まだ頭の中で整理できていない。
「そんなこと、可愛く言ってもダメだぞ」
慎之介は、瑞希の腕をどかすと手首を掴んで彼女の頭の上で軽く押さえた。
「恥ずかしいから、そんなに見ないで…」
泣きそうな声で瑞希が言う。
「瑞希。すごく綺麗だよ。それに胸、結構大きかったんだな」
瑞希の身体は折れそうなくらい細いのに、形のいいふたつの膨らみだけは弾けんばかりに主張していた。
「そんなこと、いちいち言葉にして言わないでよっ」
恥ずかしがっている瑞希を他所に、慎之介はそのふたつの膨らみの一方に手をあてるとゆっくりと揉み解す。
そのあまりの柔らかさに慎之介は驚きを隠せない。
そして既に自分の愛撫によって硬くなっているピンク色の先端を人差し指と中指で挟んで捏ねた後、指で弾くと瑞希の身体が弓のように仰け反った。
「ひやぁんっ…あぁぁっ…」
もうひとつの先端を口に含み、舌で転がす。
「いやぁっ…あぁぁぁっ…」
寄せては返す快楽の波に、瑞希の身体はどうにかなってしまいそう。
「瑞希、もっと感じて。愛してる、声聞かせて」
「…あぁんっ…っ…」
慎之介は瑞希のスカートのファスナーを下ろすと、ストッキングと下着ごと一気に彼女の身体から抜き取った。
瑞希のしなやかな肢体に舌を這わせ、彼女の茂みの中から小さく主張している蕾を指で擦りあげる。
「あぁぁっ…んっぁ…っ…」
瑞希は身体を捩って抵抗するが、慎之介にしっかり肢を押さえられてどうにもならない。
彼は既に溢れんばかりに蜜を出しているその場所に舌を這わせると指を入れて内壁を掻き回すように出し入れする。
「いやぁん…イっちゃう…あっ…慎之介っ」
「いいよ瑞希、イっても」
「あぁぁぁぁっ…」
瑞希は思いっきり仰け反った後、ばったりと横たわった。
「瑞希、イっちゃった?」
「…はぁはぁ…」
慎之介は着ていた自分のスーツを全部脱ぎ捨てて、硬くそそり立つ自からのそれに準備を済ませるとまだ息の荒い瑞希の中を一気に貫いた。
「っあぁぁぁぁっ…」
「瑞希の中、すごくあったかいよ」
「…慎之介っ」
「瑞希、愛してる。誰よりも」
慎之介はしっかりと瑞希を抱きしめると、何度も何度も貪るような口づけを繰り返す。
「瑞希は、俺のこと好き?」
「はぁんっ…好き…」
「あぁ、瑞希ダメ。お前、締め過ぎだって!」
「そんなこと…言っても…んっあぁぁ…」
慎之介は、瑞希の腰に腕を回すとそのまま自分の方へ抱き上げた。
「いやぁん…っ…」
彼の熱いモノが瑞希の奥底まで入ってきて、今にもイってしまいそうだ。
そしてお互い繋がったまま向かい合う格好で見つめ合う。
「瑞希、愛してる。だから俺から絶対離れるな」
「…慎之介っ…はぁぁん…ダメっ、イっちゃう…」
「瑞希、俺と一緒に…」
慎之介はそのまま彼女の最奥まで一気に突き上げると、二人同時に果ててベットに倒れこんだ。
それから幾度となく、慎之介は瑞希の中で果てたのだった。
+++
慎之介は自分の腕の中で気持ちよさそうに寝息を立てている瑞希を見つめながら、まさかこんな形で自分のものになるとは思わなかったと昨晩のことを思い返していた。
彼女の様子が最近変だったのは感じていたことだったけど、自分の前からいなくなってしまうと思ったらいてもたってもいられなかった。
瑞希のことは、入社した時からずっと好きだった。
今までの慎之介は自分から人を好きになることなど、まったくと言っていい程ない。
どこか冷めたところがあって、女なんて皆同じだと思っていた。
ところが、瑞希だけは違ったのだ。
顔は本当に可愛らしいのだが、性格はまったくの正反対。
男っぽくてサバサバしていて、慎之介の外見しか見ない女どもとはまったく違い、仕事で行き詰ったり落ち込んでいたりするとさり気なく声を掛けてくれたりする。
人のことばかり心配して、自分のことは後回しにしてしまうのだ。
