「うわぁっ」
「なんだよ。さっきから、大きな声を出して」
「だって…」
―――だってぇ、いきなり抱き上げるから…。
驚いたエリは急いで東郷の首に腕を回したが、まさか抱き上げられるとは思わなくて変な声を出してしまったのだ。
「だって、なんだ」
「あの…課長?」
「うん?」
―――これは…っていうか、この状況は、アレ?!
自分でも、もう何がなんだかわからなかった。
「あの…」
「城崎、はっきり言わないか。お前らしくもない」
「いや…でも…」
―――こんなこと、はっきり言えないわよ。
っていうか、なんて言えばいいのよね。
業を煮やした東郷は、エリの言葉を待たずに隣の部屋へ歩いて行く。
この状況は、まさしくアレで…。
真っ暗な部屋に電気が灯ると、シンプルというか大きなベットがあるだけで他には何もない。
その大きなベットの上に寝かされて、エリは思わずまた大きな声を出してしまった。
「課長っ」
「今度は、なんだ」
「いえ。ほらっ、課長はまだ病み上がりですし…。もう、休んだ方が…」
「だから、休むんだけど」
「えっ…」
―――だから、休むって…何?
「うわぁっ」
エリの上に覆い被さってくる東郷に、またもや大きな声が…。
至近距離に東郷の顔が迫って来て、エリはぎゅっと目を瞑ってしまう。
昨日もそうだったが、眼鏡を掛けていない東郷は普段見慣れている彼と違ってとても魅力的で…それだけでも心臓がドキドキしてしまうのに…。
「あのなぁ、城崎。こんなことでいちいち大声を出されると、俺だってさすがに凹むぞ」
「でも…」
「でもは、もういい」
東郷の唇が、ゆっくりとエリのそれに触れる。
何度も何度も角度を変え、離れてもまた重なって…舌を絡め合う。
「…っん…ぁっ…課…長…」
「一士だ」
「…はぁ…っ…で…もっ…」
「ここで、課長と呼ばれるのは、どうにも悪いことをしているように思えるからな」
「してるんじゃないですか?上司が、部下に手を出すなんて…」
「こらっ。そういうことを言うか、この口は」
「…やぁ…っ…んっ…」
再び、東郷の唇で塞がれた。
それは決して強引だとかそういうことではなく、とても心地よくて全身が溶けてしまいそうになる。
いつしかエリは、東郷の首に腕を回して自分の方へ抱き寄せていた。
東郷の髪に自分の指を挿し入れると、思っていた通り柔らかい。
「一士」
無意識にエリは、東郷の名前を呼んでいた。
悪いことをしているように思えるかどうかは別として、なんとなく不意をつきたかったからかもしれない。
東郷にはとても嬉しかったのだろう、それはエリの予想を反するものとなってしまうのだが…。
「…やぁっ…ちょっ…課長っ」
ブラウスのボタンは器用に外され、いつの間にか背中に回された手で急に締め付けがなくなったと思ったらあっけなくブラのホックも外されていた。
―――なんという、早業…。
ここで、感心している場合ではないのだが…。
露になったふたつの膨らみに、東郷の視線が注がれているのがわかる。
線は細いが、出るところはちゃんと出ているエリに目が釘付けになった。
「さっきは名前で呼んでくれたのに、もう課長に戻るのか?」
「だったら、課長も私のことエリって呼んでください。そうしたら、私も課長のこと一士と呼びますから」
「交換条件か?」
クスクスと笑う東郷。
こういうエリの言い方が、東郷のツボに嵌っていることを彼女はわかっていない。
「わかったよ。エリ」
そう言って、東郷は軽くエリの額にくちづける。
さっきとは逆の立場で不意をつかれたエリは、みるみるうちに顔を赤らめた。
そんなエリが可愛くて…。
耳元に息を吹きかけると、エリの体がピクッと反応する。
弱いのを悟られないように我慢しているのが、東郷には手に取るようにわかってしまう。
―――こういうところが、わかりやすいんだよなぁ。
わかっていて、攻めないわけがない。
「…やっ…ん…っ…」
「そんな可愛い声を出されると、俺も抑えられないからな」
「…だっ…て…一士…がぁ…っ…」
「ちゃんと名前を呼んでくれるんだ。いい子だ」
やっぱり東郷は、一枚も二枚も上手である。
大人の余裕があるというか、なんというか…。
「…っあ…んっ…ぁっ…」
鎖骨の辺りに赤いバラの花がいくつも咲き乱れた。
東郷の大きな手でふたつの膨らみをゆっくりと揉まれ、淡いピンク色の蕾を親指と人差し指でクリクリされるとエリの口からは一際大きな声が洩れる。
「いいよ。そういう声を出してくれればいいのに」
「そん…な…っぁ…っ…んっ…」
硬くなった蕾を口で吸われ、舌で転がされる。
時折甘噛みされると、意識が飛びそうになった。
それでも東郷は止めることなく攻めつづける。
腰に手を滑らせながら、スカートのホックを外し、パンストとショーツを一気にエリの体から抜き去ってしまうと、しなやかな肢体があまりに綺麗で眩しいくらいだった。
「エリ、綺麗だ」
「そんな…こと。それより、一士も脱いでください。私ばっかり、なんてズルイ」
「はいはい。わかったよ」
エリに言われて東郷は、身に着けていた物を全て取り去った。
単に痩せているだけの体とは違い、引き締まった体に思わず見惚れてしまう。
―――うそ…課長って、こんなすごい体してたの?
