Snow Blue
Story9

R-18

土曜日の午後、和也はまるで年末の大掃除かと思うほど部屋の掃除を完璧に済ますと、それでもまだ物足りないのかあちこち歩き回ってはソファーに置いてあったクッションを繰り返し直したりしていた。
和也がこんなことをしているのはこれからもえがここへやって来るからなのだが、この家に来るのはほぼ毎週のことであって初めてではない。

―――何やってんだ、俺。

そう思いながらも、電話の向こうでもえが小さな声で言った言葉を思い出す。

『あの…お泊り…しても、いいですか?』

何度思い出しても自然に顔が緩んでしまい上司にも職場のみんなにも不審がられたが、男としてこれ以上の喜びはないのだから。
―――でも…本当にいいのか?
もえは自分と付き合うようになって男が苦手というのは克服しつつあったが、それ以上はまだ早いのではないだろうか?
そういう時期が来るまでいつまででも待つつもりだったが、まさかもえから言ってくるなんて…。
もしかして様子が変だったのは、このせいだったのか?
嬉しさのあまりすっかり忘れていたが、きっともえはひとりで悩んでいたに違いない。
こんなことで、彼女を悩ませてしまうなんて…。
守ると言った自分は、一体なんだったのか…。

ピンポーン、ピンポーン―――

いつの間にか考え込んでいた和也は、何度か鳴らされたブザーに慌てて玄関に駆け寄ってドアを開けるとはにかむような表情のもえ。

「こんにちは」
「いらっしゃい」
「わっ、和也さん」

和也はもえの手を引っ張るようにして家の中に入れると、ぎゅっと抱きしめた。
嫌われたんじゃないかと思ったが、今もえは自分の腕の中にいる。

「和也さん?」
「あっ、ごめん」
「いえ、どうしたんですか?」
「もえに会いたくて、我慢できなかった」

そう言って額に軽くキスすると、もえの顔がみるみる赤く染まっていく。
本当に可愛くて、そんな彼女を今夜は独り占めできるのだと思うとまた顔が緩んでしまう。

「もえ、随分大きな荷物だな」

―――泊まるにしても、少し大き過ぎやしないか?
もえが持っていた荷物は、数日間は旅行に行けそうなくらい大きい。

「そうですか?パジャマとか着替えとか入れたら、こうなっちゃったんです」
「そうなんだ。もえのパジャマって、どんなの?早く見たいなぁ」
「えぇぇ?!かっ和也さんっ、そういうこと言わないで下さいっ」

―――くっくっくっ、こう言ってからかうと本気にするところなんか、俺のツボなんだよなぁ。
でも、もえのパジャマ姿ってどんなのなんだろう?
俺としては、パジャマよりネグリジェ系の方がいいんだけどなぁ…。

「和也さん、何考えてるんですか?」
「え?いっ、いやなんでもないよ。ところで、ご両親は心配しないかな?娘が男の家に泊まるなんて」
「大丈夫です。母なんてなんだか知らないんですが、お赤飯なんて炊いたりして」
「赤飯?!」

―――おいおい、それって…。
娘が男の家で、そういうことをするかもしれないってのに祝うのか?!
もえを見ていると大事に大事に育てられてきたと思うんだけど、どうもご両親の話を聞いているとよくわからないんだよな。
まぁ、一応は信用されているってことなんだろうけど…。
今度、きちんと挨拶に行かなきゃいけないな。

それからは、借りてきたDVDを見てまったりとした時間を過ごし、もえが作ってくれた夕食を食べて…。
―――なんか、いつもと違うんだよなぁ…。
意識してしまうというかなんというか…だいたい、これからどうすりゃいいんだ。
勢いで、押し倒すわけにいかないだろう…。

「和也さん、コーヒー入れますね」
「あっ、あぁ。そうだ風呂、風呂の準備して来る」
「それなら私が」
「いや、いいんだ。俺がするから」

―――はぁ…。
まいったなぁ。
勢いで風呂なんて言っちゃったけど、どうなんだこれ?
掃除は既に済ませていたからボタンを押すだけなのだが…暫くの間、和也はバスルームから出て来なかった。

あまり会話も弾まなくて、もえの入れてくれたコーヒーを飲んでいると、ピッピッピッという電子音が鳴り響く。
―――もうかよ…。
この音は、お風呂にお湯が溜まったという知らせ。

「もえ、先に風呂に入ったら?」
「和也さん、先にどうぞ」
「俺は、後でいいから」
「じゃぁ、一緒に入りましょう?」
「あぁ、あ???!」

―――いっ今、何て言った?
一緒にとか聞こえたが、空耳だよな。
もえがそんな大胆なことを言うはずがない。
うんうん。

「ダメですか?」
「ダメって…もえ」

―――まさか…本気で言ってるのか?
和也はもえの側まで行くと、優しく肩を抱き寄せる。

「もえ、どうしたんだ?そんなことを言うなんて」
「変ですか?」
「変じゃないけど、無理してるように感じるかな」
「無理?」
「そう。もえはさ、俺のことを思って言ってくれてるんだと思うけど、無理することなんてないんだよ」
「無理はしてません。私も、和也さんとその…」

最後は消え入るような声で、ひとつになりたいんですと…。

「もえ」

もえの頬に手を添えると、ゆっくりと唇を重ね合わせる。
初めはほんの少し触れるだけのもの、それが段々と深いものに変わってもえの口から甘い声が洩れる。

「…ぁ…っ…ん…」
「もえ、愛してる」

―――もう、我慢しないから。
覚悟して、もえ。

「やっ、和也さん?」
「もえが自分で言ったんだからね。風呂に一緒に入るって」
「え…」

和也はもえを抱き上げると、そのままバスルームへと歩いて行く。
自分から言った手前、もえはおとなしくそのまま和也に抱かれていたが、微かに体が震えているのがわかる。
それでも、もう和也には止めることなどできなかった。
今まで付き合った女性の数はそれほど多くはないが、一緒に風呂に入るなどということは一度もない。
友人達の話では…らしいけど…。
初めてということに関しては、同じかもしれなかった。