だから、そんな彼女の変化を読み取っては気付かないフリをして飲みに誘い、胸のうちを吐き出させていた。
瑞希はいつも慎之介の突然の誘いに文句を言ってはいたが断ることはなかったから、少なくとも慎之介のことを嫌いではないと思ってはいたけれど、なかなか自分の気持ちを伝えられないでいたのだ。
もし、自分の想いを告げることでこの関係が壊れてしまうくらいなら…慎之介は、このままでもいいとさえ思っていた。
瑞希のことが、なにより愛しくて大切だったから。
―――勢いとはいえ、しかしこの俺が結婚とはな…。
皆、ものすごく驚くだろう。
自分自身でさえも驚いているのに…。
でも、この先ずっと彼女の笑顔が見られるのなら構わない。
そう言えば、さっき瑞希の言った言葉を思い出した。
『うちの父親、私のこととなると見境がなくなるの。高沢が私と結婚したいなんて言ったら、何されるかわからないわよ?』
―――大丈夫か?俺…惚れた弱み…か…。
慎之介は、瑞希の寝顔を見つめながら苦笑したのを彼女は知らない。
◇
瑞希が目を覚ますと、隣でしっかり自分のことを抱きしめて眠っている慎之介の顔があった。
目を閉じている彼の顔は、実際よりも少し幼く見えるだろうか?
痩せていると思っていた身体は、鍛えているのか胸板は厚くきれいに筋肉がついていて、見惚れてしまうくらい。
そんな彼にほんの数時間前に結婚しようと言われて、さっきまで何度も何度も抱かれていたのだ…思い出しただけで瑞希は身体の奥が熱くなるのを感じていた。
慎之介とはいい友達、それで終わるはずだったのにこんなふうに彼に想われていたことに瑞希は戸惑いながらも、彼の力強い言葉に嬉しさで一杯だった。
瑞希は、慎之介の頬をそっと撫でるように手をあてた。
男の人なのにすべすべするその肌がとても気持ちいい―――。
するといきなり慎之介の目が開き、慌てて手を離そうとしたところを彼の手によって押さえられた。
「瑞希、俺を誘ってるのか?」
「いつから起きてたの?意地悪ね」
「瑞希からキスしてくれるのかなって、待ってたんだけどな」
そう言って彼は、握っていた瑞希の手の甲にキスをおとす。
「そんなわけないでしょっ」
瑞希は慎之介が眠っている時はなんとも思わなかったけれど、目の前に彼の顔があると急に恥ずかしくなってきて視線を合わせられなかった。
そんな瑞希のことが手に取るようにわかってしまう慎之介は、すかさず彼女の唇を奪う。
「もうっ」
「おはよう、瑞希」
慎之介は、何事もなかったかのように挨拶を交わす。
朝、目覚めた時に目の前に愛しい人がいる。
こんなにも心が満たされて、幸せなことだとは思ってもみなかった。
結婚すればこれが毎日続く…慎之介は、その喜びで胸がいっぱいになった。
一方、なんだかはぐらかされたと思った瑞希だったが、自分を見つめる彼の優しい眼差しに文句を言うことを忘れてしまう。
「おはよう、慎之介」
チュッって、お返しとばかりに慎之介の鼻にキスを返すと、さすがにそうされるとは思わなかったのだろう。
彼が固まってしまったのを瑞希は笑いを堪えて見つめていた。
「お前、ズルイぞ」
瑞希の挑発が彼に火を付けてしまったようで…朝からヤル羽目になってしまった。
自業自得とは言え、先が思いやられる。
瑞希のため息などつゆ知らず、慎之介は朝から絶好調だった。
※ このお話はフィクションです。実在の人物・団体とは、一切関係ありません。作品内容への批判・苦情・意見等は、ご遠慮下さい。
誤字が多く、お見苦しい点お詫び申し上げます。お気付きの際はお手数ですが、下記ボタンよりご報告いただければ幸いです。
NEXT
BACK
INDEX
PERANENT ROOM
TOP
Copyright(c)2006-2013 Jun Asahina,All rights reserved.