「エリにそんな顔で見つめられると、俺もヤバイ」
余裕のあるように見せていた東郷だが、本当はそんなわけにはいかなかった。
口では強がっていても、時々見せる素直な部分に引き込まれてしまう。
エリの秘部に触れると、そこはもう東郷を受け入れる準備はできているようで、しっとりと濡れていた。
「…ぁ…っん…やぁ…っ…」
「嫌じゃないだろう?気持ちいいって言って」
指を数本出し入れして、茂みの中からちょこんと主張している花弁を指で擦り上げると、より一層甘美な声が洩れた。
「…だっ…て…っ…ん…っぁ…っ…」
大きく開かれた両足を東郷のガッシリとした腕が押え、秘部を舌で刺激する。
それだけでも、イってしまいそう…。
「…イ…くぅ…っ…」
「いいよ、イって」
「…っ…あぁぁぁぁっ…っ…」
ぐったりとしてしまったエリに、東郷がくちづけようとするとそれを拒むエリ。
少し不安になる東郷だったが…。
「どうした?」
「だって…」
「うん?」
「私ばっかり…」
自分ばかりイかされて、エリは納得がいかなかったのだ。
こんなところまで頑固というか、なんというか…。
「わかったよ。俺ももう我慢できないから、入れるよ」
サイドテーブルの引き出しからゴムを取り出すと、自身に手早く装着する。
どうしてそこに…などと野暮なことには、この際触れないことにする。
「エリ、いいかい?」
黙って頷くエリの中にゆっくりと自身を沈めていく。
何ともいえない感覚に東郷は、すぐにでもイってしまいそう。
「…はぁっ…っん…やぁ…っ…」
「エリ、好きだ」
「…か…ず…し…っ…あぁぁっ…っ…ん…」
東郷は激しく腰を動かし、エリの最奥まで突き続ける。
「…いやぁ…っ…んっ…イっ…ちゃ…うっ…っ…」
「一緒に…」
エリがイった後、少しして東郷もエリに覆いかぶさるようにして果てた。
東郷の額には、しっとりと汗が滲む…。
「病人なのに」
「ごめん、ちょっと張り切りすぎた」
そんな一士が可愛いかも…口には出さないが、そう思いながら彼の胸に抱かれ、いつしかエリは深い眠りについていた。
+++
「おはよう、エリ。ふうん〜昨日は、お泊りだったんだぁ」
小さな声で意地悪く言いながら側を通って行った沙希に、何も言えないエリ。
普段は滅多に着ない作業服を羽織って誤魔化してはいたものの、昨日と同じ服装なのだから沙希がそう言うのも無理はないだろう。
それにチェック厳しいし。
「しょうがないでしょ?寝坊して、間に合わなかったんだから」
「そんなに課長の腕の中は、心地よかったってわけね」
「もうっ、沙希!」
うふふと、ニヤ笑いしながら去って行った沙希の後姿を見てエリは大きく溜息を吐く。
ぐっすり眠ってしまったエリはすっかり寝坊して、着替えに帰ることができなかったのだ。
沙希ではないが、東郷の腕の中は確かに心地よかったわけで…。
東郷を責めても仕方がないのだが、エリはもう一度溜息を吐くと、主のいない席をじっと見つめていた。
NEXT
BACK
INDEX
PERANENT ROOM
TOP
Copyright(c)2006-2013 Jun Asahina,All rights reserved.