しかし、もえはキスは恥ずかしがってなかなかしてくれないのにいざとなると大胆というかなんというか…。
それにしても、こんなにいいものだとは…その後、和也が病みつきになってもえを困らせることになろうとは…。

二人生まれたままの姿でベットに横になると、火照った体がひんやりして心地いい。

「もえ」
「和也さん」
「もえ」

何度も名前を呼び合って、じゃれ合いながらほんのりピンク色に染まったもえを抱きしめる。

「もえ、怖かったら言って」
「大丈夫です。和也さんを信じてますから」

にっこり微笑むもえの唇を味わうように何度も何度も角度を変えて、舌を入れるとぎこちなくそれに応えるように返してくれる。

「…はぁ…っん…っ…」
「もっと、声を聞かせて」
「…っ…で…もっ…っ…」
「我慢しなくていいんだよ」

首筋から胸元にかけて唇を這わせ、服を着ても目立たないところを選んでたくさんの薔薇の花を咲かせる。
本当は、俺のものなんだ!とみんなに知らせたいけれど、そこはぐっと我慢する。
そのまま二つの膨らみのひとつに唇を寄せてツンと上を向いて主張している蕾を口に含むと、もえのより一層甘美な声が洩れた。
和也の手の大きさにピッタリのもえの胸をゆっくりと揉み解しながら、蕾を指で弾く。

「…っあ…っ…ん…」
「もえ、気持ちいい?」
「…んぁっ…そ…んな…こ…と…っ…ぁ…」

もえには何もかもが初めての体験で、これが気持ちいいことなのかどうかわからなかった。
ただ、和也を信じて付いて行くしかない。
膨らみを包み込んでいた和也の手が、腰のラインを通ってまだ誰も触れたことのない秘部に触れる。

「…やぁ…っ…んっ…」
「ダメだよ、閉じちゃ。ちゃんと開いて」

恥ずかしくて、とても和也のいうことを聞けなそうにない。

「…で…も…」
「もえ、恥ずかしがってちゃダメだろう?ちゃんと濡らさないと痛いのは、もえなんだよ」

諭されるように言われて少しずつ開くと、生暖かいものが秘部に触れた。
舌で刺激されて、今までに感じたことがない衝撃が体中に走る。

「…っあぁ…っ…ん…っ…だ…め…っ…」
「指を入れるね」

―――指って…

「…えっ…あ…っ…ん…っ…」
「痛い?大丈夫?」
「だ…大丈…夫…っ…あ…っん…」

「じゃあ、もう少し増やすから」と和也の指が、内壁を掻き回す。

「…あぁぁぁ…だ…めぇ…変…なの…っ…」
「イきそう?」
「イく?…っん…やっ…あぁぁぁ…っ…」

「もえ、大丈夫?」
「え…私…」
「イったみたいだね」

―――これが、イくってことなの?

「和也さん?」
「ごめん、俺もう我慢できそうにないから。ちょっと待ってて」

和也は素早くゴムを装着すると、もえの秘部に自身をあてがう。

「もえ、力抜いて」
「和也さん」
「ゆっくり入れるから、痛かったらすぐに言って」

もえが黙って頷くと少しずつ、自身をもえの中に沈めていく。
目を瞑ったままのもえは、なんともいえない異物感に一生懸命耐えていた。

「…っ…いっ…た…」
「もう少しだから…我慢して」
「…っあぁ…っ…っ…」

間をおきながら、少しずつ中に入っていく。

「もえ、入ったよ」

ゆっくり目を開けるとすぐ目の前に和也の顔があって、優しく額や鼻にくちづける。
―――ひとつになれたの?

「和也さん…私達、ひとつに…なれたんですね」
「あぁ、もえの中に俺がいるんだ」

暫く和也はもえを抱きしめていたが、我慢も限界に達していた。

「もえ、動くよ」
「…っあぁぁぁ…っぁ…っ…っ…ん…」
「ごめん、我慢できない…」

もえが初めてだとわかっていても、あまりに気持ちよくて和也は抑えることができなかった。
それに必至に応えようとしているもえ。

「もえ…愛してる」
「私…も…愛して…いま…す…っあぁぁぁぁ…っ…っ…ん…イくぅ…」
「もえ…くぅ…っ…俺も…」

最後は悲鳴にも近い声だったが、イったのはほぼ同時だったと思う。

「大丈夫?もえ」
「はい」
「ごめんな、無理させて」
「いえ、和也さん」
「うん?」
「抱きしめて下さい」

和也は、もえをぎゅっと抱きしめた。
好きな人とひとつになれた喜びからか、もえの瞳からは涙が止めどとなく溢れていた。



隣でぐっすりと眠っている愛しい人を見つめながら、和也はクスッと笑う。
さっき、もう一度二人でお風呂に入ったのだが、その後彼女が着替えた下着にはまいったな―――。
大きな荷物を持って来たと思ったら、こういうことだったのか…。
レースがいっぱい付いた真っ赤な下着、俺を誘ってるのか…と思うほどのものだったのだが、予想に反してモーモーパジャマとは…。
ネグリジェの期待は大きく外れたが、このギャップがもえらしいなと…。
起こさないようにくちづけて、和也も深い眠りについた。


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